ノーベル賞を取る方法(02/11/28)

 

「エサキ・トンネル・ダイオード」の発明でノーベル賞を貰った江崎玲於奈さんが、「21世紀のフォーラム」の基調講演で次の様に言っている。

「私が物理学賞を受賞した当時の生理学・医学賞は、動物の行動学を解明した研究者達に贈られた。  動物の行動は、生れつき固定された遺伝情報に基くと言う内容だった。 だが、人間は違う。 人間は、固定のプログラムではなく、自分の行動を決めるプログラムを、自らの手で作る事が出来るからだ。

学校は、他人が作ったプログラム、つまり数学の公式や言語を教え込む場だ。 遺伝情報は誰も同じ、との前提に立っている。 だが、教育とは果たしてそれでいいのだろうか。

教育の真の目的とは、その人間のもって生れた才能を見出し、最大限に伸ばす事、自らプログラムを書ける能力をはぐくむ事だと考えている。 個人の遺伝的特徴に合わせた教育が必要だ。  私自身、特別優れているとは思わないが、持って生れた遺伝情報をうまく使ったことで、成果を挙げたのだと思う。」

江崎さんの偉い所は、遺伝子に基ずく運命的な人生論の立場を容認しながら、人間にはそれを発展させる能力があり、持って生れた才能をうまく育てる事の重要性を指摘している点である。

また、次の様にも言っている。

「安定した社会ではともすれば、将来は現在の延長線上にあると思ってしまう。 真空管万能時代にトランジスタが発明された事を考えてみると、将来とは現在の延長線上にあるのではなく、私達が作るものだと言う事が分かる。 創造性と言うのは年齢と共に衰える。 若い人達の教育を大切にし、積極的にチャンスを与えていく事が欠かせない。

最後に、創造性を発揮する為の5か条を紹介したい。

  1. しがらみに捉われない事。
  2. 権威に余りのめり込まない事。
  3. 無用な物は捨てる事。
  4. 自分のメモリースペースを常に多くしておく事。
  5. 初々しい感性を失わない事。

ただし、これらは成功する為の十分条件ではない。 単なる必要条件に過ぎない」

私は江崎さんがノーベル賞を貰えたのは半分以上は遺伝子の所為であると言いたい。  自分の遺伝子の長所を伸ばし、権威にのめり込まなかった、失敗しても只では起きなかった事等が幸運を掴んだ原因だと思う。  誰でもノーベル賞を取れる才能が持てるとは言えないが、可能性は秘めている。  その可能性を最大限に引き出した人が「良い人生」を送ったと言えるのかも知れない。

しかし、私が「動物的人生論」で言った様に、人間本来の目的は子孫を残す事であり、江崎さんが言っている事は、社会に生きる人間が個人個人で考えた生き方に関する一つの意見に過ぎない。 そうする事が自己満足を得る方法ですよと言っているに過ぎない。 人間は自由に生きて良いのであり、その方法論はあなた自身に託されている。 

しかし、ノーベル賞を取りたい人にとっては、江崎さんの意見が傾聴に値する事は間違いない。