科学技術立国を目指せ(2012年1月17日)


20世紀最大の発明は原子爆弾であった。 また最大の発見はDNAの螺旋構造の発見であったと思う。 前者は大量殺戮兵器となり、沢山の人を殺戮した。 後者は人間の生命活動の本質を明らかにし、新薬の発明、病害に強い遺伝子組み換え植物の育成など、人間生活にとって有用なものを創出した。 また、LSIの発明、それによるパソコンの普及は作業の効率を飛躍的に高め情報化社会の発展に大きく寄与した。

人類を絶滅させる可能性を持つ原爆の破棄は遅々として進まないが、米ソを筆頭とする原爆保有国は早急に原爆の破棄に向けた行動を採るべきである。もう一つの大きな危機は、急速な地球温暖化である。

省エネ技術、再生可能エネルギーへの転換など、CO2の削減技術の進展が、原爆破棄とともに21世紀人類に課せられた最大の課題だろう。

太陽電池の変換効率の向上、燃料電池のコストダウン、地熱発電の普及、植物からのエタノールの抽出、樹木廃材の燃料としての利用技術、自動車の燃費向上技術、電気自動車のコストダウンなど、急を要する研究課題は幾らでもある。
医学の面では、京大の山中教授の発見したiPS細胞を活用した難病の治療法の開発、新薬の合成推進が重要な研究テーマとなる。 
新物質合成の分野では、原子レベルのナノテクノロジーによる軽くて強靭な新物質の発明、新薬として使えるタンパク質の人工合成などが大きな期待を集めている。 癌化細胞に選択的に付着し、レーザーでそれを爆破して癌細胞だけを破壊するナノレベルの薬の合成研究も進んでいる。

これからの先進国の進むべき道は、科学技術立国への道である。 従来の技術を利用した製品の製造は人件費の安い発展途上国に任せ、上述した新技術の研究促進と工業化で、国内産業の質を差別化して行く事により産業の空洞化を食い止める以外に、日本の国内経済を発展させる方法は無いと思う。
文部科学省は、もっと理系進学者を増やし、優遇し、日本独自の科学技術の進展に潤沢な研究費を割り当てる対策を早急に打つ必要がある。 どちらかと云うと、文系を優遇する傾向が日本にはある。 学生にも、難しい理科系を敬遠し、文系を志向する傾向が強い。
科学技術の進歩により、理系の学習研究内容は年々難しくなるが、文系の進展は遅々としているので、理系を志す学生はより多くの学習に耐えねばならない。安易な文系への道へ逃避してはならない。
グローバリゼイションの中で新しいイノベーションを起こし、厳しい競争社会で生き残って行くには、科学技術立国への困難な道を開拓する事が焦眉の急である。
最近の新聞報道によると、次世代のテレビのディスプレイの本命と見做される大型有機ELパネルの技術で、韓国の後塵を拝しているらしい。 こんな事を許す様では日本電機業界の将来は暗澹たるものになって行くだろう。