たばこ税引き上げ、医療財源の拡充を
大阪府医ニュース 2005.6.1 時の話題より
 国民医療推進協議会は、去る4月15日に日本医師会館で開催された第2回総会で、禁煙活動推進を今後の活動方針として決定した。その中では「国民の健康を守る立場から、たばこ価格の大幅な引き上げと併せて、当該税収を国民の健康のための施策の財源に充てるよう」要望している。

 この5月31日にはWHOの「たばこ規制枠組み条約」発効後、初めての世界禁煙デーを迎えた。同条約には、たばこ価格・税の引き上げや受動喫煙の防止、包装およびラベルでの警告表示の強化、たばこ広告や販売促進の包括的禁止、禁煙支援の普及、未成年者への販売の禁止などの規定があり、これらを5年以内に実行することとされている。しかし現在、我が国では「注意表示」の見直しと強制力のない「広告規制」の指針が示されたのみである。未成年者への販売経路となっている自動販売機に対しても、廃止して対面販売を義務化するのではなく、成人識別機能を付けるなどという、おおよそ成果の上がりそうにないものが検討されており、たばこ規制としての実効性はほとんど無いに等しい。

 2004年の厚生労働告研究班の調査では、喫煙により日本人男性は毎年8万人、女性は8千人が「がん」になっていると試算されている。また、京都大学の中原教授による推計では、我が国の喫煙による損失は5兆円近くに上り、医療費の増加だけでも1兆4千億円になるという。喫煙者数を減らすことが、即、医療費の削減につながるのである。世界銀行の推計によると日本でのたばこ税が、例えば10%増税となれば、たばこの消費は2%強減少し、たばこ税収は逆に7%強増加するとされている。現在、我が国のたばこ小売価格は世界的にみて最も安い部類にあり、たばこ税を含めた小売価格を2倍にすれば、消費をかなり減らすことができ、かつ税収増になるであろう。

そして、国民医療推進協議会が要望しているように、増加した税収を国民の健康のために、つまり医療費財源の一部とするべきである。

 世界禁煙デーを機に、我々は禁煙活動を更に強力に推進して喫煙による健康障害をなくすとともに、たばこ税の引き上げによる増収を医療費財源に充てることを政府に求めていかなければならない。


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