似非サンプリング社会(02/7/29)

最近新聞を賑わしている「鈴木宗男の斡旋収賄罪逮捕」「田中真紀子の秘書給与流用」「三井物産のODA談合」など、集中砲火を浴びせられている連中は一種の「社会的見せしめ」に遇っているに過ぎない。 スピード違反で捕まった時、なぜ自分だけ捕まるのか、他の車も皆違反しているではないかと泣き言を言いたくなる。 彼らの本音もこれと同じであろう。 しかし、つい本音を言うと大衆から袋叩きに遭うだけなので仕方なく口を噤んでいる。

品質検査に「サンプリング」と言う手法がある。 全数検査をしないでランダムに選んだサンプルを検査し、不良率が管理限界を超えていると全数を不良品として破棄する。

この手法を適用すると、政治家、商社などは全体として有罪となり、殆ど全員監獄送りで社会が機能しなくなってしまう。 そこで、悪いのはサンプリングされた連中だけだと云う事にして何とか体裁を保っているに過ぎない。 似非サンプリング社会たる所以である。

蔓延している諸悪が暴かれないのには二つの原因がある。 第一は巧妙にばれない様に事が運ばれているからである。 しかも大勢で共謀し、お互いに利害関係が一致しているので秘密が漏れにくい。 政官業の癒着構造が社会の隅々まで蔓延している。

第二は情報公開が不十分であり、マスメディアや警察の情報収集力も弱い。 内部告発は異端視され、オンブズマンなどの監視体制も十分機能していない。

更に諸悪の根底には、税金など政府・自治体が支出するお金は、公正な競争入札に持ち込まないで出来るだけ予算限度一杯で落札して儲けようと言う業者の思惑があり、また発注側のコスト意識の低さがある。 自分が汗水垂らして稼いだ金でないから、発注側にも節約の意識が働かない。 受注する業者も談合に明け暮れ、コストダウンの努力をしない。 外国の土建業者を入札に加えようとした事があったが、国内業者の総スカンを喰って立ち切れとなった。 

この様な公共事業に対する談合体質の打破、コスト意識の高揚には、外国の業者に門戸を開くのが一番手っ取り早い対策である。 入札の上限価格一杯での落札を無効とする手も有る。 例えば、上限価格の90%を実質的上限価格とし、コスト削減のインセンティブを設定する。 兎に角、今の馴れ合い体質にメスを入れ、血税の有効利用を図るには、これまでの様な手緩い方法では効き目は無い。

マスコミの責任も重大である。 特定の犠牲者ばかりを攻撃しないで、政官業の癒着の構造が如何に社会の隅々まで蔓延しているかを暴露する事にもっと精力を集中すべきである。

たまたま発見された不良品ばかりに注目しないで、その背景に潜む真の原因を究明し対策を打たないと、似非サンプリング社会に蔓延る悪は無くならない。