生きとし生けるもの(2009914)

  1. 生きる目的

    広い宇宙には地球と同じ様に、生命体が存在する惑星が無数に存在するだろうが、これらの生命体の生きる目的は何なのだろうか。

    鮭の稚魚は川の上流で孵化して川を下り、大海を4年間回遊した後、自分の生まれた川に帰り、産卵、授精をしたら、精根尽きて死んでしまう。 蝉は7年間地中で樹液を吸いながら成長し、地上に出て交尾し産卵すると直ぐ死んでしまう。 蛍だって、池や小川で幼虫時代を過ごし、成虫になってからは食事を一切せず雌雄が交尾し産卵すると直ぐ死んでしまう。 

    この他、生物界には似たような事例が沢山ある。 彼らの行動を観察していて直ぐ気付くのは、彼らは交尾して子孫を残す為に厳しい生存競争に耐えて一生を全うしていると言う事である。 すなわち、生きる目的は、子孫を残して自己の生命を次世代に繋ぎとめる事である。

    一般に一回産卵すると直ぐ死ぬタイプが多いが、長生きして何回も子供を産むタイプも沢山いる。 しかし、老化して生殖能力が無くなると直ぐ死んでしまう。 すなわち、生きる目的を達成すると直ぐ死んでしまう。 例外は我々人間だけで、生殖能力が無くなっても何十年も長生きする人が多い。 しかし人間の生きる目的も、子孫を残す事である事は間違いない。 

    生命体に寿命がある限り、生きている内に子孫を残さなければ、その生命体は絶滅する。従って、生命体とは「生命を常に維持する物」であり、生きて子孫を残す事が生存し続ける為の必要条件となり、生きる最終目的となる。

    生物は誰からも生きる目的を知らされないが、生物自体が目的を達成する様に創られているので問題ない。 今、生きていると言う事は、祖先が「生きる目的」を達して来た証なのである。

    イギリスの生物学者ドーキンズ博士は、生物とはDNAを増殖する為に創られた生命体であり、生命体はDNAを増殖する為の道具に過ぎないと主張している。 個々の生物を生命を持つ主体とは見なさず、DNA自体が生命の主体であり、生きる最終目的はDNAの増殖であると結論付けている。 生物界をマクロ的な視点で捉えると、博士の言っている事が生命体存在の究極の目的の様な気にもさせられる。

  2. 環境への適応

    生命体が寿命を全うする為には、自然環境の変化に適応して行く必要がある。

    生命誕生以来45億年、その間地球上では、大型隕石の衝突、地中マグマの大噴出、大陸移動、全球凍結など、多くの生物を絶滅に追い遣るような環境の変化が何度も発生している。 その度に、生物は新しい環境に適応すべく自分の体を作り変えて来た。 それは突然変異と自然淘汰によってなされた。 突然変異によって環境の変化にうまく適応したものが自然淘汰されて生き残って行った。 環境への適応の仕方は、多くのランダムな突然変異の中にたまたま適応するものが出現し、その適応をした生物達だけが幸運にも生き残って行くと云った試行錯誤のやり方である。 子孫を残すには、まず親達が成長しなければならない。 自然環境に適応したものだけが親となり、生きる目的を達成する事が出来る。

  3. 進化の止まった人類

    地球上には何億と云う多様な種が生存しているが、人間以外の生物は自然環境に適応して進化している。 しかし、人類は自然に対抗し、自然淘汰を回避する道を進んでいる。 病弱な遺伝子を持った人も、医療技術の進歩により子孫を残す事が出来る。自然界ではそのような事は許されない。 

    生物学的にみると人類の進化はおおむね止まったが、人類は言葉や文字を発明し、科学技術を発達させて、人工的な意味で進化をしている。 その進化は、自然淘汰による進化に比べて格段にスピードが速い。 それは喜ばしい事ではあるが、両刃の剣でもあり、例えば、核戦争が勃発して人類を滅亡に追い遣る危険性も充分ある。 映画「猿の惑星」に描かれた人類の末路はそれを暗示している。

  4. 遠い将来の事

    人類が出現してまだ15万年しか経っていない。 恐竜は2億年以上に亘り、地球上で繁栄し、大隕石の衝突で全滅し、わずかに残ったものが鳥類に姿を変えて現在に生命を繋いでいる。 シーラカンスは4億年殆ど姿を変えないで今も生き続けている。

    人類はこれから何億年生きて行けるだろうか。 どの様な未来が人類を待ち受けているのか、誰も想像できない。 遺伝子工学が進歩し、それを利用して、自己改造に走る可能性も考えられる。 月や火星に移住した人類が、新しい環境で別の種に進化する可能性もある。 しかし、過去の歴史を振り返ると、殆どの種は何時かは絶滅の悲劇に遭遇している。

    奢れるもの久しからずで、現在繁栄している人類も、何時の日にか絶滅の危機を迎える予感がしてならない。