@ 一本の鉛筆から

 せっかく出かけた旅ですから、旅先の風景や目にとまったものを絵にして持ち帰ってみませんか。珍しい風景の簡単なスケッチが、あとで旅をふりかえるとき、思い出を鮮やかによみがえらせてくれます。

 まず、鉛筆一本と小さなスケッチブックをかばんに入れて出かけましょう。これだと、荷物になりません。鉛筆は2Bか3Bで、消しゴムと小さな鉛筆削りも一緒に持参してください。

 ツアーで観光中は、なかなか時間が見つけにくいものです。ホテルでゆっくりした時、昼間に買った民芸品を描いたり、部屋からの景色をスケッチされるとよいでしょう。全体を描かなくても、たとえば人形の頭部、店の看板、植物の花だけでも作品になります。このような、ポイントをしぼったスケッチから気軽に始めましょう。

A 作品に色をつけよう

 やはり、絵には色をつけたいですね。

 手軽に持参できるのは、色鉛筆、カラーサインペン、そして水彩絵の具です。水彩の色鉛筆も便利ですから、好みで利用してください。

 旅先で描いた鉛筆画やペン画に色をつけると、絵がいきいきとしてきます。色は全体にぬらなくても、ハイライトになる一部に色をおくだけでも印象はずいぶん違ってきます。

 水彩画を描くには、絵の具はもちろん、筆、パレット、水入れ、布切れなども必要です。旅行用にコンパクトに持参できるものが用意されていますよ。

 アイデア商品の「水筆ペン」は、軸に水を内蔵するので水入れを持参する必要がなく重宝です。

B 絵心あれば紙ごころ

 

 絵は何にでも描くことができます。

 スケッチブックの利用が一般的ですが、「旅のしおり」でも、手帳の一ページでも、ノートでもかまいません。ただ、旅のメモとしてならともかく、作品として残すには、手帳やノートはふさわしいといえません。

 紙のサイズはもとより、種類も和紙やケント紙、色画用紙などがあります。「折り帳」という、神社仏閣の朱印を集める冊子のようにつながったものを利用して、連続した絵を描くこともできます。

 絵は紙だけのものではありません。布や木片、CD、ガラス片、落ち葉、旅先で拾った小石などにも描くことができます。時にはそれらが、紙に描いたものよりも、旅の思い出をひときわ鮮明によみがえらせてくれることでしょう。

C 絵てがみのすすめ 

 

 わが国に絵てがみブームを巻き起こされた小池邦夫さんのスローガンは、

「ヘタでいい、ヘタがいい」

 このことばに励まされ、多くのかたが絵てがみを始められました。そういわれると、怖いものがなくなりますね。マイペースで、ドンドン絵てがみを出したくなります。

 たくさん描き、投函し、そして返事をもらっているうちに、上達していきます。

 スケッチブックには、ハガキ用のものもあります。絵てがみとして最初から出す予定があれば、そちらが便利でしょう。自作する場合は、ハガキサイズに切って、宛名面に「郵便はがき」または「POST CARD」と記入すればOKです。

D はさみと糊で旅アート

 旅先でコレクションした現地の新聞や雑誌、チラシやパンフレットを切り抜いて、「コラージュ」にトライしてみませんか。

 メトロのきっぷやショーのチケットなども加えると、旅先でのひとときが思い出されます。

 面白い写真、珍しい文字、楽しいデザインのレタリング、それらを、感性のおもむくままに切り抜いて、構図を考えながら貼ります。直線のカットでは、定規とカッターナイフが便利です。思ってもみなかったようなアート作品ができますよ。

 素材を持ち帰り、帰国してから、じっくりと取り組んでください。

 コラージュでは、絵を加えたり色をつけたり、想像力をおおいに発揮しましょう。

E 文字も作品にしよう

 絵てがみにそえるメッセージや、俳句や詩を書いた文字が、ちょっと工夫すると「文字の作品」になります。

 筆やサインペンを使って、のびのびと大胆に書いてください。その時の気分やイマジネーションで、おもしろい作品になることでしょう。

 日本語だけではありません。ハングル、チベット、ロシア、アラビアなど、世界には、さまざまな文字があります。それらを、辞書やアルファベット帳などを手本にして書いてみませんか。

 古代エジプトのヒエログリフも魅力がありますね。エジプトの観光地では、パピルスに名前を書いてくれますし、Tシャツも作ってくれます。

 こんな文字で、旅先からのハガキを飾ってください。その際、受け取った人に意味が伝わるように日本語の訳をお忘れなく。

F 作品に自作のあかしを

 作品の仕上げとして、サインや落款(らっかん)を入れましょう。

 サインは、ローマ字で入れるかたが多いようです。

 画集などをヒントに、ためし書きして作成してみてください。

 また、絵てがみやスケッチにそえる落款は、消しゴムに彫刻刀で彫って自作するとよいでしょう。イニシャルをひらがなやカタカナで彫ったり、名前の一字を漢字で彫っても、なかなか味わいのあるものができます。本格的に作るなら、書道用品店で印材や印刀を入手して彫ってみてください。初心者でも簡単に作ることができます。

 もう一歩すすんで、ロゴマークや自分だけのキャラクターの創作にチャレンジしてみませんか。すぐに作品ができるとはかぎりません。描いているうちに、形が整ってきます。気長に手直しをしていきましょう。

G 台紙に貼ってカードに

 旅先で描いたスケッチを、二つ折りの紙に貼るとグリーティングカードができあがります。

 誕生日、入学や入社、結婚やクリスマスカードなどの手作りカードを作ってみましょう。

 絵のサイズより二倍以上の大きさの用紙を準備して、二つ折りにします。絵をカードの表に糊で貼り付けてください。スプレー糊をつかうと波うちや反りが起こりにくいので、きれいに仕上がります。

 二つ折りの内側には、メッセージを書きましょう。縁取りなどを工夫して楽しいカードにしてください。 

 封筒にも、カードにふさわしい枠やカット絵を添えると気持ちがよく伝わりますよ。

H 作品を額装しよう

 お気にいりの作品ができあがったら、額に入れてみましょう。

 美術ショップに行くと、さまざまな額があり、店員さんが相談にのってくれます。

 作品より大きめの額をえらび、まわりにマットを敷くと、画廊の絵のように映えてきます。見違えるほど、作品がひきたってきます。プレゼントしても喜ばれるでしょう。

 これまでに描いたものの中からテーマを決めて作品を選び、同系統の額に入れて飾ってみてください。

 ときどき作品を入れ替えて、気分転換するのもいいですね。

 額入りの作品がたくさんできあがったら、公民館や文化センターなどで、ぜひミニ個展を開かれたらいかがでしょうか。

I 手作りの画集に 

 旅から帰って作品ができ、シリーズのスケッチがまとまったら、画集にしてみませんか。

 絵は、写真と違ってオリジナルの作品集は一冊しか作ることができません。そこで、カラーコピーを使って複製を作りましょう。

 縮小や拡大をして大きさを統一し、ファイルに綴じこむこともできます。スケッチブックに一点ずつ貼って、一冊の画集にしてもいいでしょう。

 できあがったら、「アルプスの花たち」「地中海の海辺にて」などのタイトルをつけて完成です。

 スケッチをカメラで撮影し、ハガキ大にプリントして、自家製の絵ハガキを作ることもできます。ひとつのテーマでセットにし、ケースに入れれば画集に劣らない作品集になりますよ。