動物的恋愛論(07/04/03

  1. 人間独特の求愛行動

    一般に人間の求愛行動は複雑である。 心理的な葛藤や言葉による微妙な意思伝達の齟齬によって、目的を達成するまでの過程が複雑で時間が掛かる。 物事が必要以上に心理的な粉飾や修飾を受けるので、事の本質が見えにくい。

    これに対し、動物の求愛行動は単純明快で分かり易い。 両者の行動に本質的な差は無いはずであり、人間の求愛行動の修飾部分をそぎ落としてその赤裸々な姿を直視すれば、それは動物の一般的な求愛行動と同等であるはずである。

    動物には短期間の発情期があり、求愛行動はその時期に限定される。 しかし、人間は常に発情しているので、求愛行動は何時でも自由に行われる。 この点も人間の求愛行動を複雑で分かり難くしている大きな要因である。 脳の機能が発達すると、動物的な明確な発情期の症状が不明確で複雑な様相を呈する様になるらしい。

  2. 恋愛の真の目的

    動物の求愛活動の真の目的は交尾であり、次世代に生命を引き継ぐ事である。

    人間の場合も同じである。 プラトニックな恋愛とか同性愛と言った派生的な恋愛もあるが、殆どの求愛の最終目的はセックスである。 更にそれは結婚に進み、社会的に公認された一対の男女として、家庭を築き日々の糧を得ながら子供を育てる事になる。 この点、動物の子育てと本質的な違いは無い。 一般に一夫一婦制が維持され、分業化された社会で特定職業に付いて生活の糧を得る点が、一般の動物と変っている。

    しかし、最近の恋愛観には変化が見られる。 結婚と言う形式を踏まない同棲生活、シングルマザー、精子バンクを利用した人工授精など、子供をもうける為に結婚と言う形式に拘らないケースが増え始めている。 また、子供を持たない約束で結婚するケースから、恋愛感情だけを楽しむ恋愛至上主義、結婚しないシンドロームまで多種多様である。 人口爆発と言った大きな課題を突き付けられた人類、もっと自由に生きたいと言う人間が新しい生活のスタイルを模索している。

    図録▽独身男女の結婚意思と異性との交際状況
    を参照して下さい。

  3. 粉飾された恋愛論

    古今東西、何時の時代を問わず、男女の恋愛を扱った小説、映画、演劇などで世の中溢れ返っている。これこそ作家が求める永遠のテーマである。 動物が求愛や生殖行為に命を賭けるシーンは良く見かけるが、人間にとっても生涯で一番大事な事始めは恋愛なのである。 なかには趣味や仕事、金儲け、学究などを第一に挙げる人もいるが、それらは少数派に過ぎない。

    恋愛感情は起伏に富んでいるので小説の題材になり易い。 小説家は恋愛感情の機微を強調する為、不倫、身分の相違、病魔、浮気、別離など色々な障害を設定して恋愛を描く。 そこには幾らでも感情を誇張し、粉飾したくなる誘因が潜んでおり、恋愛の真の目的など忘れて、甘美な感情に身を委ねる恋愛至上主義に走る作風も多く見られる。 生物学的に見るとわずかなホルモンの分泌がなせる業を、針小棒大に数百ページの大恋愛小説に仕上げる所など、驚異の技と言わざるを得ない。

    「宇宙で最も複雑怪奇な交尾の儀式」と言う長い題名の映画があるが、この映画ほど人間の恋愛行為の本質を突いた風刺映画は無いだろう。 他の宇宙人から見ると人間の生殖行為は「複雑怪奇な儀式」に見える事を看破した、私の一番好きな映画である。

    確かに生殖に要する時間は生活のほんの一部である。 しかし、それを中心にして他の生活は構成されている事を忘れてはならない。バランスの取れた食事をして健康を維持し、満員電車に揺られて通勤し同僚との激しい競争に打ち勝ちながら一生懸命仕事をするのも、その最終目的は次世代への命の継承にある。 恋愛に現を抜かす事が最終目的ではなく、その後に来る妊娠・出産・子育てこそ本来の目的である。 

    人間も含め生物の生きる目的は、遺伝子の中に埋め込まれており、特に努力しなくても合目的的に行動するように出来ている。 その事を自覚しなくとも、自然のままに生きておれば本来の目的は達成できる様に出来ている。 しかし、近来の激しい競争社会では、時々暇を見て、人間本来の生きる目的を再確認しないと、人間としての正道を踏み外す危険性が随所に待ち構えている。

  4. 少子化対策

    近年、女性が生む子供の数が1.29にまで下がり、この傾向が続くと日本の大切な資源である人的資源が急激に減少し、後数十年すると、わが国の人口は8000万を切ると予想されている。 政府もあわてて少子化対策専任の大臣を置き、本格的な対策に取り込み始めた。 例えば、最近では男性社員が育児休暇を取れる会社が出始めている。

    こんな事は今までは無かった。 共稼ぎの家庭が多くなり、女性の社会進出が一般的になった今日では、子育てに男性の協力が欠かせない状態の家庭が多くなっている。

    昔に比べて世の中も変ったものである。 

    人口爆発が地球環境を破壊しているので、戦前の様に多くの子供をもうけるのは避けるべきだが、少な過ぎるのも色々な悪影響を社会に与える。 私は、その国に適した人口規模が存在し、その目標に向けて人口推移を誘導すべきだと思う。

    私は、日本の人口は8000万人位が最適値ではないかと考える。 現在は人口過密が多くの悪影響を与えているので、その様に思う。 ウサギ小屋と揶揄されない家にゆったりと住みたいものである。 

    人間は理性を持っているので、自分の発情をコントロールしたり、産児制限をする事が出来る。 本質的には動物と変らない恋愛行動を理性によって制御し、自然との共生を図りながらかけ甲斐のない地球環境を守って行けるかどうかが、今問われている。