責任の取り方(07/04/19)

最近毎日の様に、会社幹部が頭を下げて謝罪するニュースが流される。

電力会社のデータ改ざん・隠蔽をはじめ、生命・損保各社の補償金未払い、脱税、官製談合、プロ野球契約前手付金と材料に事欠かない。 これらは氷山の一角で、ニュースに取り上げられない類似の犯罪はおそらくこれらの何十倍も見逃されている事だろう。 警察も新聞社もそんな事は分かっているが、全部暴露したら人手が幾ら有っても足らなくなるので、ただ見逃しているに過ぎない。 「他山の石にせよ」と、せめてもの親心を言外に匂わしているのだろう。 

頭を下げた人の中には、潔く責任を取ってその地位を辞退する人もいるが、減給処置などでうやむやにしてしまう人もいる。

トップの首を挿げ替えただけでは腐敗した組織は解消しない。 ほとぼりが冷めるとまた自然発生的に再生される。 人間は欲深い、楽をして稼ぎたい動物で、時間が経つとまた、次第に安きに流される。 何処の国の状況も大差ない。 

やはり、これらの犯罪を根絶やしにする事は出来ない。  少しでも放置しておくと、雨後の竹の子の様に地下茎を張り巡らせ、蔓延して行く。 地上だけきれいに清掃しても、地上に頭を出していない地下茎を、完全に除去する事は不可能である。 「浜の真砂は尽きるとも、世に盗人の種は尽きまじ」と歌った石川五右衛門の辞世の句は真実、人間の本性を言い当てている。 

自然界には必ず善と悪が共存する。 植物が自生するとそれに寄生する草食動物が現れ、さらに草食動物を餌食とする肉食動物が出現する。 前者にとって後者は悪であるが、自然は生きる為に手段を選ばない。 善と悪は常に表裏一体なのである。

インターネットが普及すると、ウイルスやスパイウエアが必ず発生する。 商取引が行われると必ず詐欺師が現れる。 善と悪は常に表裏一体である。 人間性悪説は勿論、生物性悪説が常に成り立つ。 限られた資源を巡って競争するので、必ず他者の生産物を横取りするものが出現する。 これは、自然の掟であり、諦めるしかない。

責任を取って辞任しても、自然の掟は厳として存続する。

人間社会にも自然の掟は存在する。 すなわち、悪は永遠に存続する。 どんな法律や罰則で縛っても、悪知恵を働かせて、それらを潜り抜ける者が必ず出現する。

「会社トップが頭を下げる行為は未来永劫無くなる事はない」。 これは永遠の真理であり、いたちごっこは永久に終わらないと諦観するしかない。 身に染み付いた人間の本性を変える事は不可能である。 唯一有効な手段は、定期的にきれいな水を流して、時間の経過とともに次第に堆積して来る汚れを一斉に洗い流す事である。 肝心な事は未来永劫この浄化作業を根気よく繰り返す事である。 人為的に作った汚染防止対策は一時的な効果はあるが、人間の悪知恵によって次第に骨抜けにされる。 鬼の首でも取ったつもりでいると、必ずしっぺ返しを食う。 人間性悪説に立って、事に当たるしか有効な手段はないことを肝に銘じるべきである