日本の家屋(2009228日)

  1. ウサギ小屋

    日本の家屋は、外人から見ると、余りに小さくて「ウサギ小屋」と揶揄された時代がある。 過度な大都市集中と土地政策の失敗から都市の地価が急上昇し、郊外の狭い土地に小さな家を建てて、遠距離通勤を強いられて来た。 日本の人口密度の高さも大きく影響している。 土地の高騰以前に都市に住んでいた人や都市近郊に農地を持っていた人たちだけが、その恩恵を受け、地方から都会に出て来た人達とは雲泥の格差が生じた。最近は家族一人一人が個室を持つ位の家も多くなったが、まだ農家の様な広い庭付きの屋敷など望むべきもない。 

  2. 仮の宿

    この頃NHKテレビの「ふれあい街歩き」と言う番組で世界遺産に指定された都市や歴史の残る世界の都市などを良く見る。 

    日本の都市と比較して感じる事は、これらの都市に建つ家屋が100年はおろか数百年の歴史を持ち、先祖代々大事に使われて来ている事への驚きである。 古代ローマ時代から石積みの技術が進んでいて、大抵の家が石を積んで作られ、数百年しても十分に居住できる広さと機能を持っている。 外敵を防ぐ要塞都市として頑丈に造られた経緯もある。

    これに対し日本の民家の寿命は長くて数十年以下のものが多い。 地震が多くて建て替えを強いられると言った地震多発国の宿命もあるだろうが、建て替え周期の短さは世界でトップクラスなのではなかろうか。 

    私が住む電々団地でも、昭和30年代後半に安普請で建てた家を、世代交代を期に新しく建て替える人が多く、1000軒以上ある団地の7割以上がすでに建て替えられている。

    多分今建て替えている家も、あと30年か40年するとまた建て替えられる運命にあるのだろう。 すなわち、日本人には数百年持つ家を建てると言う思考習慣が無い。

    昔から木と紙で簡単に家を作り、仮の宿とする事が常識になっている。 江戸に大火が多かったのは有名だが、木と紙で作った家では、火事も地震も防げない。 家屋は耐久設備ではないと言う諦観が昔から定着している。

  3. 住居費の浪費

    家を一軒建てるには土地を除いても約3000万円は掛る。 日本人は一生の内に大抵一度は家を建てるから、一生に稼いだ所得を平均1億円とすると、その30%を家屋の建設に使用している計算になる。 これに対し、西欧などでは住居費は修繕維持費位であるから、日本でも維持費が掛る事を考えると、住居建設費費の全所得に対する比率はほぼ0%となる。 日本人はあくせく働いてもその金を住居建設費に浪費している。

    家屋だけではなく、外国では家具や衣服なども代々引き継がれ使用されるケースが多い。

  4. 耐久家屋の建設

    私はこの様な風習はお金の浪費だと思う。 年代を重ねるにつれて資産の目減り分はどんどん累積して行く。これでは西欧人との所得格差は世代と共に開いて行き、資産を引き継いでその分裕福な暮らしをする事は出来ない。

    そこで、これから建てる家は少なくとも百年以上は使える様な設計に変更すべきである。地震や火事が多いので耐震耐火仕様の鉄筋コンクリートで家を建てるべきである。 また、近い将来普及が予想される太陽光発電設備を設置可能にする事も重要である。 電気自動車を格納できる設計、部屋の模様替えが出来る様に屋内のレイアウトを簡単に変更できる設計なども十分考慮する必要がある。

    とにかく、建設費が高いなら一代で完済せず、2代で分担するとか方法は幾らでもある。 次世代以降の住居費を安くし、子子孫孫、豊かな生活が出来る様にする知恵が求められている。

    () 鉄筋立てのマンションでも数十年すると建て替えが必要と聞くが、私はそれは設計の方法に耐久性に対する配慮が足らなかったからだと思う。 パリーの都市構造などを参考にして如何に長く住居をもたせるかを研究する必要がある。 江戸時代の木造建築家屋や蔵などが現代も使われているケースも少しは日本にもあるが、木造ではやはり限界があるだろう。

    (追記)2009年6月4日から、日本でも「長期優良住宅普及促進法」が施行され、耐震性や省エネルギー性、可変性など9項目の認定基準を満たした住宅は”200年住宅”として一般住宅より多い所得税や住宅ローン減税が受けられることになる。ミサワホームや旭化成ホームなどがこの種の住宅を売り出しており、長期化に要する初期費用は約10%アップすると言う。 ただし、長期修繕計画を実施する必要がある。
    日本にも長期耐久化住宅の時代が始まろうとしている。