火星大冒険は2012年9月17日、NHKのBSプレミアムで2時間放送されたものの抜粋である。
火星に原始的地球外生命が存在する可能性がある。
地球から遠く離れた宇宙には、太陽系に似た惑星を持った恒星が無数に存在する。 高度文明を持った生物の存在を信じて、宇宙から来る電波を受信し、その中に「意味を持った信号」が無いかを調べて、高度文明が存在するかどうか、気の長くなる様な研究が進められている。

太陽系の中にも水を持った惑星や衛星がある。 最近、火星から到来した隕石の中に、有機物質が含まれている事が発見され、火星にも原始的な生命が地中にいるのではないか、地球上の生物の起源は数十億年前火星からもたらされたのではないかと言う仮説が立てられ、火星に探査機を打ち上げて生命の存在を調査するプロジェクトが遂行されている。
望遠鏡で火星を観測すると、沢山の筋状の線が見える。 そのため、火星には高度な知能や文明を持った火星人が居り、筋状の線は彼らが建設した運河ではないかと言う憶測が流された。

火星の探索は米国が1964年に打ち上げた火星周回機「マリーナ4号」から始められ、1976年には「バイキング」が打ち上げられたが、水の存在を示す証拠は発見されなかった。 1997年には「マーズ・グローバル・サーベイヤー」、2006年には「マーズ・リコネッサンス・オービター」が打ち上げられ、次第に高解像度な火星全体の表面写真が撮影される様になった。
これらの調査結果をもとに、2011年11月26日、2000億円の巨費を投じた火星探査機「キュリオシティー」が、高性能な機器を搭載して打ち上げられた。
火星までの飛行距離は5億7000万キロ、火星に着陸し表面の土壌を採取して生命の痕跡を調べる地上探査機を搭載していた。
火星には大気圏層が有る為、カプセル全体は耐熱板で保護され、2000度の高温に耐えた。
飛行速度マッハ7で減速用パラシュートが開き、順調に減速して行った。パラシュウトには30トンの張力が掛かった。
飛行速度が低下すると、まず耐熱シールドがカプセルから切り離された。 あと、着陸まで2分32秒の時点であった。
カプセル内には、垂直降下速度を減速するロケット機構と、地上に着地する着陸船が強靭な紐で接続されていた。 減速するとまずパラシュートがカプセルから切り離された。
減速機の逆噴射ロケットが発射され、ゆっくりと地上に向けて降下して行った。
着陸まで12秒で、減速機と着陸船が紐で結ばれたまま、数10メートルの間隔で分離された。
着陸船が着陸すると、吊り下げていた紐の張力が急に減少する。 それを感知して着陸船の紐を切り、減速機は上昇して着陸船から離れた場所に着陸する。
こうして、着陸船本体だけが、無事着陸出来た。

原案では、減速機の上に着陸船を置き、減速機自体が着陸して、着陸船を着地させる橋状のラダーで着地させる仕組みを考えた。 しかし、この方法では、減速機が着地する時、膨大な量の土ほこりを発生し、着陸船が傷付いたり汚染される。 また、橋状のラダーを使って着陸船を下ろすと、1トンを超える重みでラダーが破損する欠点があった。 
その他、原案での着地では、着地センサーが誤動作した失敗を経験している。
今回の着地方法は、これらの欠陥を一気に解決する、まさに「逆転の発想」であった。
逆転の発想で着地に成功した着陸船は、乾燥した砂漠とその向こうに有る海抜5000mの山の写真を送ってきた。
参考に、最初1964年に打ち上げられた「マリーナ4号」の周回機を示す。
次に、1976年に打ち上げられた「バイキング」の写真を示す。
「バイキング」には、火星の地上に着陸する地上探査機が装着され、着陸後、火星の砂漠の様な大地の写真を送って来た。
1997年には「マーズ・グローバル・サーベイヤー」が打ち上げられた。 
2006年に打ち上げられた「マーズ・リコネッサンス・オービター」の写真を示す。。
写真の解像度は改善され、精密な火星表面の写真を送り続けた。
これが、火星の北極を中心に見た火星の全体図である。
この図を良く見ると、北極を中心にした平坦な砂漠と沢山のクレーターに覆われた、白線外の地形に大別される事が分かる。
科学者などは、平坦な部分には太古の海があったと考えている。
そして、その海の中には数万年の間に単細胞の生物が発生したと仮定している。
「クリオシティー」の地上観測機が捉えた写真には、温度が上昇すると地表に水の流れた線が観測される。 地中の氷が解けて地表に現れたと考えられている。

「クリオシティー」の地上機は現在も地表を移動しながら、地表を掘削してその成分解析し、生命に痕跡を探し続けている。
同上
アメリカの砂漠地帯には、火星の地形に酷似した地域があり、そこの地層を調べると「紅色硫黄細菌」の残骸が見つかる。

これらの生命体が海底で岩片覆われ、有機物を含んだ地層を形成したと考えられる。
上記の顕微鏡写真を示す。 黄色の線の中に有機物の残骸が閉じ込められている。
四十億年前、火星で上記の堆積層が出来たと想定されるクレーターを示す。
四十億年前、地球と火星は海に覆われていた。
39億年前、隕石の衝突で、火星の海や大気層が大量に失われ、飛散した塵によって地表温度が急激に下がり、全球凍結が生じた。

「キュリオシティー」の発射では火星での着地点を何処にするかで議論が戦わされ、現在は乾燥しているが、過って数百万年に亘り水が蓄えられていたクレーターの内縁の近くが選ばれた
その部分で「キュリオシティー」の地上探索車が撮影した火星の地層の写真を示す。

粘土鉱物は水低で構成された堆積層であり、その上の地層に、水が蒸発する過程で数百万年掛けて形成される硫酸塩鉱物の地層が横たわっている。 両地層ともそこに長期にわたり水の存在した事を裏付ける証拠となる。
昔存在した水は、現在は氷となって地下に蓄えられていると推測される。
キュリオシティーが打ち上げられて火星に着陸するまでに被爆した宇宙線の変化を示す。
火星への有人飛行で最も危険なのは、この宇宙線の被ばく量である。 「キュリオシティー」の計測では飛行中に5回の強烈な宇宙線を受けていた。
人間に対する被爆量を限界以下にするには、現在使用している液体燃料ではなく、気体の電離を利用する「プラズマエンジン」で飛行速度を約10倍にしなければならない。 プラズマエンジンの噴射速度は通常エンジンの4倍あり、噴射時間が長いので、重畳効果で飛行時間を10倍に出来る。
プラズマエンジンでは長時間の推進力を得られるので、飛行時間を削減する事が出来る。 次に打ち上げられるロケットでは現在研究中の「プラズマエンジン」による高速化がよていされている。
現在運用されている「宇宙実験室」にはこの「プラズマエンジン」を装着し、テストが繰り返されている。
成功すれば、近い将来、火星への有人着陸が可能となり、地球上の生命のルーツが火星から飛来した隕石に有ったかどうかが解明される事になる。