@旅に向かって選べ(9.5)

 

「あれば、便利だろう」と、あれこれ海外旅行に持参する心理は、

「100円ショップで、ついつい買いすぎるのと同じ」

   ○

「本当に必要なものなんて、そんなにない」

と、旅なれた人ほど荷物は少なくなる。経験から、不要なものをドンドン減らしていく。初心者は、あれも、これも、と増えていく。海外旅行に出るときは、

「荷物はマイナス志向で、気分はプラス志向で」

   ○

映画『偶然の旅行者』の主人公は旅行評論家。旅の持ちものについて、こんなアドバイスをしている。

「人生と同じで旅でも荷は軽い方がいい。旅には大切なものは持っていかないこと。失うとショックが大きい」

   ○

「海外のホテル。ありません、スリッパ、ゆかた、歯ブラシ、お茶、お菓子」

例外もあるけれど、ないと思って用意していったほうがいい。

   ○

「<旅は、かきくけこ>で準備します」と、リピーター。

旅は、旅券。かは、カメラ。きは、着替え。くは、くすり。けは、化粧品・洗面道具。こは、こづかい。

   ○

これらに、訪問国の気候風土にあわせた持ちもので旅支度。

   ○

「フィルムは、何本持っていったら、いいでしょうか」

「下着は、何枚くらい必要でしょうか」

「こづかいは、いくら用意すればいいですか」

具体的な数字が知りたい、海外旅行の初心者。

   ○

出発前に、ツアー参加者に電話をする添乗員。

具体的な数字を聞かれた場合、

「個人によって違うので、一緒に悩みながら、おこたえしています」

   ○

イタリア旅行。赤いスカーフ、グリーンのセーター、白いコートと、イタリアンカラーでツアーに参加の女性。訪問国の色や雰囲気にあわせたファッションで、おしゃれな旅に。

   ○

小さなアクセサリーが、旅のムードを盛り上げることも。イギリスツアーで、襟にユニオンジャックのバッジをつけていた男性。

   ○

ハワイに行く時は、

「ハンカチ三枚よりも、ジャケットを」

ホテル、レストラン、バスなど、エアコンがよくきいている。

   ○

旅に便利なグッズの数々。

ホテルでお湯を頼むと、時間がかかる、ぬるい、チップか必要。

そこで、湯沸しポットの出番。

好きな時にお茶が飲める。カップめんが食べられる。

   ○

エジプト人が感心した、ウエットティシュ。ほこりっぽく、汗の出る国では便利。

「なくなったら、ポケットティシュに水を含ませて、ウエットティシュにしています」

   ○

帰国時は荷物が増える。

「これに、限ります」と、リピーターが用意している、通称「コロコロバッグ」。

国内の空港などで売られている、底にキャスターのついた、軽くて折りたためる買いもの袋。たくさんの荷物をひとつにまとめることができるので、忘れもの防止にも。

   ○

ロンドンのホテル。

「今夜は、温泉に入りましょう」

ツアー客からもらったのは、温泉入浴剤「草津の湯」

   ○

バス移動中の楽しみは、口を動かすこと。おしゃべりと、おやつ。

「おせんに、キャラメル‥‥」に代わって、おかき、のど飴、一口ようかん、などいかが。

   ○

体調不良で、食欲がないツアー客。

「これを、どうぞ」

同行者が用意していたのは、レトルトのおかゆ。

   ○

日本の便利もの、風呂敷。

寒い時は、スカーフに。

ベンチに座る時には、敷物に。

荷物をまとめて、背負うこともできる。

   ○

旅の小物の整理法。チャック付のフリーザー・バック。中身が見える、文字が書ける、大小いろいろ。コイン、レシート、きっぷやしおり、一日一日の思い出をパッキング。

   ○

クリアーホルダーに、ドンドン資料を入れていく方法。

「旅の順番に、時系列で」が、ポイント。

   ○

普段使わない筋肉を使う海外旅行。

肩こり、足のむくみ、腰が痛くなることも。

そんな時、鎮痛消炎剤。塗るタイプ、貼るタイプ、各種あり。

   ○

旅のガイドブック。売れ筋は、地図が充実していて、たくさんの現地情報が入っているもの。

地図が信頼できるかどうかのチェックポイント。「北を示す方位記号」と「縮尺つきの距離表示」

   ○

ガイドブックは、改定されるたびに厚くなる傾向に。

必要な部分だけを切り取って、自家用のガイドブックに。

「今回の旅行に関係しているページなんて、これだけしかないんですよ」

   ○

付せん紙がびっしり貼りつけられたガイドブックを持参した旅人。

「目をつむっても、街が歩けそうです」

   ○

「このガイドブックにでている、化粧品の最も安い店は、どこですか」

香港で問い合わせ。

見せてもらうと、記事の体裁をとっている広告。ガイドブックには、お店とタイアップした記事や広告が紛れ込んでいることも。

   ○

ジャンル別の分冊百科シリーズ。美術館、博物館、世界遺産、シルクロードなどバラエティーに富んでいる。旅に持参するかたも。

軽い、薄い、大きい、安い、と旅仕立て。

「大きく、見やすいので、私ら年配のものには、いちばんです」

   ○

旅を前にして、いろいろ疑問がわいてくる。

「どうして飛行機は飛ぶのだろう」

「氷河はどうしてできるのだろう」

「ルネッサンスとはなんだろう」

そんな疑問がわいたときの解決法。司馬遼太郎さんのエッセイ「独学≠フすすめ」がヒントに。

「子供むけの本は、たいていは当代一流の学者が書いている。それに、子供むけの本は文章が明快で、大人のための本にありがちなあいまいさがない。」

つづけて、

「そのあと大人のための本をよむと、夜があけたように説明や描写が、ありありとわかってくる。」( 『風塵抄』中央公論社)

   ○

海外では、ことばも大切。フリータイムの多いツアーでは、会話帳や辞書も。かさばらない電子辞書という手も。

「私は、これです」

見せてもらったら、ガイドブックの巻末付録の拡大コピー。

 

 

Aスーツケースありき(10.1)

「想像してごらん、

自分の手から離れた時、

スーツケースが、

どのように運ばれるのかを」

   ○

空港から機内へ。バスからホテルへ。

時には、重い荷物の下になる。乱暴に投げられる。積まれた荷物が崩れて床にたたきつけられる。ターンテーブルでは、高いところから、ドーンとすべり落ちてくる。

「スーツケースは、ずいぶん痛い目にあっている」

   ○

スーツケース選びは、

「見た目より、丈夫なものを」

   ○

荷造りのABC。

中身を区分して、大きいものから入れていく。

重いもの大きいものは、キャスターがついている下側に。

衣類は、中身の見える透明な袋やメッシュを利用。

化粧品、小物は、それそれポーチに入れて。

くるくる丸めた下着やTシャツで、移動防止の詰め物に。

あいたスペースには、ティシュなどの空箱を。みやげが増えたら、即、処分。

   ○

「スーツケースが、半ドアです」

見ると、衣類が挟まって、スーツケースが完全に閉まっていない。

   ○

「現金、貴重品、われもの、入っていませんね?」

荷物を預けるとき、こんな確認をしているのは、日本の空港くらい。海外では、聞くことがない。

もう一つ、預けるスーツケースに入れていけないのが、写真のフィルム。強烈なX線で、ダメージをうけることも。

   ○

預けた荷物が、ターンテーブルから出てくる。

「大変です、スーツケースに傷がついています」

航空会社いわく、

「スーツケースとしての機能に支障がありませんから、免責です」

   ○

「荷物が、出てきません」

「これでは、ないですか?」

「ベルトが、ついていません」

ベルトが、はずれていた。

   ○

はずれたり、ゆるんだりするのはベルトだけでなない。

「ミッキーのぬいぐるみが、ないんですが‥‥」

「ハンカチが、なくなってます」

運搬途中、他の荷物とすれたり、コンベアーに挟まれての紛失や脱落。

   ○

「荷物が、ないんですが‥‥」

見ると、ターンテーブルに一つ残っている。同じメーカーの同色のスーツケース。

他の乗客が、間違えて持ち去ったようだ。

ターンテーブルの近くで気づいてくれればいいけれど、税関を出たあとだと発見が遅れる。見つからないことも。

その、防衛策。

ステッカー、特徴あるベルト、ハンドルにつけたハンカチなど、一目瞭然の目印を。もちろん、名前を書いた荷札は、必須。

   ○

ツアーでは、荷札が命の綱。空港やホテルのポーターは、荷札の色、形で荷物を集める。

空港ポーターの集めた荷物が、ひとつ多い。

二種類の荷札がついている。

「この荷札、前回の時のものじゃないですか」

   ○

「荷札が、ない」

移動中に取れていた。

「荷札が、見えない」

スーツケースに食い込んでいた。

こんなことがないように、予備の荷札を。

   ○

飛行機に預けた荷物が到着空港でターンテーブルに出てこない「ロストバゲッジ」。積み残しや、他の空港に誤って行ってしまったため発生。

ほとんどの場合、翌日か数日以内に届く。

   ○

ツアー客が立腹して、

「訴訟をおこしてくれ!」

航空会社は約款で、同じ飛行機で輸送することを確約していない。

   ○

「あっ、薬が入っていた!」

定期的に服用している医薬品は、貴重品。手荷物として、機内へ。

万が一に備えて、英文の処方箋の持参を。

   ○

「今日は、スッピンです」

こんなことにならないように、飛行機で移動するときは、一日分の下着類と洗面・化粧品は、手荷物で。

   ○

ロストバゲッジのため、荷物の到着しなかったツアー客。

ホテルに到着するなり、

「スーツケース、買いたいんですが‥‥」

翌日到着すると、

「半分、あきらめていました」

   ○

スーツケースの鍵を家に忘れてきたツアー客。

ハワイで、ロック・ドクターという鍵屋さんを呼ぶ。

ホテルに出張してくれて、40ドル。七つ道具を出して、鍵を壊すことなく、ものの20秒であけた。あまりの手際のよさに、

「安くして!」

「じゃあ、もう一度閉めます」

   ○

ロック・ドクターのいない都市では、ホテルの荷物係の出番。ドライバーとハンマーで、鍵を壊してあける。

「ホテルのポーターが、もしロック・ドクターの技術を持っていたら、こわいですね」

   ○

友だちから借りてきたスーツケース。

コンビネーション・キーの番号が、わからなくなった。

「国際電話で、聞いてみます」

   ○

番号がわからなくなったら、根気よく「000、001、002‥‥」と、まわしていく。

三桁の場合、最大でも1000回、1時間くらいでひらく。時間はかかるけれど、壊さないですむ方法。

   ○

「スーツケースが、開かないんですが‥‥」

ロック部分の噛みあわせに問題があることが。

スーツケースを持ち上げて、ドンドンと、上下、左右に衝撃をあたえてOKになることも。

   ○

シンガポールのホテルに到着。

スーツケースを開けたら、入れていた現金がない!

「銀行の封筒に入れていたんですが、封筒だけ残ってます。お金は分散して持てといわれていたので‥‥」

   ○

「危いな」

ホテルの廊下に、有名ブランドのバッグが置いてある。

ポーターが来るまで、見張る人はいない。

朝食から帰ってきても、まだ放置。

「荷物出しは、指定の時間の直前に」

   ○

関西空港に到着。

スーツケースの下から、赤ワイン色の液体が。ボトルが、壊れたらしい。

しっかり下着やタオルで保護していても、気圧の関係や、外部のショックで破損することが。

「ワインより、濡れてダメになった品物が惜しい」

 

B旅空港のひとびと(10、5)

ツアーの集合時間になっても現れない参加者。自宅に電話したら、とっくに出ているとのこと。

集合時間を30分くらい過ぎて、

「おかしいなと思いながら、あちらで、待ってました」

   ○

「お願いします」

と、パスポートを渡され、参加者名簿をチェック。名前が見当たらない。

「<旅のしおり>を拝見させていただけますか?」

出されたのは、別のツアーのもの。

   ○

同じく、ツアー名簿に名前が見当たらないケース。

集合時刻の2時間前、別のツアーを受け付けしているカウンターに。

   ○

出されたパスポートの表紙に、衝撃。「VOID」の文字で穴があいている。失効したもの。

パスポートが二冊目、三冊目のかたが多い時代。リピーターいわく、

「私は、古いパスポートには、<無効>と書いた大きなシールを貼ってます」

   ○

「パスポートは、海外に出ると、命の次に大事! 紛失、盗難に、くれぐれもご用心!」

添乗員が呼びかける。

パスポートを、しっかりおなかに巻いていた旅行者。

確認で出したら暖かい。窓口の係がいった。

「今度、出した時には、孵化して2冊になっているかもしれませんね」

   ○

受付でパスポートを出そうとして、

「アッ!」

空港のコンビ二でコピーをとった際、原稿台に忘れてきてしまった!

急いで引き返す。

「ありましたーッ!!」

   ○

米国など、入国の時、書類の一部が返ってくる。出国時に必要となるもの。ホッチキスで留めてくれる親切な係官。パスポートにはさんだだけの担当官。

出国の時、見つからないということが。

そこで便利なパスポートカバー。カバーの内側にしっかりキープ。

   ○

ローマの空港。

チェックインでパスポートを提示。パスポートカバーに一万円札が挟んである。係員がひとこと。

「デンジャラス! (危ない)」

   ○

最近の出入国審査。パスポート情報の機械読み取り。

そこで、こんな掲示が。

「カバーをはずして、お並びください」

   ○

入国審査場で、係官がパスポートを細かくチェック。表紙のページを、指先で何度も触っている。

入国後、見せてもらったパスポート。汗のため、表紙のカバーが少しめくれている。

偽造パスポートは、表紙をはがし、写真を裏側から張り替えて作成。表紙と写真に係官が注目した理由。

   ○

オーストラリアの日本人むけの入国・税関書類。

質問項目につづいて「はい」「いいえ」の選択肢。

「これで、いいですか?」

見せてもらった書類、「いいえ」の文字に○印が。

正規には、「いいえ」のあとにあるチェック欄に、×印を記入。

「日本人は、×印をつけることに抵抗があるんでしょうね」

   ○

出入国や税関の書類には、サインの欄が。線があれば、その上に。線の下のせまいスペースに小さく書かれたサインを見て、米国の係官がいった。

「サインは、自身をもって、でっかく書きなさい。大統領のように」

   ○

入国書類。氏名、パスポート番号、滞在地などの文字を、米粒のように小さく書いた旅行者。係官が書類をつき返し、

「もっと、大きく書いてください」

   ○

Xマークがあるときには、それに続けてサインを。

「ここにサインを」の意味で、店の人がX印を書いてくれることが。その場合、Xに続けてサインを。

   ○

「出入国カードにサインしてください」とご案内。

「シャーペンでもいいですか」

「公式な書類だから、ボールペンでおねがいします」 

「じゃあ、ボールペン貸してください」

   ○

メモ用紙の代用は手のひらでもできる。

筆記具がないと、大切な電話番号、時刻、人名などを書きとめることができない。

ある人が言った。

「爪で、ティッシュペーパーに書いたことがあります」

   ○

空港のセキュリティーが強化されている。

ホノルル空港のアナウンス。

「ホノルル空港では警備強化のため、放置されたすべての品物、または手荷物は没収され、処分されますのでご了承くださいませ」

   ○

「不審な行為をしている人を見かけたら、近くの保安要員に連絡を」

とアナウンスしている空港も。

   ○

米国の空港に貼り出してあった注意書。

「あなたの冗談が、深刻な事態を招くことがあります」

   ○

空港だけではなく、機内でも、発言や行動に注意を。

軽い冗談のつもりが、とりかえしのつかない事態を招くことになりかねない。

   ○

機内に持ち込めないもの、飛行機に預けられないものが、増えている。

国、空港、航空会社によっても違う。

   ○

冬のオーロラツアー。カイロにつかう備長炭が、発火しやすいと、持ち込み禁止に。

   ○

パリの空港。先が、槍のように尖っているエッフェル塔の置物。

「これ、機内に持ち込めません」

   ○

スイスで買った木製のステッキ。先が尖っている。

保安検査で引っかかり、機内持ち込み不可に。

乗客の言い分。

「お店の人は、大丈夫といいました」

   ○

空港での待ち時間。

「離発着するヒコーキを眺めていると、飽きません」

「空港で動いている車を見るのが好きです。特殊車両が多く、普段、見れませんから」

旅好きには、好奇心旺盛な人が多い。

   ○

乗り継ぎ空港で、いちばん心配なこと。

居眠りと時計の時差ぼけ。

最悪、乗り遅れ、なんてことも。

   ○

ゲートに行ったら、飛行機がいない!

「よく見たら、ゲートが変更になっていた」

   ○

巨大空港は、迷路のようになったところも。

トイレに行ったきり、ゲートにかえってこないツアー客。

息せき切りながら、

「迷いました!」

   ○

免税店、飲食店、おみやげ店などサービス施設がいっぱい。ミニ博物館や美術品の展示スペース、シャワー、マッサージ、インターネットも。ついつい時間を忘れてしまう。

そのころ、機内ではこんなアナウンスが。

「あと、お一人様の搭乗をまっております」

遅れて駆け込むと、皆から白い目で見られることに。

 

C遥かなる大空へ(10.8)

待合室から機内へ。

満員の機内では、あとから乗ると荷物が収納できなくなることが。

そこで、こんなアナウンス。

「本箱に本を立てかけて入れるように、荷物を立てかけて収納にご協力ください」

   ○

座席の下にも、荷物が置ける。置いた荷物が、足おきに。長距離路線では靴をぬぎ、足をのばしてうっ血防止。

「機内用に、古いスリッパを持参しています」と、旅なれた人。

   ○

出発を待つ機内に、機長からアナウンス。

航空会社、路線によって内容に多少のちがいが。日本航空の広州から関西へのフライト。

「お乗りいただいたボーイング767は、当社の整備士ヤマシロによって出発前の確認を受けました」

整備士の紹介を聞くのは、初めてだった。

   ○

「乗務員が急病のため、交代要員を探しているので出発が遅れます」

と、上海の空港でアナウンス。

「見えすいたウソを!」

「いや、本当でしょう。ウソだったら、もうすこしうまいウソをつくでしょう。たとえば、出発前の準備に多少手間取っております、とか」

同じアナウンスを聞いても、乗客の受け取り方はさまざま。

   ○

スチュワーデスという呼び方は、死語となりつつある。

キャビン・アテンダントやフライト・アテンダントと呼ぶ航空会社が多い。日本語では、客室乗務員。

   ○

一人の客室乗務員が担当する乗客は、30人から40人。観光バス一台分とほぼ同じ。

   ○

イタリアの航空機。機内トイレでタバコを吸った乗客。乗務員が、パスポートを取りあげた。すっかり意気消沈。反省の色ありとして、着陸前に返却。

「厳しい乗務員だったら、空港で警察に引き渡されていましたよ」

   ○

安全運航に反する行為の罰則が強化されている。

バス旅行の感覚で、機内で泥酔。乗務員へセクハラ。

「酔っていた」は、免責にならない。

   ○

機内の楽しみは、飲み物や食事。

飲み物のサービスが始まる。

「何がありますか?」と乗客。

客室乗務員はそのたびに、「ビール、ワイン、ウイスキー、コーラ、ジュース‥‥・」と案内。

   ○

そういう日本人の国民性を知っている航空会社は、あらかじめドリンクメニューをアナウンスで紹介。シートポケットに、メニューが用意してあることも。

   ○

機内でビールを注文。

「ハイ、5ドル」

アルコール飲料が、エコノミークラスでは有料の航空会社も。

   ○

二十歳過ぎの女性がそばに座った。

機内食と一緒に白ワインを注文。しばらくしてみると、ワインの小瓶がカラに。

30分くらいたったころ、エチケット袋の出番。トイレに走る。

機内は気圧が低いので、アルコールの回りが地上より速い。

   ○

希望の機内食がたべられない、とのクレームが。

そこで、こんなアナウンスをする航空会社も。

「機内食は、お肉とお魚を半数ずつご用意しています。お連れのあるかたは、それぞれを申し付けていただき、シェアして召し上がっていただくのも、よろしいかと存じます」

   ○

狭い機内で食べる食事は、よくこぼれる。旅なれた乗客。

「毛布をナプキンのかわりにして、しっかりガードすればいいですよ」

   ○

チーズやパンなどの機内食の残りは、非常食に。エチケット袋の出番。

袋に入れた機内食の残りを、出迎えたガイドに渡したツアー客。

「ハイ、おみやげ」

   ○

機内のお手洗いがもっとも込むのは、食事のあとと到着前。

スムーズに利用するには、その時間を避けるのが賢明。

ねらい目は、飲み物、食事のサービス前。サービス中は、カートが通路をふさいで移動できなくなる。

   ○

お手洗いの照明は、ドアの鍵がスイッチに。

「灯りをつけましょ、鍵かけて」

   ○

皆が利用するお手洗い。お互いにきれいに利用したい。JALには、こんな案内が。

「次のお客さまのためにご使用後 洗面器を簡単にお拭きねがいます。」

   ○

機内のエチケット。

「一声かけて、リクライニング」

後ろの席から、シートをこづかれ続けた乗客。

「断りなくイスを倒した」と。

   ○

海外旅行は、時差との格闘。

コントロールは、出発前から。現地の時間に合わせて、就寝・起床時刻と睡眠時間の調整を。

機内では、食事の量でコントロール。目的地の時間にあわせて、平らげたり、控えたり。もちろん、機内でも、睡眠時間の調整がポイントに。

   ○

エコノミークラス症候群と呼ばれている、深部静脈血栓症。長時間おなじ姿勢で座っていると、発生することが。

三つの予防法。

1 ゆったりした衣類

2 ミネラルウオーターでの水分補給

3 機内を歩くなど、適度の運動と足のマッサージ

   ○

機内は乾燥地帯。

マスクが、のどや鼻をまもってくれる。

「それに、寝顔を他人に見られないですみます」

   ○

離着陸時は、気圧の変化が大きいとき。耳が詰まったり、痛くなったりすることが。

全日空の機内誌にのっている対処法。

「飴をなめたり、つばを飲んだりする。あくびをするか、口を大きく開ける。」

効き目がないときの「耳抜き」の方法。

「鼻をよくかんだあと、指で鼻をつまみ、口を閉じたまま鼻をかむ要領で、鼻のなかに息をゆっくり吹き出す。(あまり強く吹き出さない。また2、3回行って効き目がない場合や片方の耳が痛い場合は止める。)」

   ○

機内誌は、情報の宝庫。ルートマップや、機材の案内、旅にちなんだエッセイなど盛りだくさん。

大韓航空の機内誌には、機内サービスのタイムチャートが。便名ごとに、出発から到着まで、いつごろどんなサービスがあるか、ひと目でわかる。

   ○

機内娯楽設備は、長距離路線では欠かせないサービス。

乗客全員で同じ映画を楽しむ時代は終わりつつある。個人液晶画面で、好みの映画がみれる。あちらは、コメディー、こちらは、ホラー。

「キャー!」

一人で絶叫して、バツの悪い思いをすることも。

   ○

オンデマンド技術を搭載したシステムでは、映画だけでも20本くらい用意。見たいときに、見たい番組を、がウリ。早送り、まき戻し、一時停止も可能。

ところが、高機能になるほど操作は複雑に。コントローラーには、たくさんのボタンがついている。年配のかたのぼやき。

「そこまで技術がすすんでいるのなら、声で操作できるようにしてほしい」

   ○

映画だけでなく、オーディオ番組やゲームも。

おまけに端末のコントローラーを使って、空の上から電話も自在。通話料は、かなり割高。

さっそく挑戦した好奇心旺盛なツアー客。

「今、空の上から。時代は変わっているね。それを、実感してもらいたくて電話してまーす。私たちも、変わらなくては」

 

Dお金のメロディー(11)

旅の3要素は、「天気、元気、お金」

   ○

北欧のことわざにいわく。

「旅に出たら口を閉じて財布を開けるべし」

   ○

「旅行に、いくら持っていったら、いいでしょうか?」

海外旅行の草創期には、

「旅行代金くらい」

というのが、ひとつの目安だった。

いまやツアーの形態もさまざま。格安ツアーもある。リピーターも増えた。

そこで、

「クレジットカード プラス 数万円」

   ○

「カードを、海外で使って大丈夫ですか?」

心配するかたも。

銀行のキャッシュカードとおなじ。

「細心の注意を払って、ご利用を」

   ○

カードは便利。反面、便利さゆえの欠点も。

「サインしたら、自己責任」

そして、

「使いすぎに、ご用心」

   ○

「このカードは、使えません」

見ると、国内専用のカード。インターナショナルの文字が入っていない。

   ○

同じく、使えない場合。

店によって取り扱っていないカードが。

読み取り機の不具合で、支払いができない場合も。

「旅のお供は、発行会社の違う2枚のカードで」

   ○

ICチップを搭載したカードが登場。不正防止のために、サインに代わって、暗証番号の入力を求められるケースが。

パリのブランド店。

クレジットカードで支払い。暗証番号を入力するように店員が指示。

「これだったかな、あれだったかな」

つづけて三回エラー。カードが使えなくなってしまった。

   ○

カードを紛失したり盗難にあった場合は、すぐにカード会社に届け出を。24時間受け付けている。

たとえばJCBカードの紛失・盗難のさいの補償。

「万が一カードを不正に使用されても、お届けいただいた日から60日前にさかのぼり、それ以降の損害額をJCBが負担します。」

それにつづく、小さな活字の但し書き。

「暗証番号を使用された場合の不正使用被害は会員の方のご負担となります。」

   ○

電話の利用に際して、ホテルのフロントにカードを提示した宿泊客。カードの裏にサインがない。

「旅行前に、急いで作ったので‥‥」

   ○

プラスチック・マネーとも呼ばれるクレジットカード。

海外旅行には何かと便利だけれど、旅先ですべてをまかなうことはできない。現金の持参が必要。日本円で持っていくか、現地のお金に両替していくか。

   ○

レートは、日々変わる。両替する場所によっても違ってくる。一概にいえないけれど、米ドル、ユーロは、日本で両替して出かけたほうが有利で便利なことが多い。

   ○

「ここ、レートがいいですね」

たしかに、見かけのレートはいい。ところが、手数料が加算されることが欄外に小さく書いてある。

「最低3ユーロ。または、5パーセント」などと。

手数料を含んでいるレートの両替所は、「NO COMISSION」などの表示が。

   ○

実際のレートを知る近道。

「1万円は、何ユーロになりますか?」

これで手取りの金額が明確になる。

   ○

「いやや、いやや、こんなのいやや

ローマの両替所から日本語が聞こえてくる。

「どうしました?」

「両替金額が、友だちと違うの

見ると、金額は同じで、お札とコインの数が違っている。

「私は、何でも友達と一緒でないと、いやや」

   ○

銀行や両替所はまちがわない、だまさない、と思っている日本人。海外では事情がちがう。

「この、お金はなんですか?」

シンガポールで、価値の少ないマレーシアのお金をまぜて渡されたことも。

   ○

「このお札は、破れているから使えません」

ホーチミンの銀行で両替時に受け取った5万ドン札が、店で受け取り拒否に。

ベトナムを再訪したら、5万ドン札が、破れにくいプラスチック紙幣に替わっていた。

   ○

インドなどのヤミ両替商。ほとんどが路上で話しかけてくる。

不思議なことに、お札が新聞紙に化ける。

「手品を見せられたようです」

   ○

「金種は、どうされますか?」

希望を聞いてくれる日本の両替所。海外では、耳にすることがない。

小額紙幣やコインを混ぜてもらうには、ひとこと、

「スモール・バンクノート、プリーズ」「コイン、プリーズ」

   ○

ためようとしなくても、たまってくるのがコイン。

「これ、違いますよ」

店のひとがコインを返してくる。カナダと米国のコインが混じっていた。コインの識別は、外国人にはむずかしい。

   ○

数字の書いてないコイン。価値が大きさに比例していない国も。

相手を信用して、小銭を手のひらに広げ、

「ここから、とって」

   ○

米国では1ドル札が流通しているけれど、お隣のカナダでは、コインに置き替わっている。

カナダで1ドル札のおつりがきた。エリザベス女王の若き日の肖像つき。それを見たカナダ人がいった。

「キープ・イット!(保存しておきなさい)」

   ○

日本人のツアー客に慣れていないホテルのキャッシャーが不思議がることのひとつ。

ホテルにチェックインした日本人グループ。部屋に行く前にキャッシャーに並ぶ。手にはお札が握られている。

「コインに両替してください」

ピローチップのためだ。

   ○

ピローチップの質問で多いのが、金額と置き場所。

枕の上か、下か。それともベッドそばのテーブルの上がいいのか。

「どこにおいたらいいですか?」

米国のガイドの返事。

「メイドさんは、あるものと思って探すから、どこに置いてもいいですよ」

   ○

「アッ、チップおきわすれちゃった」

ホテル出発前に部屋に引きかえそうとする人。

あわてる旅行者を呼び止めてガイドがアドバイス。

「明日の朝、二日分置いてあげてください」

   ○

お金を上手に使いきることは、むずかしい。

そこで、余ったお金のためのマーケット、空港の免税店が待っている。

   ○

有り金を全部出して、足りないところは、クレジットカード。これで、きれいに現地通貨を使いきることができる。

   ○

「これだけ、あります」

残ったコインを見せると、店員さんが、それで買える商品を探してくれることも。

   ○

無駄遣いをしないで、次の訪問国のお金に両替。日本円に再両替する道も。

最後は、空港の募金箱か、旅の記念のコレクションに。