土地成金(02/9/28)

土地は私有財産ではなかった。

昔、古代人が集団生活をしていた時代、土地は社会の共有物であった。

自己組織化が進み、社会のハイアラキーが構成されるに従い、権力者は土地を私物化し始めた。 土地の開墾を奨励する為、開墾した土地はその人の物とするインセンティブを与えた。 戦国時代には土地は恩賞論功の対象となった。 しかし、土地は領主のものであり、個人の私有財産ではなかったので土地成金は生れなかった。 江戸時代以降、地主と小作農への2極化が進行して行き、明治維新後土地の私有制が認められて大地主制が定着した。 アメリカが終戦直後農地改革を断行した時、土地占有と搾取の悪弊は大きく是正された。 自分の土地を得て、農民の生産意欲は向上した。

しかし、戦後の経済成長期に入ると、土地の値段を吊り上げて一儲けしようとする輩が土地転がしを始め、いわゆる「土地神話」が日本国中に蔓延して行った。 自民党政治はそれに対し何の対策も打たず、政治資金調達に利用してますますその愚行を煽った。

バブルの時代にその風潮はピークに達し、自己矛盾によって地価は急激に値下がりし、「土地神話」に踊らされた銀行、建設業者、その他諸々の連中が、今その報いを受けている。

土地の値段はバブル期の前のレベルまで下がったと言われるが、それでも未だ異常に高い。 パラグアイでは100万円で10万平方メーターの土地が買える。 1平方メーター10円である。 今私が住んでいる横浜市戸塚区では230,000円(公示価格)する。 二十年前、買った時には80,000円だった。 その又30年前、この団地が造成された頃は8,000円だったと言う。

団地の界隈には、土地成金になった地元の元貧乏百姓が豪邸を構えている。我々が一生掛けて稼いだ金は全て彼らに吸い上げられた。 何の能力も無い連中が湯水の様に大金を使い、われわれ土地購入者が耐乏生活を強いられるのか。

こんな馬鹿な話は無い。 

JRの「東戸塚駅」が出来るまで、この地域は横浜市の僻地で土地の値段は最低だった。 土地の急激な値上がりは、全て新駅が出来た所為であり、横浜市が税金で市街基礎設備を整備したからである。 彼等が土地の値上がりで稼いだ泡銭は全て税金として献上すべき性格のものである。 土地税制の不備で、値上がりは止らず、徒に「土地成金」を増やす結果に終わった。 

空気と同じく、元々土地は我々皆が共有すべきものである。「共産主義」は自滅したが、土地に関する共産主義の考え方は正しい。全ての土地は国有とし、国民は正当な対価を払ってそれを賃貸すべきなのである。

日本の異常な物価高の原因は全て土地の私有財産制と地本主義にある。 

今、我々も仕方なく土地を私有している。 土地が値上がりすれば儲かるはずである。しかし、子供達は数千万の家を買わされ、一生ローン地獄に落ちる事になる。 物の値段は下がらない。 総合的に見ると、多数を占める我々「極小地主」は損をする。

皆が納得出来る「公平な社会」を実現するには土地の私有制を止めるしか、抜本的な解は無いと信じる。 土地私有制に根拠を置く地本主義の時代は何時終焉するのか。 土地政策の失敗を取り戻すには時間が掛かる。
一旦値上がりした地価は、なかなか正常なレベルまでは下がらない。
我々の生きている内にこの問題が解決しない事だけは確実である。