生命の驚異(03/6/24)
放送大学の講義には生物学に関するものが数講座あり、その中に「ゲノム生物学」と言う講座がある。 その第11時限目に「バイオ・インフォーマティクス」についての講義があった。
今までの生物学は、物質やエネルギーの流れを通して生物の生態を観測して来たが、生物の持つ厖大な情報量に着目し、コンピュータを駆使してそれを体系化するのが新しい生物学「バイオ・インフォーマティクス」であると言う。 ヒトゲノム計画、DNA情報の解析、DNAによる生物の進化の解明、バイオコンピュータなど着々と成果を上げている。
この講義の中で非常に面白い事が指摘されたので、それらを抜粋してみよう。
講義中に示された図を2つ掲載して置く。
受精した時たった一個の細胞だったものが60兆個に分裂し、骨格、筋肉、神経系、循環系、消化系などよりなる身体を形成する。 自然が30数億年掛かって作り上げた生命体のスケールの何と雄大な事か。 30数億年の歴史が我々の体に凝縮している。 生命が如何に貴重な存在かが分かる。
さて、ヒトゲノム計画により30億個のDNA塩基配列は全て解明された。
(注: DNA塩基は4種類あり、一つが2ビットの情報を担う。 従って、全部で60億ビットとなり、バイト(=8ビット)単位で表すと8.25億バイトの情報量となる。CDディスク一枚の記憶容量は700MBであるから、825MBあるDNA情報はCD一枚には収まらない。)
次の段階は、この暗号文の解読である。 情報文には必ずその文法があり、文法が分かれば解読が容易になる。 自然が作った文法はそれ程複雑なはずは無い。 単語の意味(各遺伝子の機能)と文法(遺伝子発現のアルゴリズム)を解読すれば、我々は長大な暗号文(DNA配列)から「神」の意志(自然が40億年掛けて蓄積した情報)を読み取る事が出来るかも知れない。 人間は何処から来て何処へ行くのか。
それを「永遠の謎」に終わらせてはならない。