■半疑問形の定義
「半疑問形」とは,文末以外の部分を上げ調子に発声する会話手法。
用語「半疑問形」はタモリが命名した。
■出現時期
初めて耳にしたのは3年前。テレビの朝の番組で,若めのおばさん(30代半ば)がインタビューに答えるときに使っていた。発言内に,一種の専門用語を使わなければ表現できない部分があり,『難しいことはなので意図するところのものを適切に表現できていないかもしれませんが,理解していただけますか? 私の用法が正しいかどうかわかりません。間違っていたらごめんなさい。』というニュアンスを込めてあげ調子に発音した。このとき,ワシはこの発声法を好意的に受けとめた。「かっこいい」と思った。つまり,知的で品がある美人が会話中に難解な名詞を使わざるを得ない状況なら全く抵抗感はないのだ。
■起源(推測)
若めのおばさんが発生源であることはまず間違いない。ここからは想像になるが,おばさんはおばさんでも若くて品があるおばさんに限られていたことから,幼い子供を相手に会話をするとき,語彙の乏しい子供に理解できる単語を探るように確認しながら話すときの発声法が半疑問形の起源ではないかと思う。「本格的おばさん」は既に子供が大きくなっているから使う必要がない。ここに[若め]である根拠がある。さらに,子供を相手にコミュニケーションをとろうとする態度は「優しく穏やかな」性格から出てくると思われる。
そんなおばさんが,大人同士の会話でも,一般的ではない用語を使わざるを得ない状況で,相手が理解できるかどうかを確認するために/自分の用例が正しいかどうか確認するために使い始めたのではないか。
英語圏の女性の発声を起源とする説もあるが,上げ調子位置は文脈の区切りであるから,半疑問形ほどの作為的な不自然さは感じられない。
■増殖
最初のイメージが良かったので,それに影響を受けて,ワシも一昨年の夏頃まで使っていた。自分の周囲にも,テレビでも,この発声法を使う人が殆どいなかった。ところが,その後,まずテレビの方から使う奴が増え始め,昨年の初め頃から急増した。そいつらが使う「半疑問系」は本来の用途から乖離し,何でも上げ調子に発声するバカも出現し始めた。
■氾濫
テレビで使う奴がいると真似する奴が増えてくる。まず,若めのおばさん達に蔓延した。それだけで済めば良かったのだが,年齢層が下がり始め,20代の女性にまで下がってきた。そこでくい止められればそれでもよかったのだが,今度は男も使い始めてきて,まず20代〜30代の男が使い始めた。それでも,そこまでならまだ少しは許せる気持ちはあったのだが,次に男性の使用年齢が40代,50代と広がり始めた。中年男の上げ調子は一声聞くだけで鳥肌が立ちそうになる。特に関西の中堅中年芸人では使用率が高い。それでもまだ何とか耐えられた。
今では10代も使い始め,先日はテレビで自制心に欠ける小学生が使うのを聞いて我慢できなくなってきた。こいつらはそもそも用法の起源を知らないものの半疑問形の持つ耳当たりのよさだけはわかるから,まるで小学校で習った文節区切りの練習のごとく,連続して上げる。やたらキャビアを添えたがる某料理の鉄人と同じで歯止めがきかない。
■誤用・変遷
本来,一度の会話で誰か一人が一回だけ使う程度が適度な頻度なのであって,何度も使うものではない。名詞で止めるなら納得できなくもないが,自立語だけでなく,付属語まで上げてくるからイライラする。
そもそも[文中一時休止的体言止め]だったのが,{文節区切り}になり,新種として[品詞分解]派まで出現している。
さらに,上げ調子に発声しない[助詞直前一旦息継ぎ]派が出現した。
■他の新興発声手法との違い
半疑問形以外の新興発声手法は,ただ単に発音が置き換えられているだけなので,伝達速度に差は生じない。「…だし」「…ですし」を「…だしぇ〜」「…ですしぇ〜」と発音しても,会話が全て鼻濁音で発声されても,それらは限られた年齢層にみられる一過性のものなので,時期が来れば,使用者が『お里が知れることを自覚して』自発的に修正する。
■使用者の心理
こいつらは,半疑問形を発したときの本人自身の耳当たりのよさに酔っている。この点はワシ自身が流行前に使っていたからよくわかる。抑制のきかない人は,一種依存症的に常用するようになる。その起源からは完全に乖離し,自己満足自己陶酔の手段に変貌した。しかし,使用者の殆ど全員が意識的に発声しているので,やめさせる方法はある。
■放送局の対応
日本テレビのワイドショーおやじレポーター(前田日明に女性関係をしつこく質問して恫喝されびびった石川敏男)が半疑問形を常用・連発していたが,最近使用頻度が減少した。。ワイドショーを見るのは暇な人だから苦情の電話が殺到したか,プロデューサーが半疑問形嫌いだったのか。このレポーターは江戸弁訛りがあり,江戸弁と半疑問形をミックスさせて芸能ネタを喋るさまは,以前テレビで見たことがあるピアスをした八百屋のおやじよりもおぞましい。歯止めがかからなければ,そのうち国会質疑ででも使われるようになるのではないか。
■常用者への対応
半疑問形はカラオケと同じで,楽しいのは歌っている本人だけ。聞かされる方は不愉快。その上,カラオケと違ってマイクがなくても発せられるものだからよけい迷惑。
この不愉快な発声法に対する対応策を考えて,いろいろ試してみた。
◆すばやく相づちを打つ
半疑問形の中でも特に体言止め使用者は,上げ調子に発生すると同時に相手の目を見る。見つめられた相手は一瞬の間を置いて,何らか表現方法で相づちを打つ。使用者は,この一瞬の間に陶酔している。この陶酔感を感じさせないように,できるだけはやく反応すると,使用者は陶酔できずに,(自覚してはいないが)困惑の表情を見せる。これを数回繰り返せば「この相手に使っても酔えない」とわかって,使用頻度が減ってくる。但し,中毒者には効かない。
◆相づちを打たない
無視する。ふつうの使用者は「この人に使っても酔えない」と判断し,使わなくなる可能性が高い。但し,相手が文節区切り派や品詞分解派の場合は,相づちを陶酔の必要条件としていないので,連続して上げ調子を聞かされる危険性もある。
◆先に半疑問形を使ってしまう
半疑問形は何人の会話であっても,使用するのは一人だけであることが多い。これは常用者が複数いても同じ。常識人は,自分の上げ調子には酔えるが,人のを聞くと不快感を抱く。だから,自分が先に(一度だけ)半疑問形を使ってしまえば,少なくともその場で半疑問形を使う人は出てこない。デリカシーに欠ける人の場合,これが誘い水になって連発される恐れがあるので注意。
◆正々堂々と注意する
これは,相手とよほど親しいか,絶対的上下関係が存在している場合のみ有効。ヘタをすると,人間関係にひびが入るかもしれない。回りくどい方法としては,皮肉を込めて「それは質問か?」と応じる。これも相手によっては危険。
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