ヨーロッパの街並み(2008年10月1日)

 

  1. 世界ふれあい街歩き

    NHKの番組に、「世界ふれあい街歩き」と言う面白い番組があろ。 いわゆる観光案内ではなく気の向くまま、足の向くままに、あちこち寄り道しながらカメラが街中を撮影して廻る。 アフレコの音声を付けるタレントが如何にもカメラと一緒に歩いている様に、日本語で外国人に語りかける。実際には現地語で会話しているはずの、カメラに同行している人の姿は写らず、その人が喋る現地語もカットされており、あたかもタレントが日本語で話しかけ、街の人達が現地語で会話をしている様に、画像と音声が上手く編集されている。この番組を見ていると、視聴者自身がカメラマンに同行して街の人達と会話しながら、気ままに街を散歩している気分になれる所がおもしろい。

    この番組のお陰で、ヨーロッパの街を沢山「擬似散歩」させて貰った結果、これらの街々には、日本の街と比べて共通したユニークな相違点が多々ある事に気付いた。 

  2. 数百年前の石の建物をリフォームして住んでいる。

    旧市街には外敵を防ぐ為に強固な防護壁でとりまかれていたものが多いが、今も殆どの外壁が残っている。 昔の住居に使われていた石もそのままの形で現在の住居の一部になっている。 日本の住居は長くても100年、一般には50年もすると完全に壊して建て替えられる。 木造家屋は地震や火事に弱い。 法隆寺や正倉院など数百年間前の姿を残しているものもあるが、一般家屋で数百年の歳月を経たものはない。

    日本人は一生掛けて築いた財産の大半を家の建築に使うが、西欧の国では先祖の残した住居を一部保全しながら大事に使っているので、住居費は大きく節減できる。 道路や水道などのインフラも古代ローマ時代のものが未だ活用されている。革製のジャケットを何代にも亘って着ている人も多いと聞く。 この様に、古代・中世の時代から積み上げた過去のストックが現代に生かされ、少ない経費で豊かな生活を実現している。

    こつこつと石を積み上げ、数百年掛けて完成した教会があちこちに存在する。 気の遠くなる様な時間を掛けて構築し、数千年間の子々孫々までそれを保存して行く。時間の経過に対する感性が、我々日本人と桁外れに異なる事を痛感する。


  3. 市内電車が交通のメインである。

    日本が車社会になる前は大抵の街に市内電車が走っていた。 車が増えるにつれ、邪魔になるので廃止されたケースが多い。 欧州でもその様な時代は有ったかも知れないが、自動車の排気ガスによる汚染に早く気が付いて、市内電車を継続ないしは復活した街が多い。市内を通る自動車をあまり見かけない。 クリーンな市内電車を積極的に利用する生活習慣が定着している。 

  4. 車より自転車が多く利用されている。

    街が車で渋滞していない。 自転車を利用する人の方が多く見かけられる。車社会からクリーンな自転車の時代に移行している様だ。 

    数年前中国に行った時、街には夥しい数の自転車が走っていた。 現在は中国も車社会に移行し、自転車の利用者は減ってしまった。 しかし、考えてみると、車社会より自転車社会の方が一歩未来を先取りしていたわけで、それに気付かずに自家用車を買いたがる中国人に、「ヨーロッパを見習いなさい。 無駄な投資をしないで自転車に乗り続けるほうが、未来を先取りする賢明な選択ですよ」と呼び掛けてあげたい気持ちにさせられる。 

  5. 電信柱が無い。

    日本でも中心街に行けば、架空ケーブルを地下に埋設して街の景観がすっきりしている所はあるが、その範囲が狭い。 ヨーロッパの街では、小都市や住宅地に行っても電信柱が無く街の軒並みがすっきりしている所が多いと感じる。 

    電力腺や通信ケーブルの地下化は究極の形体である。 経済化を重視した一次凌ぎの手段である架空線方式は結局の所二度手間になり、インフラサービスの近代化を急ぐあまりの二重投資となる。 時間は掛かっても構わない、拙速を避け最初から本手を打つべきとする堅実な考え方で、あせらず一歩一歩構築して行く彼らのやり方を日本人も見習うべきである。 

  6. 人が少ない。 あくせくと仕事をしていない。

    何処の街を見ても歩行者が少ない。 観光客の方が多いようだ。電車も空いている。
    住宅街では、自宅の前の歩道でチェスをしたり、友達とゆったりとティータイムを楽しんでいる老人を見かける。 そう言えば車の通る道路には必ず歩道があり、車の通らない昔ながらの石畳の路地も沢山ある。 日本の大都市の住宅街には車道の端に白線を引いた狭い歩道しかなく、家の前でお茶を飲む事など考えられない。
    どうして、この人達はあくせく働かなくても豊かな生活が出来るのだろうか。
    年金で生活している人、葡萄園を経営していて農閑期を楽しんでいる人などが多いのかも知れない。 
    広い中庭には緑の木々や四季折々の花々が咲き誇り、窓やベランダに花を飾る習慣が定着している。 自然と調和してゆったりと人生の幸福を味わっている。

    人口密度が少なく、土地が安い。 祖先伝来の資産を活用して生活費もそんなに掛からない。 近所の人は昔から一緒に住んできているので気心が知れている。 ストレスが無いから人懐っこい。 

    日本の大都会は、地方から出稼ぎに来た他人同士の集まりで、連帯感が無い。 人が多過ぎて常に競争に晒され、密集した狭い家でゆとりの無い生活を強いられている。

    これに対し、ヨーロッパの都市ではかっての日本の農村で見られた濃密な人間関係が長い歴史の中で培われている。

    早く、ヨーロッパのように地球環境にやさしい生活様式を取り入れながら、ゆとりのある楽しい生き方をして行きたいと思うが、その為には、人口過多で近代化・都市化の遅れた日本ではまだ数十年の歳月が掛かるだろう。