笠井一成(かさい いっせい)
ISBN4-7733-2959-9 C0093 P1800E
近代文藝社
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物騒で過激な小説
この本はすべてが過激だ。内容も過激だが,この本に携わった人も過激な出来事に遭遇している。
表紙を描いた漫画家花輪氏は,この本の表紙を描いた直後,趣味のコレクションに「ホンモノ」が含まれていたため逮捕された。その後(マスコミ報道はなかったが)時期が時期だけに初犯にも関わらず実刑判決を受けた。
この本のあとがきを書き終えた映画作家の青井氏は,阪神大震災のとき神戸の実家にいた。それも被害の一番大きかった長田区に。
小説の内容自体も過激。そのうえ,作者は学生時代過激派に所属していたことがあるらしい。全共闘世代よりずっと若いから火炎瓶を投げたことはない。投げたことはないが作ったことがある最後の世代らしい。
この,私小説にジャンル分けされる短編集を書いた笠井氏は,学生時代は自主制作映画にのめり込んでいたらしい。大学院修士修了で都内の某大学に採用されたが,今どき珍しい結核を患って退職,連日見舞いに訪れた同僚の専任講師が現在の奥さんらしい。笠井氏は,結核=文士の証拠と思い込み,以後文学にのめり込む。彼の専門分野は法律学だったはずだが。では,筆力はといえば,数年前に文芸誌「海燕」の文学賞で最後の二人まで残ったことがある。が,最後の一人にはなれなかった。
この本は周辺から内容まで全てが過激だが,最後の一編だけは読後感が,意外にも,とても爽やかで救われる。
目次より
- 形見のハマチ
- 不幸の天使
- 代用標本
- 犬死
- 慈愛なる悪意
- 植物園の怪人
- 言いわけの命
- 謝罪
- 希望
追記:
報道によると,「海燕」は休刊に。
やっぱり,何かが起こる。
注意:
全て事実に基づいています。
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