ゆとりのある社会(200944日)

  1. 競争社会の欠陥

    現在の地球上には60数億人がひしめき合い、グローバル化の波に覆われて国家、企業、個人のどのレベルでも競争が熾烈に成っている。 情報化社会では膨大な情報が瞬時に世界の隅々まで行き渡る。 それが相互間の競争に一層の拍車を掛ける。

    時差による為替や株式の僅かな差額を利用してインターネットで瞬時に売買し、利益を挙げることも可能である。 人件費の安い新興国に工場進出するので、先進国の労働者は賃金を抑圧される。更に会社内では成果主義で評価させられるので、同僚間の競争は一層激しさを増す。 競争によって製品の品質は向上し、価格は下がるので、消費者の立場に立てば利益を受けていることに成るが、競争させられる方はもう我慢の限界を越えている。

    生活が豊かになる代償として強烈なストレスを受け続ける。 また、競争に負けたものはウワーキングプアーとなり、犯罪や詐欺に走る。 いずれにしても、豊かな生活を送っていると言う実感が持てない。 これが現代競争社会の欠陥である。

  2. ゆとりのある社会の実現

    人々が希望するのはゆとりのある豊かな社会である。そんな社会を実現するにはどうすればいいか。

    まず、今の全世界レベルの競争をお互いに談合してスローダウンせねばならない。その為には現在進行中の新興国や発展途上国の人口爆発を止める必要がある。 途上国では産児制限のキャンペーンがなされているので、それをもっと推進すべきである。 日本では少子化を食い止める政策が取られているが、これは直ちに中止すべきである。高齢化が進み、若い人の年金負担が増えるので、子供を増やして負担の軽減を図ろうとしているが、これでは人口が減らず、ゆとりのある豊かな社会は実現できない。 江戸時代の人々は所得は少なかったが、心情的には現代人よりゆとりのある豊かな生活をしていたと思う。

    人口も少なく、熾烈な競争も無く、テレビや自動車は無かったが、浮世絵や歌舞伎を楽しみ、馬や籠に乗ったり徒歩でのんびりとお伊勢参りを楽しんでいた。

    リニアモーター新幹線に乗り1時間で東京から京都に行くより、東海道五十三次を自分の足で歩き、周りの景色を楽しみながらゆっくりと旅する方が本当はもっと楽しかったに違いない。 彼らが現代にタイムスリップしたら、あまりの忙しさに困惑し、疲労困憊する事であろう。

    我々現代人は物質的には豊かになったかも知れないが、精神的には江戸時代より不幸になっていると思う。 資本主義社会は生産効率を挙げて一見豊かな社会を実現したかに見えるが、その為に心の豊かさを犠牲にしている。

    とにかく、競争を抑えるには、先ず人口を減らす必要がある。 西欧の先進国に比べ、日本人は勤勉であると言われるが、それは多くの人を養う為無理して働いているからである。日本人の勤勉性は過密な人口密度に起因している。 人口が多いほど経営者は儲かる。 少子化で困るのは、人件費を低く抑え、生産規模を拡張して稼ぎたい資本家側なのである。 政府は資本家の為にGDPの増大を計るのではなく、国民の為に一人当たりのGDPを向上する政策を取るべきである。その点、中国の採った「一人っ子政策」は賢明であった。 現代の中国の発展はそのお陰である。

    次の対策は、先進国と新興国・発展途上国の貧富の差を早く解消する事である。 現代先進国は、この貧富の差を利用して製品のコストを下げ、利益を得ているが、利益の配分をもっと途上国の労働者の給料に回し、貧富の差を少なくする方策を採るべきである。

    新興国に工場進出して割安な労働力を利用する事は、自国の労働者の雇用を圧迫している。 
    貧富の差を利用した利潤の追求を止め、お互いの所得配分差を縮小すれば、巡り巡って日本のワーキングプアーの問題も解決する。過剰な競争が起きる一因は、南北問題にある。 先進国は自分の利潤を抑え、南北問題を早く解消すべきである。

    今ひとつの対策は、企業経営者が拝金主義を止め、自分だけが豊かになれば他人はどうなっても良いと言う利己的な考え方を捨てる事である。 金や物質的豊かさよりももっと大事なものがある事を学ぶべきである。 社会全体が豊かになる様、労働所得分配率をもっと上げるべきである。 自分だけこれをすれば、他社との競争に勝てなくなり倒産するので、世界の経団連全体で足並みをそろえてこの施策を実行せねばならない。 このコンセンサスを取るのは非常に難しいが、金融資本主義の暴挙を規制するだけでなく、労働者優遇政策を世界的合意の下に実行すべきである。

    その為には、金融資本主義を捨て、労働資本主義(労働者が共同で会社経営する体制)なる概念を樹立する必要がある。

    以上、思いつくままに色々書いてみたが、資本主義が崩壊するにはまだ長い時間が掛る。

    今回の世界大恐慌は崩壊の前兆ではあるが、これを期に私の言う所まで一気に改革が進むとは考えられない。資本主義が崩壊するまでには環境破壊や今回の様な本質的な欠陥の露呈が何度も起き、それらの矛盾が累積して歴史の変換点が到来するまで気長に待つしかない。

    共産革命は失敗したが、資本家が労働者を使役する資本主義ではなく、労働者が共同で企業経営をする労働者経営主義の時代が何時の日か到来し、歴史の流れが大きく変る時があと数十年かの内に来るであろうか。