社会の荒廃(2007108日)

  1. 競争社会の敗者

    最近、仕事が見つからず、金が無くて強盗や殺人に走る人が増えている。

    受験戦争に敗れ、親の期待が重荷になって、親殺しに走る学生が増えている。

    会社の経営に失敗し、借金の返済が出来ず、簡単に貸主を殺してしまう人達が増えている。

    現代は情報化社会であり、膨大な情報が瞬時に世界中を駆け巡る。 少しでも金が稼げる情報に、お菓子に群がる蟻の様に、世界中の人が群がり、激しい競争を展開する。

    情報化社会は世界中に張り巡らされた情報網を通して、競争に参加する人や企業を増やし、競争を激化させる。 そして、多くの勝者と敗者を排出する。

    勝者はますます競争力を強め、敗者は何をやっても上手く行かず、両者の格差は拡大の一途を辿る。 これが資本主義社会の自由競争がもたらす格差の増大である。 大量に形成される貧困層は暴力や悪知恵によって勝者の蓄積した金を奪い、格差を解消しようとする。

    こうして、社会は荒廃し、敗者の復讐が始まる。

  2. 犯罪の増殖

    資本主義社会が成熟すると、必然的に犯罪が増える。

    資本主義社会が成熟していない国でも犯罪者は多い。 農地改革が断行されず、地主と小作人の階層が固定したまま資本主義社会に移行した国は沢山ある。 そういった国では貧富の差が固定され、資本主義によってさらに格差が拡大している。 封建社会から近代社会に移行する時、社会革命を体験した国や共産革命に見まわれた国の現状は幾らかマシだが、ソ連邦では共産主義が崩壊し、資本主義に回帰した結果、貧富の格差は拡大しつつある。

    中国は共産主義に資本主義を取り入れた社会に移行したが、拡大する貧富の格差が大きな社会問題になっている。 インドはカースト制社会を温存したまま、情報産業の育成に成功しているが、近い将来、貧富の差が大きな社会矛盾となる危険性を孕んでいる。

    社会革命の洗礼を受けた国も受けなかった国も、殆どの国が資本主義の競争体制に組み込まれつつあり、それが地球的規模で進行している。

    本文の終りに先進国の所得格差の年度推移を示すが、どの国でも右肩上がりの傾向が続いている。

    日本は一番格差の少ないスエーデンから数えて第4位にランクされている。

    一億総中産階級と言われた戦後の高度経済成長の時代、日本人の殆どが自分は中産階級だと意識した時代があった。 しかし、中国の経済が驚くべき年率で成長し始めると、相対的に日本の経済成長は抑制され、石油ショックやバブル崩壊で不景気の時代が訪れた。海外の安い労働力の流入はそれを助長し、彼らによる犯罪や治安の悪化が見られる様になった。 そう云った下地が出来上がった頃を見計らった様に、インターネットや携帯電話などが急速に普及し、光通信網技術の開発で通信料金は急激に低下し、あらゆる情報が世界に向けて瞬時に発信される時代が来た。

    日々繰り返される犯罪情報はメディアを通して克明に全国隅々まで周知される。「犯罪は模倣される」と言われるが、犯罪の模倣が流行現象となって社会の荒廃を一層助長している。 また、情報化社会の新技術が犯罪に悪用され、新しいタイプの犯罪を創造している。

  3. 安心して住める社会へ

    若かった頃、中南米の国々で生活し、日本が如何に安全な国かを痛感させられた苦い経験がある。 しかし、最近の凶悪犯罪の増加は、近い将来日本もあの様な犯罪社会に変貌するのではないかと言う危惧の念を起こさせる。 白昼堂々と大衆の面前で犯罪が繰り返され、目撃者も見て見ぬ振りをしている社会、金持ちの物を取るのは犯罪ではない、敗者の正当な権利であるとする格差社会が、次第に迫り来る恐怖を感じる。

    過度な競争社会にブレーキを掛け、もう少しゆとりのある平穏な社会にするにはどうしたら良いか。元凶は拝金的な傾向を強くする資本主義制度であり、それからの脱却、すなわち北欧社会主義的な社会への転換の道しか無いのではなかろうか。 それとも、アメリカ帝国主義の衰退を気長に待つしかないのかも知れない。 当座の策として、せめて、昔武士が使った峰打ちのように、殺人に至らない様なナイフやピストルの使い方位は、犯罪者に習得してもらいたいものである。

     

     

    (参考)