コピー時代(03/1/5)

  1. 生物の本質はコピー

    クローン人間は片親の遺伝子を完全にコピーした人間であり、両親から生れた人間は父親と母親から50%づつの遺伝子をコピーした人間である。 一卵性双生児は両親から50%づつ貰った遺伝子の同じ組み合わせを持った二人の人間である。 いずれにしても、親の遺伝子がコピーされて子供が生れる。 突然変異はコピーミスであり、ミスが累積するのが進化である。 複数の生物が共生して新しい種が誕生したり、複数の細胞が結合して新しい多細胞生物が発生する過程もあるが、いずれもコピーが基本になっている事に変わりは無い。

  2. 情報は皆のもの

    作家は何故小説を書き、絵描きは何故絵を描くか。

    人間は生来、新しい情報を創造し、それを外界に発信したいと言う願望を持っている。 もともと、金儲けの為に小説や絵を描いているのではない。

    外界に発信した情報は出来るだけ多くに人に受信して貰いたいと思っている。 その為、情報がどんどんコピーされて広い範囲に伝搬する事は、本来望ましい事である。 それなのに、コピーガードとか、知的所有権の保護とか言ってコピー出来ない様に妨害するのは何故か。 

    人間は生きる為に生活の糧を得なければならないので、無料でコピーさせては食って行けない。 しかし、程々の糧を得られたら、それ以後は自由なコピーを許すべきである。 現行制度は余りにも金儲け主義に傾いており、情報の値段を不当に吊り上げている。 本来万人が自由に共有すべき情報の有り方が大きく歪められている。

  3. コピー技術の進歩

    最近はコンピュータ技術が長足の進歩を遂げ、如何なる情報メディアも簡単にコピー出来る様になった。 情報処理の半分以上はその情報をコピーする事であり、真の意味での情報創造はほんの一部に過ぎない。

    外部から受信した情報をコピーして個人的に利用する環境は、着々と整備されている。 情報のコピーには殆ど材料は要らない。 自由空間を只で電波が伝搬するように、情報の伝搬も低コストで出来る。 技術進歩によりそのコストは急速に低下している。2時間の映画を記録するDVDディスクの値段はその内100円を切るだろう。

  4. ミリオンセラーの値段

    一攫千金の夢が叶えられる「ミリオンセラー」とは一体何か。

    1万冊売れれば益が出ると予想して値段を決めて売り出した本が、100万冊売れたら、紙代や諸経費を除いた一冊当りの純益X99万倍の金が懐に入って来る。 本の原価率は10%程度であろうから、一冊1000円の本なら900X99万=9億円の儲けになる勘定だ。ウインドウズOSを独占しているマイクロソフトが儲かって笑いが止らないのも、同じカラクリである。

    私はこのやり方は間違っていると思う。 創造された情報の価値は売り上げに比例すべきではない。  適度に決められた情報の価値と言うものが有り、売り上げが増えれば本の値段はそれに反比例して下げるべきである。それが情報の公益性に適った遣り方であり、今の金儲け主義的遣り方は間違っている。 家電などが採用している「オープン価格」制を採用し、本の値段を書店が自由に変えられる様にしておけば良いのではなかろうか。

    パソコンのソフトやCD,DVD等のコンテンツの値段も変動性にし、出来るだけ多くの人がそれらの情報を安く利用できる体制に持って行くべきであると考えるが、これは資本主義の時代には通用しない戯言であろうか。

  5. 海賊版の流布

    海賊版の取り締まりが声高に叫ばれている。

    特に発展途上国ではそれが大きな問題になっている。 彼らは貧乏であり、高い情報を買う金が無い。 そこで、最新技術を使って安くコピーし、安い値段で皆に配布している。

    この行為は今の資本主義社会では違法行為とされるが、私は現行制度の方が修正されるべきだと考える。

    前章で述べた価格の決定法を採用すれば、安い値段で情報が流通する様になり、海賊版など自然に駆逐されるのではなかろうか。 それまでは余り海賊版に目くじらを立てぬ方が世の中の為になると思う。

    富の分配法を改め、出来るだけ貧富の差が生じない様な仕組みを考える時期に来ていると、私は思う。

  6. コピー薬製造

    1月5日付の読売新聞に「ガリバーと世界」と言う特集記事があり、アメリカの経済覇権主義(グローバリゼイション)が批判されている。

    その中で、WTOが、医薬品の特許保護を緩和し、エイズやマラリアに苦しむ途上国が安価なコピー薬を製造・輸入出来る様な体制を審議しており、中国と米国の反対で協議が決裂した、と報じている。

    医薬品は米国が最も強い競争力を持つ分野であり、「米国は、自国産業の利益を守る為には、なりふり構わない」と他国から批判されている。

    製薬会社は金儲けの為に新薬の開発に血眼になっており、病気で苦しんでいる人を助ける為、と言う本来の目的を忘れている。

    現代資本主義社会では、金儲けをインセンティブにして技術が開発されており、本来の目的を知らない金の亡者に大金が集まる様な仕組みになっている。 この偽善的な弊害を除去した新しい社会システムの構築が、これからの最大の課題である。