過剰競争時代(02/8/4)

競争する事は善である。  これが米国を中心にした資本主義社会の共通原理であり、グローバリゼイションの波として全世界に拡がりつつある。  お互いに競い合う事によって品質は向上し価格は下がる。 我々消費者にとってこれ程良い事はない。 しかし、生産者の側に立った場合、弱者にとってはこれ程過酷な事はない。 競争に負けて消滅した企業、商店などの何と多い事か。 

競争には幾らかのマイナス要因がある。

  1. 競争に勝ち残った企業はますます強大になり、独占の弊害に陥る。
  2. 過剰競争に発展し、自他共に疲弊する。
  3. 農業の様な一次産業は地理的なハンディキャップを持ち、公平な競争が出来ない。
  4. 過剰競争によってモデルチェンジ、バージョンアップが頻繁に行われ、設計変更や過剰宣伝に不要なコストが掛かり過ぎる。 また、製品の陳腐化による無駄が生じる。
  5. 新技術のアセスメントに十分な時間を掛けず、後になって環境汚染、公害の原因となる。農薬による食品汚染も問題である。
  6. 精神的にゆとりのある生活環境が壊され、人の心が殺伐となり人情が薄れる。
  7. 効率の追求に汲々とし、職人気質や伝統文化の破壊、手作りの良さが失われ、大量生産品が普及して味気ない世の中になる。
  8. 幾らか値段が高くても良質であるものが市場から駆逐され、程ほどの品質の安い物が市場を席捲する。

最近、「フェア・トレイド」と言う企業活動が注目され始めている。

良い物を適正な価格で購入し、生産者と消費者が協調してその体制を維持し、健康でゆとりのある生活をエンジョイして行こうと言うのがその趣旨である。

これは過剰競争時代の弊害に気付いた人達が新しい仕組みを模索し始めた事を意味する。

現代資本主義社会に対する新しい挑戦の芽となり、新しい時代の始まりとなる可能性を秘めている。 効率一点張りの味気ない社会に、心豊かな生活を取り戻そうと言う運動である。  競争社会によって確かに技術は急速に進歩し、物の値段は安くなり大量消費時代に入ったが、その為に犠牲にした環境や精神的な損失は計り知れないものがある。

今こそ一度立ち止まって、真にゆとりのある、豊かな生活とは何かを考え直してみる必要があるのでは有るまいか。