地球大進化(070112

  これは、NHKテレビが以前に放送した「地球大進化」を要約したものです。
  1. 全海洋蒸発事件

    1. 地球誕生・生命誕生

      今から46億年前、原始太陽を取り巻く塵埃のリングが相互間の重力によって部分集合し、現在の水星から火星までの宇宙空間に、太陽を中心に回転する20個のミニ惑星が出来た。 

      その中の1つであった原始地球は現在の地球の110位の大きさであった。 原始地球は濃厚な大気に覆われ、地表はすべて海であった。 厚い大気は、太陽からの光を遮り、赤い光だけを通したので、その頃の地球は赤色をした海に覆われた索漠としたものであった。しかし、その海の中で生命が誕生したと考えられている。

      これらのミニ惑星が1000万年掛けて衝突合体し、現在の水星、金星、地球、火星になったと考えられている。

      水星は1−2個、金星は8個、地球は10個、火星は0個と言った様に、各惑星によってミニ惑星の合体の個数が異なり、火星はミニ惑星のまま取り残された。

      偶然にも一番多く合体した地球はこれら地殻形惑星の中で最大の大きさとなり、表面を取り囲んだ水やガス成分をその重力によって引き付け、外界に逃がさなかった。 これが生命誕生の大きな要因となった。 ちなみに、ミニ惑星のまま取り残された火星では、生命を育む水は殆ど宇宙空間に飛散し、生命誕生に至らなかった。

    2. 40億年前 海が消えた

      地球に最後に合体したミニ惑星は直径500Kmもあり、その衝突は凄まじく、多くの破片を地球周辺に撒き散らした。 それは土星のリングの様に地球を取巻いていたが、次第に自己集結して一つのミニ惑星に成長し、地球の周りを周回する「月」になった。

      最後のミニ惑星の衝突を現在の地球でシミュレートして見る。

      時速72,000Kmで直径500Kmの天体が衝突すると、形成されるクレータの直径は5000Kmとなり、そこから厚さ10Kmの「地殻津波」が一瞬の内に地表全体に伝播し、海は瞬時に蒸発し、地表は融解して4,0006,000度の高温の火の玉と化した。
       

      この衝突で発生した「岩石蒸気」の量は1000億メガトンに達し、約1年間地球を覆っていた。こうして、海に生息する原始生命は完全に絶滅した。


        
    3. 生命の冒険
      アメリカのアリゾナ州で、2.5億年前、岩塩内のわずかな水滴に閉じ込められていた細菌類が発見された。驚きた事に、それらを水に返すと、4ヵ月後休眠状態から生き返って増殖を始めた。 何と生命力の強靭な事か! しかし、最後のミニ惑星の衝突では海水に含まれた塩も蒸発し、海中の生命は絶滅したと考えられていた。
      ところが最近の研究により、地表の高温は1万年経っても地下1000メートルまでは達せず、(左図の青い部分は低温)その辺りに生息していた生命体があれば、彼らは絶滅を免れた。
      実際に、南アフリカの地下数千メートルの金鉱に生息する生物体が発見されている。 これらの事から今では、全海洋蒸発事件にも耐えて、原始生命体は生き続けたと考えられている。

  2. 全球凍結

    1. 地球が凍りついた日

      最後のミニ惑星衝突後、火の玉となった地球は、その後も隕石の落下を受けるが、その数は減少して行き、地表の温度も次第に下がって来た。 蒸発していた水蒸気が雨となって降り続き、地表に海を再現した。

      水中ではメタン菌が増殖し、盛んにメタンガスを噴出し、地表はメタンガスの温室効果で暖められていた。 陸地もあったが、そこには生命体は生存していなかった。

      その内、浅い海に、葉緑体を持った「シオノバクテリア」が発生し、光合成で盛んに酸素を大気中に放出した。 その為、大気中のメタンガスが酸素と反応して減少し、温室効果が無くなって、地表の温度が下がり始め、北極と南極から凍り始めて、数万年の内に地球全体が氷結して行った。 赤道近くにも氷河が存在した事が確認されている。 

      全球凍結は、22億年前と8億年、6億年前に数百万年から数千万年にわたり発生した事が、立証されている。

    2. 全球凍結と生命

      マイナス50度の環境で、植物は枯渇し、それを食料にする動物も殆ど絶滅した。
      地球は暑さ1000メートルの厚い氷で完全に覆い尽くされた。 
      ただ、地球内部のマントルによる火山活動で、地表のある部分では厚い氷が融け、生物の完全絶滅だけは避けることが出来た。

    3. 大型生物誕生

      全球凍結の後には、大気中の酸素が急激に増加している。

      22億年前の全球凍結では1%に増加、6億年前には20%に急増した。 その理由は次の通りである。 全球凍結で地球が厚い氷に覆われている期間にも、火山活動は活発で、大量の二酸化炭素が大気中に放出された。 しかし、海が氷に覆われていた為海中に溶ける事が出来ず、二酸化炭素は現在の3002000倍に増加し、強烈な温室効果をもたらし、氷は急激に融けて行った。 温室効果で気温は50度に上昇し、海水の温度も45度に上昇した。 その為、風速300/secのスーパーハリケーンが頻発し、海水を撹乱した。 こうして、海底に沈殿していたミネラルなどの栄養塩が海面に引き上げられ、濃度の高い二酸化炭素とともに、「シアノバクテリア」大増殖の環境を提供した。 その為、全球凍結の後では大気中の酸素濃度は急激に増加した。

      酸素の増大は、生物にも大きな影響を与えた。 まず、酸素を呼吸して効率良く代謝エネルギーを発生させる真核単細胞生物が誕生し、続いて真核多細胞生物が出現し、生物の大型化が加速された。 当時の化石から復元された脊椎を持つ大型動物の一例を左図に示す。


  3. 大海からの離脱

    1. 母なる海の異変

      4.5億年前、3つの大陸に挟まれた浅海にはサンゴ礁や魚が繁栄していた。 しかし、地球内マントルの移動により、次第に海が狭まり、数千万年掛けて大陸同士が衝突し、隆起して8000m級のカレドニア山脈が出現した。 山脈は上昇気流を生み雨をもたらす。 こうして、大きな川や沼地が形成されて行った。

    2. 恵みの木との出会い

      4億年前、海には体の前半分が硬い板状の骨で覆われた板皮類と言う体長6メートルの獰猛な大型魚が魚全体の80%を占め、我々の祖先に当たるユーステノプトロンを餌食にしていた。 環境の変化によって川や沼地が出来ると、弱者は海から新しく出来た沼地などに進出して行った。 その頃、陸地にはコケやシダ類しか無かったが、3.7億年前、地球上で初めてアーキオプテクスと言う樹木が出現し、次第に水辺は森林で覆われるようになった。
      この木は枝ごと葉を落とす習性があり、それが水辺に進出した魚達の食料となり新しい淡水生態系を形成した。

      この新天地で、魚の前ヒレや尾ヒレは沼地を徘徊できる手や足に進化していった。3.6億年前の生物「アカンソステガ」の化石には、手や足があり、指も生えていた。 まだ、陸上を歩いて体重を支えるには不十分であったが、植物の小枝などが堆積する水辺を移動するには十分であった。
    3. 肺を持つ物語

      現在のアマゾン川には多種多様な淡水魚がいる。 しかし、乾季になると水位は大幅に下がり、水不足で酸欠状態になり、大量の魚が死に瀕する。 

      3.6億年前にも似た様な状態の水不足が頻発した。 この過酷な状態を克服する為、食道の一部が変化して新しい呼吸器官「肺」に進化して行った。 肺魚は水中の酸素を呼吸するエラ呼吸ではなく、空気中の酸素を直接呼吸する。 こうして、水中に住む魚から陸上に進出する両生類への準備がなされて行った。

      現在の魚にある「浮袋」は、獰猛な板皮類が絶滅した後、再び海に帰った肺魚類の肺が退化したものだと考えられている。


  4. 大量絶滅

    1. 地球が95%死んだ時

      陸上に進出した両生類は、その後1億年掛けて、爬虫類へと進化した。 その中には、将来、哺乳類へと進化した「哺乳類形爬虫類」や、恐竜へと進化した「双弓類」が含まれ、前者が繁栄していた。 

      しかし、2.5億年前、地球上の生物の95%を絶滅させる史上最大の火山帯噴火が発生した。  シベリアの大地に、地球内部から「スーパープルーム」と言う直径1000メートルの大規模なマグマの塊が噴出し、40兆トンの二酸化炭素を大気に放出した。 これが引き金となり、暖められた海底1000メートル以下に沈殿していた「メタン・ハイドレート」が分解してメタンガスを大量に放出した。
      メタンの温暖化効果は二酸化炭素ガスの20倍もあり、温暖化とメタン放出の悪循環で、気温は極地で20-30度急上昇した。 また、メタンと空気中の酸素が反応し、大気中の酸素濃度は30%から10%に激減した。


    2. 恐竜の支配 そして哺乳類の誕生

      こうして、約1億年間の低酸素時代が到来した。
      この時、特殊な肺呼吸器官を持った恐竜はその全盛期を迎える。 

      哺乳形爬虫類の肺呼吸に比べ、恐竜の祖先は、左図に示す様な呼吸器官を発達させた。 我々の肺では吸気と排気が同じ気管で行われるが、恐竜の呼吸器には「気嚢」と言われる別の器官があり、吸気と排気が同時に可能であった。 これが低酸素時代に適合し、1.5億年にわたる恐竜の全盛時代を実現した。

      哺乳形爬虫類から進化した哺乳類は、普通の肺しか持たなかったが、卵よりも効率よく酸素と栄養を胎児に供給できる胎生で、子供を生む様に進化し、低酸素期を乗り切った。

    3. 隕石による恐竜の絶滅

      低酸素時代を乗り切って繁栄した恐竜の時代は、1.5億年も続いた。
      しかし、その終焉は突然始まった。 6500万年前、直径10Kmの巨大隕石が地球に落下し、「地殻津波」の襲来によって大型恐竜達は全滅した。 小型のねずみ位に進化し、恐竜に怯えながら日陰者の暮らしを強いられていた哺乳類は、この大異変の中を何とか生き残り、恐竜に代わって、新しい哺乳類の時代を迎えた。

  5. 大陸大分裂

    1. 恐竜絶滅後の世界  

      恐竜が絶滅し、いよいよ哺乳類の時代が来るかに見えたが、巨大な頭を持ち身長2メートルの巨鳥「ディアトリマ」の出現により、相変わらず日陰者の生活を強いられた。 その頃、超大陸「パンゲア」は分裂し、アフリカ、ヨーロッパ、アジア、アメリカ大陸に分離して行った。 これらの大陸の内アジアを除く大陸では巨鳥「ディアトリマ」が食物連鎖の頂点に君臨したが、孤立したアジア大陸では、哺乳類の一種が肉食哺乳類「ハイエノドント」に進化して行った。

      恐竜絶滅後1000年が経過した頃、肉食哺乳類「ハイエノドント」はアジアから他の大陸に進出し、集団で巨鳥に立ち向かい、彼らを絶滅に追い込んで、ついに哺乳類の天下が到来した。

    2. 樹冠という楽園    

      5500万年前、地球内部のマグマの上昇により、地中の「メタンハイドレート」が分解し大量のメタンガスを放出して、地表の温度を500万年にわたり10-20度上昇させる事態が発生した。 これにより、針葉樹林の中に広葉樹林が出現し、温度上昇に伴い次第にその生存範囲を広げると同時に巨木化して行った。
      その頃、哺乳類の中から、広葉樹林の葉を食料として生活する霊長類
      が進化し出現していたが、広葉樹林の拡張は、彼等に樹冠の楽園を提供してくれた。

      広葉樹林の中で大いに繁殖した霊長類は、枝から枝に移動する生活の中で目の機能を大きく進化させた。 今まで左右にあった目が顔の正面に配置され、両目の視野角が交錯することで、物を立体的に見れる様になった。 その為、広葉樹林の樹冠を自由に飛び回る運動機能が飛躍的に向上した。

    3. 大陸大分裂と楽園喪失

      その後も大陸移動は続き、それまでアメリカ大陸などと陸続きだった南極大陸が分離し、孤立した大陸になった。
      その為、南極の周囲を流れていた暖流が途絶え、南極は新しい海流で取巻かれ、暖流域から切り離されて冷却し、寒流に囲まれた氷の大陸に変貌した。 地球の温度は急激に下がり始め、それにつれて広大な広葉樹林の森がその分布を狭めて行った。
      それまで、林に住む霊長類達は木の実や果実を主な食料にしていたが、樹林の減少で食糧難に陥った。 そこで、彼らは広葉樹の若葉を食べる様に適応せざるを得なかった。

      広葉樹林が減少する過程でも、霊長類の視覚機能に進化が見られた。 ひとつは、視力の色感覚が青と緑の2色形色覚から、赤色を加えた3色形色覚に進化した事である。 このお陰で、赤色がかった広葉樹の若芽の部分を選んで食べれる様になった。 この部分は毒素が少なく栄養価も高かった。
      もう一つは、眼球内に分散していた視覚細胞が網膜上に集中的に配列して実像の焦点をきれいに結ぶようになり、ぼやけていた像がはっきりと見える様になった事である。


    4. 社会への第1歩
         
      真猿類に属するゴリラやチンパンジーでは、顔の筋肉がよく発達し、豊かな表情を表現できる。 視力の進化で相手の表情が良く見える様になった霊長類は、豊かな表情を見せることによって相手とのコミュニケーション手段を発達させた。 ちなみに、チンパンジーは10種類位の表情で相手と意思の疎通をする。 顔の表情や発声によって集団内の協力関係、上下関係を構築して行く事は、一つの社会システムを形成する第一歩となった。 こうして秩序だった集団として、共同で狩をしたり子育てをする社会性が育まれて行った。

  6. そして現在へ

    1. 祖先を襲った乾燥化
      5000万年前、アジア大陸とインド大陸が衝突を起こし、巨大なヒマラヤ山脈を形成した。 この山脈に遮られて雨を降らした後の気団が乾燥風となってアフリカに吹きつけ、熱帯雨林は降雨の減少によって草原と化した。  
      今から700万年前、チンパンジーから分化した人類の祖先は、400万年前には草原を二足歩行しながら移動した。
      200万年前、彼らは2つの種族に分離した。
      固い木の球根を主食とし、強靭な顎を持った丸顔の「パラントロプス」と、肉食獣の食べ残しを食料にした細身の「ホモ・エルガステル」に分離したが、100万年後に前者は滅亡し、後者のみが生き残った。 彼らは肉食であった。

        
    2.  肉食と脳の巨大化
      絶滅を免れた「ホモ・エルガステル」の住むアフリカでは、地下のマントル上昇によって6000Kmにわたる「大地溝帯」が形成され、サバンナ化が急速に進行した。 その間、草食から肉食への道を選んだ彼らは、なぜか、脳を肥大化させていった。 残された化石から類推すると、絶滅した「パラントロプス」の脳は500ミリリットル、肉食の「ホモ・エルガステル」は900ミリリットルの脳を持っていた。
      次に現れた「ホモ・エレクトス」は1000ミリリットルの脳を持ち、アジヤに進出して、ジャワ原人となり、中国に移動して北京原人になった。

    3.  言葉という力
      今から30万年前の氷河期、北ヨーロッパに住んだ「ネアンデルタール人は1400ミリリットルの脳を持ち、現代人の「ホモ・サピエンス」と同等の能力を持っていたと考えられる。
      彼等の人口は最盛期50万人でホモ・サピエンスと共存していた。 しかし、3万年前に絶滅した。
      同じ容量の脳を持ちながら、なぜ厳しい氷河期を生き長らえられなかったか。 そこには、言葉の優劣が原因している。

      なお、700万年の間には、他にも別種の人類が出現しており、その数は20種族に達したが、我々「ホモ・サピエンス」以外の種族は全て絶滅した。

      最近の化石の研究から判明した事は、ネアンデルタール人は、ホモサピエンスに比べて、声帯(喉仏)がより上部にあり、言葉を発する喉の共振部が短くて、上手に母音の発音が出来なかったと言う事である。 チンパンジーの声帯もネアンデルタール人と同じく上部にある。
      喉の長さを決める遺伝子が特定されており、その遺伝子が変化した時期は20万年前と推定される。 
      言葉は進化の原動力になる。 集団で効率の良い狩をし、言葉を交わしながら失敗の反省をし、子供達もそれを聞いて狩の仕方を学習する事が出来る。 厳しい氷河期に寒冷地でマンモスを捕獲するには、お互いの情報交換が必須である。 言葉によって世代間の知識の継承が可能になる。 言葉は知的進化を加速し、人類の文化を進化させる。 最近、動物の骨に刻みを入れた「骨カレンダー」も見付かっている。
      人類はさらに、言葉を記録する「文字」を発明し、知識の累積は加速度的に増大している。


      こうして人類は、今や60億の人口を持って地球を占拠し、文明を発達させたが、地球温暖化、地下資源の枯渇、核軍備の拡散など、生存を脅かす試練に立ち向かっている。
      「驕れるものは久しからず」の諺どおり、人類もいつかは絶滅する運命にあるのか。
      それは、創造の神のみぞ知っている。