メダカの飼育(2009年7月5日)

  1. 最初の飼育

    私の郷里は広島県呉市郷原町である。 呉市に合併されてもう数十年になるが、今でも農家が多く、用水路にはメダカやフナ等が生息している。 その隣の町に、私の妹が嫁ぎ、その旦那はかっては広島東洋工業に勤めていたが、今は退職してもっぱら農耕機器を買い、老齢化した近所の農家の田植えなどを請合う傍ら、無農薬栽培でおいしい米の生産に努めている。 数年前、彼らの家を訪問した際、飼っていたメダカの水槽を見たら、背骨が曲がった奇形は多数発生していた。 そこでこれは近親生殖が原因だと考え、我が家でもその現象が再現するかどうか実験してみる事にした。 我が家には小さな庭の隅に瓢箪型の小さな池があり、朝鮮フナを飼っていた。 そこに義弟から貰ってきたメダカを10匹位放ち、水草を入れて産卵するのを待った。 その後、12ミリ位のメダカの稚魚がいるのに気付いたが、親までに成長しなかった。 どうも、朝鮮フナの餌食になった様だ。
    そこで、水質浄化フィルターの付いた室内飼育用のプラスチックの水槽を買って来て、そこでメダカを育てる事にした。 23年は真面目に飼育したが、なかなか奇形が現われないので、その内、水槽の藻でも育つだろうと餌も与えないで放置していたら、最後には3個ある水槽にそれぞれ1匹しか生き残っていない悲惨な状態になってしまった。

  2. 2度目の飼育

    その頃、庭の瓢箪池では珍しい事が起きていた。 こちらでも池に自生する水草や藻を食って朝鮮フナが育っていたが、我が家の上空が鷺の飛行コースだったらしく、魚が10センチ位に成長すると、待っていたかの様に鷺の襲撃を受け、全滅の被害にあった。仕方なく池をネットで蔽い、池の周りに植木の鉢を置いて、鷺の襲撃を防ぐことにした。その内池の中には水藻が大繁殖し、魚の姿も見えない位の状態になってきた。 鷺の襲来も何とか阻止できた。 今年に入ってある寒い日の朝、池を覗くと、3−4匹しかいなかった朝鮮フナが10匹位の子供をつれて泳いでいるのを発見した。 いままで、何十年も金魚などを飼ってきたが、自然繁殖した事はなかった。 水藻のお陰で朝鮮フナが産卵し自然増殖していたのである。

    良く見ると、池の水面近くには、生き残ったメダカも数匹生存している事も分かった。 そこで室内水槽で絶滅に瀕したメダカを救う為、池の水草を数本ずつ採って、水槽に移してみた。 多分、池のメダカが水藻に産卵していて、それらが水槽で孵化するだろうとにらんだ。 案の定、一週間もするとメダカの稚魚が各水槽に数匹ずつ泳いでいるのが見付った。 ただし、数年前から飼っていた池のメダカはその後緋メダカ(体色は橙色)を追加したりして、遺伝的な画一性は保たれていなかった。

  3. メダカの変身

    水槽のメダカの稚魚の成長ぶりを見ていたら、一寸した異変に気づいた。 自然のメダカは黒っぽい色をしているはずなのに、稚魚の多くが橙色か、橙色と黒のブチの体色をしているではないか。 私は、緋メダカと黒メダカの合いの子が生まれたのだろうと思った。

    しかし、時間が経つにつれて、もう一つの異変に気付いた。 メダカは細長い体形をしているはずなのに、半数以上の魚は鮒の様に幅広い体形をしていた。 今では誰が見ても朝鮮フナの子供に見える。 親の朝鮮フナは赤に近い橙色の体をしているのに、子供たちは橙色、黒色、両者の混ざったブチ色である。 これは店で買ってきた朝鮮フナが橙色だけの遺伝子を持たず、黒いフナとの合いの子であった事を物語っている。

    写真の下方の右にいるのは緋メダカ、その左や上にいるのが朝鮮フナの子供

    話がややこしきなったので整理すると、

    1. 池から採取した水藻には朝鮮フナとメダカの両方の卵が付いていた。
    2. 朝鮮フナの親達はすべて赤橙色をしているが、黒いフナの遺伝子が混ざっていた。
    3. メダカの親にも2種類あり、緋メダカと野生の黒メダカの混血の子が生まれた。

    朝鮮フナの子供たちは、もうメダカの3倍の大きさに成長したが、身体の色は3種類、すなわち、親と同じ橙色、濃い灰色、それらのブチに分類できる。 メダカも同じ様な傾向がある。

    メダカだけを育てる予定が、予期しなかった朝鮮フナの混入により、水槽の中が賑やかになった。 それにしても、朝鮮フナが純粋な赤橙色でなかったとは。 そんな事も知らず、ペットショップでは赤系の朝鮮フナを今も売り続けている。