本能について(02/9/18)

1.渡り蝶の不思議

NHK-TVの「地球不思議紀行」は私の好きな番組の一つである。

何時だったか、不思議な習性を持つ蝶(アゲハチョウの一種)の映像を見て強烈な印象を受けた。  アメリカ東南部に生息するその蝶は、冬になると暖かいメキシコに渡来する。 越冬した蝶は春になるとまた北米に帰って行くが、途中で力尽き卵を産んで死滅する。 そこで孵化した次世代の蝶は親の遺志を継いで北を目指し、親達の生れ故郷に帰って行く。 二世代掛けて目的を達する所にスケールの大きさを感じる。

親から学習もしないのに何故その様な行動が取れるのか。 本能とは何なのか。

本能とはその生物が長い時間を掛けて蓄積して来た生活の知恵であり、しかも親から子に遺伝して行くものである。 最近色々な遺伝子(癌に罹りにくい遺伝子、害虫に強い遺伝子など)が見付かっているが、本能を司る複数の遺伝子が存在する事を確信する。 もしそう云う遺伝子が存在しなければ実現不可能な生物の習性は無数にある。 後天的に獲得した習性ではないので、遺伝子により先天的に付与される以外に方法は無い。

2.性格を決める遺伝子

自分の子供の性格や行動を観察すると、良く似ているものが沢山ある。 中には後天的に学習したものも有るだろうが、先天的としか考えられないものが沢山見付かる。

私は、これは遺伝子の所為だと考える。 人間の全遺伝子を解明す「人間ゲノム計画」が進行しており、DNA配列はその半数以上が解明された。 しかし、数千有ると言われる遺伝子がどの部分にありどんな機能を持っているかは殆ど分かっていない。

性格や行動のパターンは脳細胞の結線の仕方で決まる。 本能を司る遺伝子は脳の結線を制御しているに違いない。 「三つ子の魂百まで」と言う諺がある。 基本的な脳細胞の結線は幼児時代に完成する。 それを司るのが性格を決める遺伝子であると思う。 

そう云う遺伝子は沢山存在し、基本的な結線を制御してその人の基本的性格を決定する。 性格を変える事は難しいと言われる。 学習や環境、躾によって少しは変えられるが一度配線された脳細胞のネットワークの基本部分は変わらない。

最近、脳の研究が進み、脳の各部位の制御機能が次第に解明されつつある。

本能を司る部位は脳の奥深い小脳や脳幹部分にあるが、その部分の研究はまだ進んでいない。  これらが解明されれば、私の仮説が正しい事が立証されると信じている。