日本人の保守性(03/1/19)

  1. 日本人の特質

    日本人の遺伝的な特質は何か。 日本人の本当のルーツは東南アジアの何処かだと思うが、最初の日本人がこの島に移住した後、違う種族が次々に渡来し、先住民を駆逐したり同化して、複合した人種に変貌して行った。

    大和朝廷が日本を統一した頃は日本は後進国で、中国や朝鮮から進んだ文化を取り入れるのに懸命だった。 進んだ文化を齎したのは別種族の人間であり、彼等との混血で新しい遺伝子が混入し、本来の日本人の特性に変化を齎した。 現在の我々日本人は、渡来した色々な民族の血が混ざり合った複合体である。

    日本人の特性は複数の民族から引き継いだ遺伝子群によって特徴付けられており、他の民族についてもそれぞれ同様な事が言える。これまでの日本の歴史を見ると、おぼろげながら日本人の特性が読み取れる。 

    第2次世界大戦中は、国家に忠誠心を持つのが日本人の特徴だと言う暗示に罹り、沢山の人が戦場で命を落とした。 終戦後は脅威の経済復興を成し遂げ、日本人は非常に働き者であると言われた。私はバブルの弾けた後の日本人の行動を見て、日本人はすごく保守的な国民だと思う様になった。

  2. 自民党の一党独裁

    戦後55年以上が経過し、未だ自民党の一党独裁体制が維持されている。 細川内閣誕生の頃、短い期間だけ自民党が野党だった時期があったが、直ぐに振り出しに戻ってしまった。 長期政権による政官民癒着の制度疲労が明らかになっても、自民党の支持率は下がらない。 民主党や乱立する少数野党の支持率は一向に上がらない。 日本人は何を考えているのか、結局現状に満足している人が大多数を占めている。

    政治の腐敗、癒着構造、構造改革抵抗勢力の存在が明らかになっても、政権交代によって政界を浄化し、正常に機能する社会に変革しようと言う声が上がって来ない。 経験の少ない野党勢力を育て、2大政党制を軌道に乗せて、腐敗や癒着しがちな政界の構造を改革しようと言う強い意志が感じられない。

    選挙をしても投票率は50%を切り、特に若者の棄権率が高い。 投票率50%以下の選挙は無効にした方が良い。選挙民は投票権を行使する事によってのみ政治を変え得るのであり、大多数の意志が反映されない選挙は本当は無効なのだ。 棄権者には罰金を科す位の厳しい処置を取らないと政治は良くならない。 投票率が低いのは政党政治に不満を持っているからだと言われるが、私はそうではなく、ぬるま湯の現状に満足しているからだと思う。 日本人は保守的な国民であると結論せざるを得ない。

  3. エコノミック・アニマル

    日本人は一時エコノミックアニマルと蔑まれた。 バブル経済のコントロールに失敗し、今その後遺症に苦しんでいるが、土地転がしや不動産投機で不当利益を上げた連中がしっぺ返しを受けているに過ぎない。

    欲の突っ張った連中が甘い夢に酔い痴れた後、その報いを受けている。 神妙にお縄を頂戴すれば良いのに、何とか罪を逃れようと悪足掻きをしている。 当時の責任者は、神妙に懺悔して己の犯した罪を認め、社会の一線から潔く退くべきである。 その辺の潔さが日本人には無い。 我々国民の迷惑も考えず、公共の資産である土地の値段を吊り上げてその儲けを独占し、世界一物価の高い国にしてしまった過ちを反省すべきである。

    土地成金を生んで所得の公平な配分に失敗し、不労所得で貧富の差の拡大を放置した政治家、官僚、経済界の失政の責任を明確にし、それによって歪められた経済社会システムを早く正常なシステムに修復しなければならない。 しかし、現在の自民党政治が目論んでいるのは、そんな事ではない。彼らは資産家の損失を出来るだけ回避し、資産価値の減少に歯止めを掛け、あわ良くば元の鞘に納めようと目論んでいる。

    土地の値段をもっと下げなければ正常な経済基盤や公平な社会は構築出来ない。 土地保有税の減税、累進課税の上限緩和、遺産相続税の軽減などは断じてやるべきではない。土地神話の夢が忘れられない島国根性を叩き直さなければ、本当の日本の再建は出来ない。

    輸血用血液製剤による血友病患者のエイズ感染にしても、メーカの利益を重要視するあまり迅速な対処が出来なかった。 逆に、新薬の認可も諸外国より遅く、その為に尊い人命が犠牲になっている。 先に発売した薬が売残るのを心配しているとしか考えられない。 人々の健康維持の為に薬を売っているのではなく、金儲けの為に売っていると勘違いしているに違いない。

  4. 誤魔化しの効く国

    金儲けの為なら少々誤魔化しても構わないと言うズル賢さがある。国産牛偽装事件、鶏肉詐称事件、雪印牛乳賞味期限詐称事件など消費者を誤魔化して金儲けを企んだ事件が多発している。 族議員が政府に補助金を出させ業者に還元する税金の無駄使いと、それに有り付こうとするガメツイ業者の醜い姿が浮き彫りになっている。

    企業献金は賄賂ではないと言うのも誤魔化しの最たるものであり、必要経費を過剰申告して脱税している自営業者や公共事業の談合入札で暴利を貪る土建屋も、口利きをする政治家も全て同じ穴の狢である。

    先進国のイギリスでも政治が私利私欲に利用された時代があった。 日本も今その轍を踏んでおり、本当の先進国に成長していない証なのかも知れない。そうなると、これは日本人だけの問題ではなく、人間の本質的な欠点であり、遅れた文明のもたらす悪弊とも考えられる。

  5. 封建社会の残滓

    民主化されたと言っても、日本には封建時代の残滓がまだ残っている。学閥などの派閥社会、家柄、世襲制度、義理人情、ヤクザ、など過去のしがらみを背負って生き残っている。 塾通いや有名校指向も学歴社会の残滓であり、過去の遺物であって、これからの社会を生き抜くには何の効果も無い。

    社会組織はどんどん実力優先の社会に変貌しており、過去の悪弊はその内消滅するかもしれないが、日本人の保守性が支えとなって案外長く生き残る可能性がある。

  6. 土着性

    成田闘争に見られる様に日本人の土着性(土地執着性)は相当なものである。 島国の農耕民族の宿命か、自分の土地に執着する。 大都市にバイパス道路を計画しても、土地買収に手間取りなかなか実現しない。 立ち退きを拒否する人が多いからである。 公共の福祉の為個人を犠牲にすると言う発想に欠ける。 変な個人主義の取り付かれており、他人の事は二の次である。

    家を建てるのも自分勝手であり、町の美観を考慮すると言う発想が無い。 外国の整然とした町並みに比べ、日本の都会の何と醜いことか。このような日本人の後進性は、要するに、昔ながらの百姓の土着性に由来しており、洗礼された都会人に成長していない証拠なのである。

  7. 好戦性

    日本人は「熱し易く醒め易い」と言われる。戦争で「玉砕」を選んだ国民は、日本人とパラグアイ人である。

    パラグアイでは、隣国と戦争して若い男が玉砕した為、一時「木から女性が降る」と云われるほど男性が居なくなった。 日本の神風特攻隊、アッツ島玉砕、腹切りなど、武士道精神と似た「ナイト精神」がパラグアイにも有った。 自己を犠牲にすると言う事は「好戦性」の裏返しでもある。

    平和憲法を改正し、自衛の為、国際平和の為に戦争出来る様にしようと云う動きがあるが、これは日本人の好戦性に火を付け、近い将来、戦争へ道を歩む危険性を孕んでいる危ない選択である。

    (私の意見「戦争への道」参照)