エレガントな宇宙(20081121日)

  1. 素粒子の種類

    物質の原子を構成する素粒子には次の様な3種類の族がある。

    1族 電子、電子型ニュートリノ、アップ・クオーク、ダウンクオーク

    2族 ミューオン、ミュー型ニュートリノ、チャーム・クオーク、ストレンジ・クオーク

    3族 タウ粒子、タウ型ニュートリノ、トップ・クオーク、ボトム・クオーク

    それぞれの族には、クオークが2つ、電子とその仲間が1つ、ニュートリノが1つ入っている。 

  2. 自然界には4種類の力がある

    我々になじみ深いのは、重力と電磁力である。 この他に、「強い力」と「弱い力」がある。 原子核の中で陽子や中性子を結合するのが「強い力」であり、「弱い力」は放射性物質の崩壊を引き起こす力である。 これら2つの力は原子以下の距離スケールで働き、このスケールを超えると急速に衰える。

    これら4つの力に共通する特徴が2つある。 微視的なレベルでは、これらの力にそれぞれ最小の塊と考えられる粒子がある。

      力

      力の粒子

      質量

    強い力

    グルーオン

       0

    電磁力

    光子

       0

    弱い力

    弱いゲージ・ボソン

     86又は97

    重力

    グラビトン

       0

       注)質量は電子の質量に対する比

    2の特徴は、重力は質量で決まり、電磁力は電荷で決まる。 粒子が「強い力」と「弱い力」にどう影響されるかは、粒子が帯びている「強い力荷」と「弱い力荷」で決まる。

  3. 理論間の矛盾

    現代物理学の根底を成すものは、アインシュタインの一般相対性理論とシュレーディンガーらの量子力学である。 しかし、これら2つの理論はお互いに矛盾しており、両立しない。 一般相対性理論によれば、宇宙空間は緩やかに湾曲する幾何学的なはずであるが、量子力学に従えば、宇宙は微視的に無秩序な混乱した振舞いを示す。

    この矛盾を解決したのが、「超ひも理論」である。

  4. 超ひも理論の本質

    1) 粒子の性質はひもの振動の仕方で決まる。

    この理論によれば、素粒子は共振状態にある微少なひもの輪である。 素粒子の質量はその内部にあるひものの振動パターンのエネルギーで決まる。 重い粒子ほど大きなエネルギーで振動し、軽い粒子ほど小さなエネルギーで振動している。

    自然界に存在する4つの力を表現する粒子(これらをメッセンジャー粒子と言う)についても素粒子と同様な事が言える。 メッセンジャー粒子の振動は素粒子の振動とは異なるひもの共振パターンを持つ。

    2) ひもはとてもきつく張られている。

    ひもは莫大な張力のため微少なサイズに縮まっている。 

    10E-33m(これをプランクの長さと言う)のオーダーである。 莫大な張力で振動している為、そのエネルギーは極めて大きい。 しかしこれらの振動の間には相互に打ち消す作用があり、実際に現われる質量やエネルギーは素粒子の質量程度に減少する。

    3) 空間次元9つ、時間次元1つを持つ。

    ひもの共振振動パターンから4つの力を発生させるのは、3次元ではなく時間の次元も含めて10の次元の存在が予測される。

  5. 結論に代えて

    以上述べた事は、アメリカの理論物理学者ブライアン・グリーンが1999年に著した「エレガントな宇宙」(草思社発行)の簡単な要約であるが、著者が言う様に、この理論はまだ完成していない。 世界中の理論物理学者が、存在する4つの力と電子、クオークなど多種類の粒子の存在を証明する「統一理論」の完成に弛まぬ努力をしている。

    しかし、そのゴールはまだ見えて来ない。

    自然界はその多様性に拘らず非常に単純な法則の上に成り立っていると言うのが全ての科学者の信念であり、彼らは「統一理論」の存在を信じて日夜思考に耽っている。

(追伸)

最近ノーベル賞を貰った南部陽一郎氏が提唱した「粒子の対象性の破れ」とは何かを知る為に、この本を読んだが、結局は良く分からなかった。粒子と反粒子が同数存在すると合体してエネルギーに変換され粒子が消滅する。 そこに「対象性の破れ」で粒子数の不均衡が生じ、質量を持つ物質が消滅しないで残存して現宇宙を構成していると新聞などで説明されているが、「超ひも理論」でもその事の説明は付くらしい。