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地球上には水素からウランまで90種の元素が存在するが、太陽の核融合反応で作られる元素はヘリウムだけである。 しかし、太陽には水素とヘリウムの他に沢山の元素が存在する。 これは、19世紀のはじめ、ドイツのレンズ職人フラウンホーファが、太陽光線のスペクトラムの中に沢山の黒い吸収線がある事を発見したのがきっかけとなって確認された。 |
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これらの黒い線は、それぞれ光の波長(左図の横軸)の特定の位置に発生する。 太陽光スペクトルには合計574本の線が観測される。 後世の研究により、特定の元素内を太陽光線が通過すると、その元素特有の波長の光が吸収され、スペクトル分布図に黒い吸収線となって現れる事が分かった。 この対応を利用すると、各恒星の発する光のスペクトルが示す吸収線の位置から、恒星の持つ元素の種類を特定できる。 |
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なぜ、太陽には水素、ヘリウム以外の多数の元素が存在するのか。 また、太陽の惑星である地球にも90種の元素が存在するのはなぜか。 この問題を解明する為、アメリカの天文学者が、宇宙の誕生間もない頃できた星を探して、10年掛けて数百万個の星を調べた結果、150億年前に出来た星、CS22892-052を見つけ出した。 この星のスペクトルを分析すると、太陽に比べて吸収線が極端に少なく、それらの殆どは水素とヘリウムによる吸収線であった。(左図の横軸は光の波長、縦軸は吸収線の強さを示す) こうして、古い星には数少ない元素しか存在しない事、すなわち、宇宙開闢当時はヘリウムより重い元素は存在しなかった事が解明された。 |
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現存する多くの元素生成の秘密を探る為、太陽系の宇宙空間に浮遊している塵の分析が精力的に行われた。 これらの塵は太陽系が形成された46億年より以前から太陽系空間の中を浮遊し、惑星などに吸収される事なく現在に至っている。 地球に落下した隕石の調査結果、その主成分は、シリコン(左図)、鉄、ニッケル、炭素などであることが判明し。 それでは、太陽系が誕生する以前に到来していたこれらの元素は、どこから来たのか。 塵の分析により、少なくとも30個の星の残骸が、太陽系の生成に寄与している事が判明した。 |
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我々が住む銀河系には、約1000個の「惑星状星雲」が存在する。 水素から出来た初期の星が、核融合反応で燃え尽きる時、中心部の温度が2億度にまで上昇し、星全体が膨張して「赤色巨星」となる。 赤色巨星の内部では、ヘリウムが核融合を起こし、炭素が出来る。 次にこの炭素とヘリウムが核融合して酸素原子を形成する。 爆発する星の質量が「赤色巨星」よりさらに大きいと、中心部の温度はさらに上昇し、7億度ではネオン、マグネシュウム、30億度ではシリコン、硫黄、アルゴン、カルシウム、50億度では鉄が核融合で生成される。 それらが大爆発のエネルギーでさらに融合を加速し、鉄より重い60種類の元素が出来る事が分かった。 そうして、新たに生まれた元素は秒速数千キロメートルで宇宙空間に広がっていった。 |
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しかし、星の爆発だけでは、地球上に大量に存在する金の生成を説明するに十分なエネルギー量ではない、何か他にもっと強烈なエネルギー発生メカニズムがあるはずだと考えられた。 巨大な星が大爆発を起こすと、その中心に白く光る小さな星が残される。 これは、中性子星と称され、小さじ一杯で数億トンの質量を持っている。 |
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小型でも膨大な質量を持つ中性子星は、隣同士お互いに引き合い、終には合体して、左図に示すような強烈な渦巻模様に周囲の塵やガスを巻き込んでいく。 この時、渦巻きの中心付近では大爆発以上のエネルギーを発生し、金などの重い元素が大量に生成されると考えられている。 |
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星がその一生を終え爆発すると、強力な衝撃波が猛烈な速さで宇宙空間を駆け抜けていく。 その時、すでに爆発して周辺に撒き散らされていた星雲ガスが急速な圧力を受けて、左図に示す様に凝縮して、大きな質量の塊を作る。 これらが新しい核となって、周囲の物質を引き寄せ、新しい星に成長して行く。 最新の宇宙X線天体望遠鏡は、星雲の中に新しく誕生しつつある新星の映像を明確に捉え始めている。 |
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左の写真は、カリーナ星雲の中に新しく誕生して、水素の核融合で光り始めた恒星をはっきりと捉えている。こうして、一度爆発して宇宙空間に撒き散らされた星々の破片は、他の星の爆発による圧力を受けて集合し、新しい星に生まれ変わっていく。 その度に、水素以外の重い元素を含んだ恒星や惑星を誕生させる。 |