ファック星人 (03531

  1. 宇宙で最も複雑怪奇な交尾の儀式

    最近、表題の映画を見てすごく気に入った。 私が言う「動物的人生論」とほぼ同じ立場に立っているので、意を強くした。

    この映画は、地球外高等生物が沢山いると言う前提で、他の宇宙人が人類の生殖行動を観察したら彼らの目にどう映るかを、ユーモアと皮肉たっぷりにシミュレーションしている。

    それによると、我々人類は非常にファックの好きな動物で、宇宙では「ファック星人」と呼ばれている。 人類は恋愛を美化しているが、宇宙人のクールな目でその行動パターンを観察すると、「複雑怪奇な交尾の儀式」としか映らないらしい。  宇宙的視点に立って人間を観察すれば、人間の本来の姿が見えてくる事を、この映画は教えてくれる。

    『見どころ』 面白いのは、白いコスチュームを着て精子の格好をした若い男達がトラックを走り(膣内射精)、途中、障害物(コンドーム)にぶつかって倒れたり、機関銃を持った兵士に乱射(ペッサリーに塗られた殺精子グリスで殺傷)されて死んだりするシーンである。 肝心の受精の瞬間は、背面「走り高跳び」した男達がマットに標された的に的中する事で見事に描写されている。

  2. 最近のキスの仕方

    最近の日本人は平気で人前でキスする様になったが、キスの先進国はやはり欧米であろう。

    二ヵ月位前、BSデジタルチューナー(HDD,DVD付きでタイマー予約70時間可能)を購入したのを期に、「スターチャンネル」と言う有料映画放送チャンネルに加入した。 それ以来、毎日23本の洋画を録画して見ている。

    学生時代には未だ街頭TVしか無く、娯楽と言えば映画しかなかったので、多い時は一日に23本(一本50円)、映画館をはしごして歩いた。 だから、昔の映画は殆ど観た。その頃は今の様な露骨な性描写は無く、キスの仕方も淡白なものだった。

    最近の映画を見て特に感じるのは、性描写の多い事(そう云う映画を選んでいる影響もある)、キスの仕方が昔と変わった事である。

    キスには、挨拶代わりのキス、プラトニックなキス、エロチックなキスなど色々有るが、昔の映画では、エロチックなキスでもそれ程刺激的ではなかった。 しかし、今の映画のキスシーンは「交尾」を前提としたキスのオンパレードである。 日本映画では未だあそこまでは進んでいないだろう。アメリカでも街頭であんなキスをしている人は少ないと思うが、寝室では皆ああやっているのだろうか。

    あれは、最近の映画が性交渉の描写を省略する為に編み出した一つの演出ではないかと私は思う。 それが映画全体に流行し始めたのではなかろうか。

    私はあんなキスはした事がないが、あのやり方はあまりに技巧的でそれ程の快感は無い様に思う。 このキスの仕方と云い、最近の映画を見ていると、やはり地球人は「ファック星人」と言うにふさわしい動物である事が頷ける。

  3. 性教育

    子供に性について教える性教育はもっと充実させなければならない。立派な「ファック星人」を育てるには、今の性教育では不十分である。
    「セックス」だけに限定しないで、生命誕生以来30数億年の歴史、進化の過程を教え、生命が如何に大切なものかを自覚させる必要がある。「生物」の授業で進化論を高学年に移し「ゆとり」を生み出したいと文部省は言っているが、進化論こそ真っ先に教えるテーマである。私は進化論を「性教育」と関連付けて教え、生命の大切さを子供たちに自覚させれば、「いじめ」とか「校内暴力」なども自然に抑えられると思っている。

    人間は自分達が動物とは一線を画した存在であると誤解している。これは自然に対する傲慢であり、奢り以外の何ものでもない。 やっと環境破壊に気付いたが、まだその傲慢さは矯正されていない。昔は我々人間も「細菌」であった、それを自然の力でここまで育てて貰った事を忘れている。 恩を仇で返そうとしている。

    性は人間にとって最も重要な要素であり、「避妊」の仕方を教えるのが性教育ではない。 生命の起源から説き起こし、「生きる」事が如何に大切な事かをじっくりと時間を掛けて教えるべきである。

  4. 宇宙人としての生き方

    最近、岩波新書から「宇宙人としての生き方−アストロバイオロジーへの招待−」(松井孝典著、740円)が出版された。 著者は東大大学院の教授で「惑星科学」の専門家である。 
    序文で著者が言っていることは、
    「宇宙的視点とは、宇宙150億年の時空スケールで考える事です。 自然とは、ビッグバン以来の歴史を記録した古文書です。 自然を追求するとは、この古文書を解読することに相当します。 この宇宙に我々のような高等技術文明を築く知的生命体がいるとすれば、彼らはすべて同じ様な事をするでしょうから、彼らの「知の体系」も同じ様なものになるはずです。
    最近、NASAが新しい試みを始めました。 それがアストロバイオロジーです。 我々は何処から来て何処へ行くのか、我々は宇宙で孤独な存在か、と言うテーマがこの学問のゴールです。 日本語に訳すと「宇宙生物学」となりますが、これは従来から使い古されたような要素還元的に細分化されたひとつの学問分野ではなく、文理融合、学の総合化を指向しています。」

    松井氏も指摘している様に、「我々は何処から来て何処へ行くのか?」を長大な時間スケールで考える事が、「文明のパラドックス」に直面し存続の危機を迎えている人類にとっての最大の課題なのです。 
    性教育ひとつをとっても、「ファック星人」の対応の仕方は宇宙人としてあまりにも「場当たり的」過ぎはしないでしょうか。