クローン桜(07/01/30

野生の桜は実生植物であるが、「染井吉野」は実をつけない。

桜の研究者によると、染井吉野は江戸末期に、染井村(現在の東京都豊島区内)の植木屋が「吉野桜」として売り出したと伝えられる。

その起源をめぐっては諸説があった。原産地は伊豆大島だとする説や韓国の済州島だという説があった。これらは数回の現地調査で否定された。大正5年には、アメリカのウイルソンがオオシマザクラとエドヒガンとの雑種とする説を提唱した。

明治10年代には東京の桜の名所も多くはヤマザクラから染井吉野に替わり、熊谷堤、荒川堤など広く植栽され始めた。小石川植物園(東京都文京区)には、戦災を受けるまでは明治8年植栽の東京で最古の染井吉野があったという。公園や河岸への植栽、そして、鉄道や道路、また、学校や兵舎の建設とともに、全国的に広まっていったようだ。

日本さくらの会が平成二年に選定した「桜名所百選」をみると、染井吉野が半分以上を占める所が八割近い。明治の末に、東京市長がアメリカに1000本の梁井吉野を贈った。日本だけでなく、ワシントンのポトマック河畔にも染井吉野は咲いている。

(以上はhttp://www.jsdi.or.jp/~y_ide/k_somei.htmより引用)

ソメイヨシノは、その咲き際の美しさから全国に普及したが、実生でない為、それらは他の自然種の桜に接木して出来た、いわゆる「クローン」桜である。

クローン羊でも問題になった様に、体細胞から生まれたクローンは、生まれた時既に元の細胞の年齢に達している。 

「長寿国の悲哀」でも述べた様に、生物の細胞には「寿命遺伝子」がある事が分かっている。これは、「テロメア」と言われ、48個ある染色体それぞれの末端に付いていて、細胞分裂が起こるたびにその長さが短くなり、分裂を50−100回繰り返すと、分裂能力を失い死に至る。 

ソメイヨシノは接木で育成されるので、その寿命は、接木した時の指し芽の寿命分だけ短くなる。 大元の木が江戸時代に生存したとすると、今接木されているものは既に

100年以上の年齢を持っており、見かけは若くても、遺伝子レベルでは老木である。

現存するソメイヨシノの桜並木を見ると、老木が多いのはこの所為ではなかろうか。

もう一度、最初の交配をして染井吉野の若木を作り、それを親木として接木をする様にしないと、近い将来、ソメイヨシノは絶滅する運命にあると言える。

もう一つの若返り法は、遺伝子レベルで「テロメア」を継ぎ足してやる事で、今の技術レベルでは難しい事ではないだろう。

いずれにしても、子孫代々までソメイヨシノの花を楽しむには、これらの対策を早急に取る必要がある。