バイオ宗教(03/5/17)

  1. 人間は何処から来たか

    太古の地球に生命は存在しなかった。 地球が成長するにつれ、隕石の落下が減り、灼熱の地球は冷えて行った。 そうして、満々と水をたたえた海に小さな生命が誕生した。 自己増殖機能を持った生命は次第にその数を増しながら、自然の擾乱に起因するコピーミスよって少しずつ変貌し、分化して行った。 その過程で、自己増殖機能の劣るものは絶滅し、優れたものは更に増殖した。 数億年を経て、変貌を繰り返した生命は藻類(ストロマライト)にまで進化し、太陽光と大気中の二酸化炭素を吸収して、光合成により生きる為のエネルギーを生産し、その過程で大量の酸素を発生した。 大気の主成分は二酸化炭素から次第に酸素に替わり、温室効果の減少で気温が下がると共に、酸素を呼吸して生きる生物が繁栄し始めた。大気圏にオゾン層が形成され、大地に降り注ぐ紫外線が弱まると、生物は海中から陸上に進出して行った。

    こうして、初期の生命誕生から30数億年掛けて進化し多様化した生命は、数億の種に分化し、現在、細菌、菌類、植物、動物に姿を借りて生命の火を燃やし続けている。 従って、現存する生物はすべて30数億才である。 人間も他の生物と同一のルーツを持ち、単細胞の姿をした時代もあった。  しかし、人間はその知能により、自分が何処から来たかを解明した。

  2. 神の存在

    神とは何か。 神とは、人間の限界を超越する存在であり、自然そのものである。 人間は、何故宇宙とその法則性が存在するかを知る事は出来ない。 神が宇宙を創造したとし、神の存在を認めざるを得ない。 その領域は人間の認知の限界を超えるからである。

    神が存在しなくても宇宙は創造出来た、と考える事も出来る。 それは、神が宇宙を創造したと言うのと同意語である。

  3. 開かれた宗教

    宗教の教義は固定されるべきではなく、時代と共に修正されて行くべきものである。 数千年前に造られた既存の宗教には多くの誤りが残存している。 

    真の宗教は常に開かれており、誤りは誤りとして、信者によって常に修正されるべきである。 自然界の謎が解明されるにつれ、それらを取り込んで進化して行くのが真の宗教である。

  4. 生きる目的

    生命発生と進化のプロセスを観察すると、生きる目的がおのずと見えて来る。全ての生物にとって、30数億年続いた生命の火を絶やさない事が生きる目的である。 なぜなら、生命の火が絶えると生命が消滅するからである。

    生命は生き続けなければならない宿命を背負わされている。生命は色々な生物に姿を変え、多様化して生存しているが、生きる共通の目的は「生命を維持する事」自体である。  有限な寿命を持つ生物にとって、それは、「子孫を残す」事である。

    しかし、全ての人が本来の目的達成の為に人生を過ごさなくても良い。種の保存の為の人口は十分維持されており、自分が自由に設定した人生の目的に沿って生きる自由を、人間は享受できる。

  5. 人類の欠陥

    全ての生物は進化の途上にあり、未完成である。 人類も未完成の動物であり、欠陥だらけの生物である。

    生物は自然淘汰によって欠陥を修正され進化して行くが、知能を持った人類は、自分で自分の欠陥を自己修正しながら進化する運命にある。

    人類のかっての天敵が殆ど征服された結果、人類を滅亡に追いやる要因は、人類の持つ欠陥ないしは内部矛盾に起因するものに移行した。 地球資源の浪費、人口爆発、大量破壊兵器、民族紛争、自然環境破壊など、すべて人口の増殖がもたらした自己矛盾である。 自然界では、過度に増殖した生物は天敵や限られた食料によって適度なレベルに調整され、全体のバランスが保たれる。 しかし、人類の場合はこのバランスが大きく崩れ、自然調整力は自己矛盾の形をとって人類に挑戦状を突き付けている。

    自然共生のメカニズムからはみ出してしまった人類は、自己の欠陥と自己矛盾を分析し、それらを自から修正して生きていかねばならない運命を背負わされた。

    人間には遺伝病、癌、免疫力低下など、生物学的な欠陥は多数あるが、現代直面している人類存亡の危機に関わる欠陥はもっと構造的であり、自己矛盾に端を発している。これらの欠陥は時代と共に変化する。

    21世紀に生きる人類の主な欠陥を列挙すると、(このホームページに記載の「人類の欠陥」を参照されたい)

    1. 過度の闘争心

      厳しい自然環境の中を生き抜いて来た人類は闘争能力に長けている。

      人類が地球を支配した現代、「過度の闘争心」は無用の長物となり、人類の長所から、時代にマッチしない人類の欠陥に成り下がった。

      人間ほど戦争の好きな動物はいない。 同じ種が殺し合うとは最低である。 知能の発達が闘争心を規制するまでに行っていない。

    2. 過度の繁殖力

      現存する生物の繁殖力は全て過度である。 それは生き残りの原動力であり、それ自体善である。

      しかし、60億以上の人口を擁し、地球資源を食い潰している人類にとっては、それは善ではなく、欠陥の一つに成り下がっている。 人類に対し自然のバランス調整機能は正常に動作しない。 人類は自分自身で有り余る繁殖力をコントロールするしかない。

    3. 過度の狡猾性

      人類は大脳皮質が最も発達した動物であり、その知力によって現在の繁栄を築いた。 しかし、「悪知恵」を働かせる為にこの貴重な能力が使われる事は日常茶飯事である。 騙しを働く動物は他にもいる事は居るが、人間ほど狡猾な動物はいない。 人類の持つ欠陥の一つである。

    4. 過度のエゴイズム

      人間は自己中心に行動したがる。 皆がそうすると社会は円滑に機能しない。 公共の福祉と何処で妥協するかが常に問われる。

      民主主義は、その様な場合「多数決で決める」と言う単純明快な選択をする。 しかし、現実には本能的なエゴイズムや既存社会が民主的な選択を阻害し、理想的な社会の実現から程遠い状態にある。 これも人類が持つ大きな欠陥の一つである。

    5. 過度の好奇心

      知能の高い動物ほど好奇心が旺盛である。 人間の好奇心はその際たるものである。 遺伝子の謎が解明されるにつれ、人間は自分自身の設計図を自由に変更できる能力を獲得した。 自然淘汰が決めて来た進化の方向を勝手にいじる事が出来る。 これは「狂人に刃物」の危険性を孕んでいる。 人間はそれ程賢くはない。 人間の浅はかな知恵で自然を改造しようなど、奢りも甚だしい。 自然に対する畏怖の念を忘れると、「過度の好奇心」は何時人類の欠陥に早替わりするか分からない。

  6. 如何に生きるか

    1. 個性を生かせ

      有性生殖で生まれた生物には同じ遺伝子の組み合わせを持った個体はいない。  現在生きている人間も遺伝子の組み合わせは全て異なる。 

      人類の誕生以来、この世に生を受けた全ての人間を比較してもこの事は言える。 また、未来永劫生き続けるであろう人類の個人個人についても、同じ事が言える。

      要するに、同じ遺伝子の組み合わせを持った人間は現在、過去、未来を通して1人しか存在しない。

      それ程、個人個人はユニークな存在なのである。

      頭の良くない遺伝子を持って生まれ、勉強が出来ないと言って嘆く事はない。 ユニークな個体には、その人にしか無い優れた個性が必ずある。 その個性を生かした生き方をするのが、その人にとって最も快適な生き方である。 自分の個性を生かし、好きな事をして生計を立てるのが、本人にとっても社会にとっても最も幸せな生き方である。

      社会的に有利な遺伝子を持った人が威張った言動をするが、その人が立派なのではなく、たまたまその人の遺伝子が社会的要請にあっているだけの事である。 ノーベル賞を取った人は偉いと社会が高い評価を与えるが、それは遺伝子の組み合わせが上手く行った事を皆が評価しているだけで、その個人自体を評価しているのではない。 そこを履き違えている人が多い。

      これは人種差別に通じる考え方である。 黒い肌の人も白い肌の人もお互いに優劣は無い。 個人や民族の優劣は何を基準に付けるべきか。

      その時代が要求する資質を持ち合わせているかが優劣の基準らしいが、そんなものは時代と共に変化する。 また発展途上国の人は生来劣っているのではなく、歴史的な発展過程のちょっとした遅れで貧困に喘いでいるだけである。 過剰なエネルギーを消費している先進国の人の方が余程悪い事をしている。 アフリカの人を子供の時からアメリカで育てると、ノーベル賞受賞者が沢山出て来る可能性は十分ある。

      我々は多様性の中に真の価値を見出すべきであり、特定の個人の偶然の特質に価値を置くべきではない。

    2. 愛する人と暮らせ

      人間の生きる目的は、本来子孫を残す事である。

      その為には生殖の為に相手を必要とする。 人間は異性を愛する様に出来ており、お互いに気に入った相手を見つけて生活を共にするのが目的に適った生き方である。 最近は離婚するケースが次第に増大している。 従来から採られて来た結婚と言う形式に拘る必要は無く、もっと自由な男女の結び付きが有っても良いと考える。

    3. 子供を愛しめ

      愛する者同士で子供を作り、立派に育てるのが人間本来の生きる目的である。 過度の繁殖力により人口爆発を起こし、自己矛盾に陥っている人類であるが、子供を愛しみ育てる事ほど重要な事は無い。これ以上人口が増えないように子供の数を2人に制限するのが賢明な選択である。ただし、アフリカなど乳幼児死亡率の高い国では生存する子供の数を2人に制限するべきだと思う。 両親が離婚するのは望ましくは無いが、仕方の無い事である。 離婚後も責任を持って飼育すれば問題無い。 

    4. 生活の糧を得る

      効率化を求めて、社会はますます分業を進めている。 昔は殆どの人が狩猟や農業で生計を立て、家族を養っていた。

      しかし、文明の進んだ現代は人が作った家に住み、会社などで働いて金を稼ぎ、人が作った食料や生活必需品などを買って使っている。

      家族を養うと言うのが最終目的であり、金を稼ぐ事自体が目的ではないが、そう思っている人が世の中には沢山居る。

      誇大宣伝や詐欺で大衆を騙し、大金をくすねている連中は全て金の亡者であり、真の目的を履き違えている。

      自由競争至上主義の現代資本主義は多くの欠陥を抱えながら効率化の為に猛進している。 全ての人は疲れ果て、貧富の差は拡大して行く。

      もっと精神的にゆとりのある社会を取り戻すべきである。また、正直者が馬鹿を見るような不公平な社会の改革が必要である。

    5. 命を大切にせよ

      全ての生物は同一のルーツを持っている。 今生きている生物はすべて37億年の時間を生き、すべてが兄弟である。

      多様化した生命はすべて大切にせねばならない。 食物連鎖や死を通して、すべての生物は相互作用をしている。 粗密な関係の違いはあっても相互に調和した関係を維持して生きている。

      人間の環境破壊やエゴによってそのバランスを崩してはいけない。

      「死に急ぐ若者」、「ネット心中」など、自ら命を絶つ連中がいる。この人達は自分が何の為に生まれて来たのか、自分の生命が37億年生き続けて来たかけがえの無いものである事を知らない。虐めとか友達がいないとか、子細な事で大切な命を絶とうとする。「バイオ教」の信者になれば、彼らは救われると思う。

      自分の命を大切にすると同時に、他人や他の生物の命も大切にしないといけない。 しかし、動物は植物の作ったものや他の動物を食って行かないと生きられないので、生きる為の最小限の殺生は許される。

      許されないのは、不必要な殺生である。 その際たるものは戦争である。動物を虐待したり、山の木をむやみに切るべきではない。自然の資源は人間の為に有るのではなく、生命維持の為にある事を忘れてはいけない。

      両親を含め、先祖を敬わねばならない。今貴方が持っている生命を譲ってくれた人は最も関係の深い人達であり、尊敬し大事にしなければならない。 親は子供に親孝行を期待しないが、子供は出来るだけ親孝行に励むべきである。 もともと、人間は大家族で助け合いながら生活して来た。 今は核家族に分解されたが、これは効率化を身上とする現代資本主義の弊害の一つである。 早く本来の姿に帰るべきである。

    6. 罪を憎んで人を憎むな

      人間は罪を犯し、社会は罪人を制裁する。

      罪は人間の弱さの現われであり、根源的には遺伝子によって誘発される。 遺伝子の組み合わせは無数にあり、罪を犯し易い遺伝子を人間は持っている。 幾ら罪人を処刑してもその遺伝子は消滅せず次世代に継承される。人間は与えられた遺伝子を持って生まれて来るだけで、罪深い遺伝子を持った事はその人の責任ではない。

      従って、我々は人を憎んではいけない。 人類の欠陥としての罪業を憎むべきである。

    7. 死を恐れるな

      生物は全て個体の死を怖れる。 死を怖れない様な個体は生き残れず、その種族は絶滅する。 従って、現存する生物は必然的に死を怖れる習性を持つ。 人間も例外ではなく、例えば不老長寿を望む人は多い。

      我々が怖れる死はあくまでも「個体の死」であり、既に子孫を残した者は、何時死んでも良く、それは本当の死ではない。生命は子供に引き継がれているから安心して死んで良い。

      人生の真の目的を理解すれば、死は怖れるに当たらない。

      本能的に死が怖いだけである。 地獄も天国も無く、有るのは自然への回帰であり、将来の生命誕生(どんな生物の一部になるかは分からない)の一端を担うべく、「土に返る」のが個体の死である。

      日本は世界最長の長寿国であるが、長寿である事はそれ程目出度い事ではない。 若い人が老人介護に追われ、余分な負担が増す。

      我々老人のすべき事は出来るだけ周囲に負担を掛けないで「ピン・ピン・コロリ」とこの世にサヨナラする事である。 「PPK」と死ぬのが理想的な死に方である。

  7. 信条10か条
    1. あらゆる生命体は皆、兄弟である。
    2. 生命は不滅である。
    3. 愛する事は善である。
    4. 生きる目的は自由に設定できる。
    5. 自分の個性を生かせ。
    6. 罪を憎んで人を憎むな。
    7. 他人や環境を大事にしなければならない。
    8. 地球を汚染してはならない。
    9. 自然を勝手に制御してはならない。
    10. 神は全能であり、すべての生物・無生物は神のもとに平等である。