住み良い社会(2007716日)

  1. 現代社会の閉塞感

    今の社会は何となく住み難い。新聞やテレビを見ても心を清々しくさせる様な記事は殆どない。 ニュースは政治家の失言、死亡事故、ゲリラの自爆、強盗殺人事件、環境汚染、官製談合、性的変質者などなど、社会の病根を情報として提供する事に終始している。 テレビには下品な粉飾コマーシャルが絶え間なく流れ、家では年寄りの愚痴ばかり聞かされ、隣近所とは殆ど没交渉である。

    今日は良い事があったと思える日は殆どない。 退屈で、体も何となくだるい。

    引退後それ程貧乏な生活をしているわけではないが、何時も金がない感覚が付きまとっている。

  2. どんな生活が心地良いのか

    昔田舎に住んでいた頃、野菜作りや田んぼの草取りなどやって楽しかった。

    戦後の貧しい時代で、食べる物も十分でなく、体も痩せていたが、元気に山の開墾などして汗を流していた。

    やはり人間は自然の中で生活する方が楽しいのだろうか。 毎日が楽しくないから、小人閑居して詐欺や泥棒が蔓延るのだろうか。 金が無い人が多いから犯罪が絶えないのか。 競争が激しいから不利になる情報を改竄したり、隠蔽したりするのだろうか。 車社会になって生活はスピードアップし、便利になったが、毎年1万人近くが交通事故で死に、数万の人が事故の後遺症に苦しめられている。 色々な家電製品を使って生活は楽になったはずなのに、そんなに楽しく感じない。  物の豊富さだけでは、人の心は満足されないのか。

    我々は一体どんな生活を理想的な生活と考えているのだろうか。

    自分のやりたい事がやり遂げられ、達成感を感じる。 毎日おいしいものを食べて、適度に運動し体には何処も悪い所は無い。道路は渋滞せず、車で近郊の四季の変化を楽しみに行ける。たまには郷里に帰って上手い魚を腹一杯食べ、兄弟や親戚の人と談笑する。

    それ程実行が難しい事ではないから、やり気さえあれば出来ない事ではない様に見える。 

     

  3. 人口過密地帯に住む

    自由に羽を伸ばしたいのに周りに人が多過ぎて色々邪魔が入り思う様に移動できない。

    郷里は遠いので高い交通費が掛かる。 何をやるにも余計な費用が掛かる。 

    やはり人が多過ぎる事から派生する都会生活の不便さがある事は確かだ。

    猫の額みたいな庭では綺麗な花も咲かない。 仕方がないから、植物園まで出掛けて花の写真を撮り、憂さ晴らししている。 しかし、今更田舎に帰って、花など栽培して老後を過ごす勇気もない。

    狭い日本に生まれ、窮屈な都会に住み付いた不運と諦めるしかない。

     

  4. 過当競争の世界

    皆が競い合ってより良い製品・サービスをより安く提供する。 このことは良い事だが競争が激しくなり過ぎると、皆が疲れて来る。 成果主義で労働者は気を抜く暇もない。

    安い人件費を求めて、国内企業は発展途上国に工場を移す。 リストラの嵐が巻き起こる。

    何の為に競争するのか。 皆がより幸せになる為にしている競争が、逆に皆を苦しめている。 どこかが狂っているのではないか。

    高所得を求めて工業化が進むと公害・環境破壊がその後を追う。 車の買える身分になりたいと思う人が多いが、車に乗る事がそんなに幸福だろうか。 「狭い日本、そんなに急いで何処へ行く」と言う交通標語ではないが、皆が車に乗って忙しく立ち回った結果はそれ程幸福でもない。 もっとゆとりのある生活、金が無くても心の豊かな生活を送れないものだろうか。

     

  5. 戦争のない世界

    毎日の新聞を見ていると、国際欄の片隅に、「イラクで30人死亡」などの記事が出ていない日はない。 なぜ、爆弾を体に巻きつけて、若者が自爆テロに走るのか。 なぜ、同じイスラム教徒間で憎しみ合っているのか。 イスラエルとアラブ社会は平和共存できないのか。 賢い人間が喧嘩しない道を模索する事など簡単なはずなのに、ボタンの掛け違いの様に、一度起きた仲違いはますます憎悪を増殖して行く。

    死の商人は紛争を煽り、政治家は彼らの手の上で踊らされる。 資本主義の醜い裏面が見え隠れする。 宗教には戦争を止める力は無いのか。 愛を説くキリスト教の崇高な教えも現代人には通用しないのか。 人口爆発した人類は、互いに殺し合う事でそれを抑圧しようとしているのか。 それが自然の摂理なのか。 考えれば考えるほど、分からなくなる。 やはり、資本主義の末路が近づいているのではないか。 文明の衝突だと指摘する歴史家がいるが、そんな大げさな事態ではない。

     

  6. 貧富の差

    ベッカムがアメリカのサッカーチームに移籍して300億円の5ヵ年契約を結んだ。

    イチロウがマリナースと5ヵ年延長で100億円の契約更改をした。

    こんなに金を払ってもペイする社会はどこか狂っている。 貧富の差を生じるのは資本主義の欠点であるが、不必要な金を特定の個人に与えるのは、人間が持つ悪い性なのではないか。 ジャンボ宝籤で3億円稼いだ人は本当に幸福なのだろうか。 他人の金を奪って悦に入っているだけではないか。 そんなにお金を独り占めして何に使う気なのだろう。

    刹那的な優越感に浸るだけで、何か侘しい感情が後に残らないのだろうか。

    人間の権力欲、征服欲は進化の過程で培われた性格であるが、これだけ人類が繁栄すると人間社会にとっては無用の長物としか言い様がない。 欲望も程度を過ぎると社会に害を及ぼす。 自民党は金持ち優遇で累進課税の強化に反対しているが、このような不合理な話を矯正するには、累進課税しか簡便な方法はない。 アメリカの真似をして法人税を下げたり、累進課税を軽減するほど、見識のない政策はない。

     

  7. 住み良い社会へ

    談合と同じ発想かもしれないが、皆で申し合わせて過度の競争をしない社会に出来ないものだろうか。 日進月歩の技術革新は今の人類には必要ない。 もう少し、ゆとりのあるスローテンポの生活が望ましい。 その方が絶対、皆が今より幸福を感じるだろう。 

    また、特定の人に巨大な金をばら撒く風潮は止め、入場料を安くするとか、ファンの為のサービス向上に振り向けた方が良い。 金持ちには重い累進課税を掛け、出来るだけ貧富の差を無くする様に心がけるべきだ。 そうすれば、詐欺や強盗、殺人などの犯罪はずいぶん減るだろう。 金持ち優遇の社会から、限りなく平等に近い庶民優遇の社会を指向すべきではないか。 民族紛争もどちらかのグループが利益を奪う過ぎるから起きる現象ではないか。 どちらの勢力にも偏らない平等主義的政策を取り、競争する事を生甲斐としない風潮を広めれば、この世の中はもっと住み良い環境に変わると確信する。

    それとも、人間社会とは本来、争う事によってのみ問題を解決する、強者の論理必勝の社会で、矛盾点が最高潮に達しなければ、根本的な変革はされない特性を持った社会なのだろうか。