野菜を捨てる農家(07/04/02)

  1. 全数出荷すると損をする

    最近の暖冬で、大根やキャベツ、白菜などの野菜が出来すぎ、市場を通すと値段が下がり過ぎて採算が合わないので、畑に植わったまま耕作機で肥料にしているとテレビで報道している。 処分したものについては政府から補助金が出るので農家は安心して破棄しているらしい。

    誰が考えてもこんな馬鹿な話は無い。 なぜこんな事が現実に起きるのか?

    農家や農協の言い分は、生産された野菜を或る限界量以上市場に出すと、市場価格の急激な下落により返って収入が減ると言う事である。 すなわち、経済学で言う「価格弾力性」<1で、供給量に対し、市場価格が「非弾力性」を持つのである。

    或る限界生産量の所で、生産農家の収入は最大となり、その限度を越えると減少に転ずる。 生産した野菜の全数を市場に出し、農家の収入を上述の最大値に保つ様に人為的に市場価格を調整すれば、野菜の価格はより安くなり、消費者は同じお金でより多くの野菜を買う事が出来るはずである。 完全自由競争で市場価格を決定しないで、大量出荷による価格下落をある程度規制すれば、生産者も消費者も喜ぶ結果が得られるのに、それをしないで折角出来た野菜をブルトーザーで踏み潰している。

    問題は自由市場での価格決定メカニズムに内在しているのである。

  2. 資源有効活用への道

    生鮮野菜など日持ちの悪いものは長期間保存できないので、どうしても市場価格が非弾力的に決定される傾向が強い。

    そこで、考えられる対策を列挙すると、

    1. 市場価格の非弾力性を人為的に規制する処置をとる。 すなわち、或る限界価格を下回ると、過剰出荷量に応じて人為的な価格決定を行う。 すなわち、全数出荷しても損をしない様に、価格の低下を人為的に抑制し調整する。
    2. 消費者の需要は或る出荷レベルで飽和するので、過渡的生じる余剰分を長期保存できる方法、例えば、漬物にする、乾燥野菜、粉末野菜に加工するなどの手段を講じる。

    生鮮野菜は在庫調整の効かない消費財である。 また、気候の影響を受けやすく、予想以上に生産される事が往々に起こる。 その時、折角出来たものを捨ててしまうのは、どう考えても知恵の無いやり方である。 しかし、余剰分を有効利用するには今までの様な方法だけでは不十分であり、更なる発想の転換が必要である。