南米の国旗

 

『予告された殺人の記録』という、ミステリアスなタイトルの映画をテレビで見ました。ファーストシーンは、川をさかのぼっていく船。水は濁っています。まわりに高い山は見えず、広々とした平野です。

語り手である白いスーツの中年の男が船から降りてきます。二十七年前その地でおこった「予告された殺人」の真相をさぐるというストーリー。蒸し暑いような、一方で乾いた風土を感じさせる映画を見ながら、舞台はどこなのだろうと考えました。セリフや字幕に国名や地名がでてこなかったのです。中南米らしいことは薄々感じましたが、町の景色に特定できるようなものが登場しません。

ただ、船や町に国旗が掲げてあります。それは、上から黄、青、赤の三色です。この旗になじみがありません。

映画を見おわって地図帳をひらき、南米コロンビアの国旗であることを知りました。

おもしろいのは、コロンビアと同じ配色で中央に紋章があるのがエクアドル。ベネズエラは、三等分の配色で中央にアーチを描いて小さな星がならび左上に紋章があります。

これら三国はとなりあった国々です。かつて、パナマも含めて大コロンビアという一つの国をつくっていました。そんな事情から、独立にあたっても似たような国旗が制定されたのでしょう。

映画には原作があります。コロンビア生まれのノーベル文学賞作家ガルシア・マルケスです。訳者の文庫版あとがきに、映画がコロンビアのモンポスでオールロケされたと書いてありました。

コロンビアといえば、どうしても麻薬とコーヒーというイメージがつきまといます。ハリソン・フォード主演の『今そこにある危機』などのハリウッド映画の影響でしょう。しかし、各国要覧によると、主産業は、織物、砂糖、皮革、鉄鋼、セメント、化学などで、石油、金、銀、プラチナ、石炭などの豊富な資源があります。面積は日本の約三倍で、人口が約三分の一。アンデス山系が南北に走る山がちの国土ですが、映画で描かれたような平野もあります。

ところで、国旗の値段を『読むクスリ 31(文春文庫)で上前淳一郎さんが紹介しています。国際競技などでつかわれる国旗は、鮮やかさを出すためにアクリル布地に友禅で染めて、日の丸で一枚一万円。エクアドルのように図柄が複雑だと一枚二十万円といいます。