PC と 68k Mac とひまさえあればだれにでもできる

FUSION
Windows の DOS プロンプトで動く Mac エミュレータ
- インストール(格闘)の記録 -

2000 年 12 月 28 日
追記:12 月 29 日

 

 

FUSION は PC で Mac OS を動かすエミュレータ。
出たころから興味はあったが,「エミュレータソフトの国内実勢価格が数千円」&「動かすためには DOS モードで起動しなければならない」&「DOS 用のマウスドライバを調達しなければならない」等々でインストールを決断・決行するまでには至らなかった。

2000 年夏,FUSION 3.0 になって,Windows の DOS プロンプトで動き,DOS 用マウスドライバ調達不要となり, しかもフリーウェアとして公開された。導入しやすくなった上に無料となれば,もはやハードルはない。
CPU 換装とメモリ増設が終わって PC も好調だし,今は暇もあるし,ということで,やってみた。

インストールに際しては,Emulators Online の「FUSION Macintosh Emulation Guide」と共に,POSEIDON 様の「FUSION-PC Information」も大いに参考になった。


PART 1:インストールする

Step 1:材料確認

PC 本体
FUSION を動かすためのパソコン。「Requirements」にはいろいろややこしそうなことが書かれているが,要するに,Windows 95/98/Me で動いているパソコンなら OK,だと思う。
ワシはうちで唯一の PC,FLORA Tsunami AT を使用。Pentium III 850 を 950 MHz で。

Mac 本体
FUSION の動作には Mac 実機からコピーした ROM ファイルが必要。Quadra, Performa, Centris, PowerBook シリーズ等の 68K Mac 1台。
ワシは Quadra 700 を使用。
もちろん,Mac OS と 動かすアプリケーションソフトも必要。OS は 7.1〜8.1 が使えるらしい。

FUSION 本体
必要なソフトは全て無料で入手(Emulators FTP サイトからダウンロード)できる。
ガイド文書の類いを除けば,ダウンロードするファイルは5つ(合計約 1 MB)。


Step 2:下ごしらえ

※下準備は順不同。ひととおりそろえれば準備完了。

Mac で ROM ファイルを作成する
Emulators FTP の UTILS ディレクトリにある「ROMUTIL.HQX」をダウンロードし,展開して出てきたツールを手持ち 68K Mac(Quadra, Performa, Centris, PowerBook シリーズ)に入れてダブルクリック。
すると,何やら ROM に関する情報が表示される。「OK」ボタンを押すと ROM ファイルを保存するためのダイアログが表示される。ファイル名の拡張子は .ROM にする。後から名前を変えることもできる。ワシは「Q700.ROM」にした。その ROM ファイルを DOS フォーマットのFDに入れて準備完了。
ROM Utility の役目は以上で終わり。

FUSION 3.0 ソフトウェアをダウンロードする
Emulators FTP の SETUP ディレクトリにある4つのファイル全てをダウンロードする。
これは PC 側でやればよいのだが,ワシは Mac でダウンロードして DOS フォーマットのFDに入れた。
上記 ROMUTIL.HQX を含めて,必要なファイルのダウンロードはこれで完了。

Mac OS とアプリケーションソフトを用意する
後述の SETUP を完了してから FUSION 上でも可能なようだが,OS インストールだけでは終わらない作業だし,Mac 側で用意しておくほうが楽に思える。
使用したツールは Apple の Disk Copy 6.1.3。→容量を任意に指定して空の .img ファイルを作成できるバージョンが必要。この Disk Copy 6.1.3 の動作条件が「漢字Talk 7.5.3 以降」のため,7 を入れている Quadra 700 では使えない。
どうせエミュレートするなら音付きで Tetris ができる漢字Talk7を入れたかったので,ワシが実行した手順は:Quadra 700 に外付HDを接続して内蔵HDからシステムフォルダといくつかのアプリをコピーその外付HDを Pioneer MPC-GX1(Mac 互換機・漢字Talk 7.5.5)に接続して Disk Copy を起動,20 MB ほど空き容量を確保した 100 MB の .img ファイルを作成,マウントしたイメージディスクに Quadra からのファイルを全てコピーでき上がった .img ファイルを(あとで PC に移すため)MOにコピー。DOS フォーマットした MO を準備していなかったので Mac 標準フォーマットの MO に入れた。PC には RINGOWIN を入れているからこれで大丈夫なのだ。手持ちパソコン全てをスタンドアロンで使っているとこんなに面倒な手順になってしまうが,費用をかけない virus 対策と思えば苦にならない。←ほんとか?
このイメージファイルを FUSION で「ハードファイル」として認識させるためには拡張子を .hfx にする。ワシは「Mac7.hf1」と名付けた。

以上,下準備は全て Mac 側で行なえる。

 

Step 3:インストール

いよいよ PC 側での作業。
以下,ワシが行なった手順。

1. FUSION ソフトウェアを PC に入れる
ダウンロードしてFDに入れておいた FUSION ソフトウェア全4ファイルを PC のHDへコピー。適当な名前を付けたフォルダ(ワシは「Temp」と名付けた)へ。

2. INSTALL.EXE の実行
Windows [スタート]メニュー>プログラム>MS-DOS プロンプトを選択し,(なっていなければ)Alt-[Enter] (←Alt キーを押したまま Enter キーを押す)でフルスクリーンモードに。 フルスクリーンモード必須らしい。

"us" [Enter](← us とタイプして Enter キーを押す)で英語モードに切り替える。

"chdir.." [Enter] でルートディレクトリに移動。

"chdir Temp" [Enter] で(手順1で作成したフォルダへ)移動。

"install" [Enter] でインストーラ起動。

インストーラが入っているフォルダを確認するダイアログが出る。確認として [Enter] を押す。

インストール先を確認するダイアログが出る。確認として [Enter] を押す。(FUSION は「Fusion」という名前のフォルダにインストールされる)

言語選択画面が現れる。日本人なので「Kanji」を(↓キーで)選択して [Enter] を押す。
※ここで「Kanji」を選んでおくと,後で行なう Setup 画面が日本語で表示される)

"READ1ST.TXT" を表示するか?と問われるので,いちおう "y" キーを押して読み,"esc" キーで抜ける。

ここで勝手に Setup に進むが,その前にやっておくことがある。この段階ではマウスが効く。黒い■をマウスで左上角に移動させて DOS 画面に戻り,"exit" [Enter] で MS-DOS プロンプトを一旦終了させる。

3. FUSION 動作に必要なファイルを FUSION フォルダへ入れる
下準備で作成した ROM ファイル(Q700.ROM)とハードディスクイメージファイル(Mac7.hf1)を,前段 Install で作られた "Fusion" フォルダへ入れる。

4. SETUP.EXE の実行
Windows [スタート]メニュー>プログラム>MS-DOS プロンプトを選択し,(なっていなければ)Alt-[Enter] (←Alt キーを押したまま Enter キーを押す)でフルスクリーンモードに。

(英語モードになっていない場合は "us" [Enter](← us とタイプして Enter キーを押す)で英語モードに切り替える)

"chdir.." [Enter] でルートディレクトリに移動。

"chdir fusion" [Enter] で(Fusion フォルダへ)移動。(※ chdir.. と合わせて入力する方が一手間少なくなりますが,逆スラッシュが正常に表示されないかもしれないので,分けました。)

"setup" [Enter] で SETUP.EXE 起動。

画面右半分に使用許諾条件らしきものが表示されるので,"y" を押して同意する。

ここからマウスで操作。

基本設定:(そのまま)
ビデオ:"VESA_REF.FVD" を選択。(←この VESA_REF.FVD が最も高速だった
「設定」で Refresh Rate: を「60 FPS」,QDXL: Y に。(←数年前に購入したままのパソコンなら FPS を下げたほうがいいかも)
フロッピー:(そのまま)
DEVICES:ハードファイル(用意していた "Mac7.hf1")を選択。
ポート:(そのまま)
ROMファイル:用意していた "Q700.ROM" を選択
サウンド:「BLASTER」→うちのサウンドカードは正確には Audio PCI。Port:220,IRQ: 7, DMA8: 1, DMA16: 0 に設定。初期状態では IRQ が 7 ではなくて,妙な音になった。
CD-ROM:(off)
ADB:「COMMAND Key Definition」のみ "LALT" に変更した。← Mac の Commnad キーと似た位置にあるから。※但し,これに関連して「MS-DOS プロンプト」の設定を一箇所変更しなければならない。←後述
SCSI:(そのまま)
外部ドライブ:(そのまま)
メモリ:20480K に。←実機 Quadra 700 の搭載メモリが 20 MBだから,というだけの理由で。


以上の設定を終えたら「設定ファイル」で「セーブ」

システム情報」は設定を表示する(だけ)。

そして,いよいよ[エミュレータ起動]…
 

PART 2:FUSION 起動

SETUP の[エミュレータ起動]ボタンを押すと,パワーオン直後の Mac と同じような灰色画面になった。
待ち時間数秒。

一瞬「Welcome to Macintosh」のダイアログが見えた直後…爆弾登場。Mac 名物のあの爆弾。化け文字が並んでいる。本物の Mac でも昔(よく)見た。同じく「化け文字」のリスタートボタンを押したらまた爆弾。本物の Mac ならここで Shift キー押し下げ技があるのだが,FUSION では効かず。
Alt-Enter でウインドウ表示に切り替え,閉じるボタンで DOS プロンプトを終了させた。爆弾が出ても Windows の方には影響なし。

爆弾が出るからには Mac のエミュレート自体は正常に行われているもよう。README.TXT には「すべてのマッキントッシュ用システムソフトウェアをインストールしなさい」との記述がある。ワシは実機 Quadra 700 で使用していたそのままの状態をイメージファイルにした。それが原因なのかもしれない。

漢字 Talk7には対応していないのかもしれないとも思えた。

しかたなく「すべてのマッキントッシュ用システムソフトウェア」のインストールからやり直すことに。漢字 Talk7自体が大丈夫であると確信が持てなかったので 7.6.1 に。今度は Quadra 700 の出番なしで,MPC-GX1 で空のイメージファイルを作り,OS 7.6「すべてのマッキントッシュ必要最低限」 → 7.6.1 アップデートを実行。

ハードファイルの指定を変更し,ついでに「設定ファイル」のオプション「PRAMクリア」を実行してから再度起動。

今度は成功。機能拡張類は必要最低限だが,それにしても起動が速い。ウインドウ開閉の反応など本物の Quadra 700 より確実に速い。

Quadra 700 から移した Photoshop 3.0 LE が実用的速度で動く。

SimpleText での日本語入力でも,変換も含めてかなり高速。さてここで Command-Space で入力モード(スクリプト)を切り替えようとしたら Windows のデスクトップに戻ってしまった。→これは Windows のショートカットキーと重なっているのが原因。「MS-DOS プロンプト」のプロパティ>その他>Windows ショートカットキーの「Alt+Space」のチェックを外して解決した。

Mac で使う Windows エミュレータは「ベンチではそこそこ出ても実用的速度からはほど遠い」と言われるが,Windows で使う Mac エミュレータは速いぞ。ということで,用意しておいた Norton System Info 3.2 登場。

このスクリーンショットでは CPU が「Motorola 68040 @ 40 MHz」とまともそうな周波数になっているが,「10000 MHz」と表示されることもあった。
で,肝心の結果は:

なかなか。OS が 7.x 時代の System Info なので基準システムは Quadra 700。
CPU は:

ビデオは:

特にスクロールが高速。スクロールのスコアは 2200超。少なくとも初代 iMac などの RAGE II より速い。
なお,FUSION を動かしているPCに挿しているビデオカードは二世代前の RAGE 128(XPERT 128 AGP)。最新カードならもっと速いかもしれない。
ディスクは:

これには注意点少々。読み込みが異常に速い。メモリから読んでいるのかも。System Info の実行ボタンを押すと(ディスクキャッシュは初期値 96K になっているのに)「ディスクキャッシュが 0 K になっています。128K に設定して下さい」と警告が出た。書き込みは 16K までは速いが,それ以上になると急激に落ちる。16K 以上の書き込みになると実際にHDにアクセスするのかも。
FPUは:

ほぼ妥当な値かも。MPC-GX1(601/66)が 8100 より速いのは LibMotoSh が効いているから。

以上,ベンチマーク終了。

マウスの移動速度が遅めなので調整しようと思ったら,コントロールパネルに「マウス」が入っていない。「必要最低限のシステムソフトウェア」には「マウス」が入らないのか。イメージファイルを作ったときに確認しなかったワシが悪いのだが,腹立つ。メニュー選択時の点滅も気になり,使用している実機 Mac と同じく点滅「なし」にしようと思ったら「一般設定」も入っていない。腹立つ。

非純正 Sticky Click 1.2(OS 8 から採用された Sticky メニューを 7.x で実現させる機能拡張)が正常に動いたのは救い。

純正では,QuickDraw 3D が×だった。QuickTime は動く。

改めて README.TXT を読んでみると「8) Notes on Extensions and Control Panels」に,QuickDraw 3D が使えないと明記されているではないか。見落としていた。(または忘れていた。)

再度,漢字Talk7に挑戦。苦し紛れに OS 7.6.1 を入れたハードファイルから起動して,漢字Talk7のハードファイルをを2台目ディスクとしてマウントし,7.6.1 の System ファイルだけを 7.1 のシステムフォルダに入れ替えたら…起動は成功したが,日本語表示の構造が異なるためか,日本語が化ける。これでは使えない。→化けてはいても「マウス」と「一般設定」コントロールパネルはアイコンで識別できる。この機会に,マウスを早めに,メニューアイテム選択時の点滅をオフにした。

漢字Talk7がダメだったので,今度は英語版 System 7.1 (+Software Update 3.0) を入れたハードファイルを作ってみた。→起動失敗。Mac のスタートアップ画面で「文字なし真っ白のっぺらぼうダイアログ←縁チカチカ付き」が出てしまう。このエラー状態はなつかしい。昔よく見た。→こりゃどうやら 7.1 ではだめらしい。おまけに,念のため Setup で PRAM クリアを実行してしまったのでマウスとメニューバーの設定が初期状態に戻ってしまった。

こうなったら,ちゃんと「マウス」「一般設定」コントロールパネルを入れた OS 7.6.1 を作るのが吉。
「すべての Macintosh 用」では Power Mac でしか動かないものがいろいろ入ってしまうので,7.6.1「すべての Macintosh 用最小限」+各種コントロールパネルを入れたシステムを作り直した。
これでひとまず FUSION システム完成。

ワシと同じくらいDOS プロンプトに不慣れな方向け
FUSION の起動方法:インストールが完了したら,Fusion フォルダ内にできているショートカットをダブルクリックするのが簡単。(プロパティ(右ボタンクリック)で「フルスクリーンモード」にチェックを入れておく必要あり。Command キー割当を Alt キーにした場合は「Windows ショートカット Alt+Space」のチェックを外しておかないと,Mac で Command-Space が効かない。)
ショートカットから起動した FUSION を終了させるには,Mac の「システム終了」選択後に戻る DOS 窓の「閉じる」ボタンをクリック。

最後に:

始める前は「そこそこ動くとしてもせいぜい LC III 程度だろう」と思っていた。ところが,インストールしてみたら,Quadra 700 より速い。 描画はうちの先代メイン Mac(96 年引退)8100 より間違いなく速い。マックライト II での日本語入力は現メイン Mac 9500/G4 で使う Dreamweaver よりもスムーズ。Photoshop 3.0 LE も十分に高速で問題なし。
起動・再起動は本物の Mac よりも(Windows よりも)はるかに高速。←エミュレータだから当然か。
…だが欠点も…。
インストールする前からわかっていたことだが,フルスクリーンモード必須。もうひとつ,PPC ネイティブアプリは使えない。有料の SoftMac 2000 ではウインドウ内表示可能らしい。
マウスというかポインタの動きが「Windows 95 + Pentium 100 MHz 時代」のような感じ。つまり,Mac ほど滑らかには動かない。
マックライトのタブ・行間指定等が並ぶ部分(白地に黒ドットで表示される部分)の表示が乱れる。ちょっと惜しい。
ゲームは…Tetris は案の定,(OS 7.6.1 では)音が出ない。16色モード専用ゲーム Color Vette! は起動時のアニメーション正常で音も出るが,次のクルマ選択画面でなぜか32,000 色に切り替わって表示がおかしくなる。ゲームについては本物 Quadra 700 の存在意義がある。Hellcats は 1024×768 フルディテールでも十分滑らかに動き,問題なし。
Mac のFDをセットすると自動的にデスクトップに現れるのは Mac と同じ。ゴミ箱へドラッグするとマウント解除までは同じだが,PC のFDドライブには自動排出機能がない。代わりにFDアイコンがメニューバーに表示され「抜けますよ」と知らせるからまあいいか。

さて,インストールはしたけれど…
実用性については「」。個人的には,目の前に本物の Mac がある。わざわざ PC で動かす必然性はない。小型ノートPCに入れれば実用的かというと…Mac OS を使う必然性はない。話のタネにはなる。
68k Mac 全盛時代に Windows に乗り換えた人が FUSION を PC にインストールしたら…懐かしいかもしれない。しかも実機 68k Mac よりずっと速い。「68k Mac 1台を使い続けていて,21世紀突入を期にパソコンを買い替えようと思い立ったものの Windows か Mac かで迷っている人」 なら,Windows にして FUSION を入れれば,遺産(Mac ソフト)の有効活用ができる。かもしれない。

結論:FUSION はインストールを完了するまでがおもしろい。

 
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