特許制度の欠陥(03/1/15)

  1. 色々な矛盾

    最近の新聞などで報道された問題点を列挙すると、

    以上の事例に現在の特許制度の抱える欠陥が露呈しているのが分かる。

    (注)
    読売新聞(1月19日付け)によると、1980年代、不況のどん底を経験した米国は、強いアメリカの復活を目指し、それまでの知的財産軽視の方針から「プロパテント」(知的財産保護)政策に大きく舵を切った。 1990年には1兆8000億円だった知的財産関連の収入は2000年には15兆6000億円に急増している。

  2. 現行制度の欠陥

    この欠陥は現代資本主義の持つ最大の欠陥の一つであると思う。すなわち、自由に金儲けさせ、企業活動の真の目的(公共への奉仕)を問わない。 その所為で目的を履き違えても、敢えてそれを黙認し、技術進歩へのインセンティブを確保する。 金儲け先行の悪弊である。

    特許制度はその際たる物だ。 企業や政府は膨大な開発費を注ぎ込んで新技術を開発し、特許を取って大儲けをしようとする。 確かに、特許制度が無いと、開発費が回収出来ず開発が進まないと言うジレンマに陥る。しかし、現行制度は単なる金儲け主義に走っており、本来の目的を逸脱している。著作権や知的所有権保護についても同様の弊害が生じている。(ホームページ「私の意見」の「コピー時代」参照)

  3. 対処法

    ノーベル賞受賞者の座談会でも発言されていたが、国際無償援助資金を製薬会社に支払い、結果的に安い薬を貧乏な患者に提供する方法もある。

    また、その製薬会社が慈善事業に寄付する形で、コピー薬の製造を許可する遣り方もある。 しかし、根本的な解決策は、特許の有効期限を一律に設定せず、開発費と一定の儲けが達成できた時点で特許を公開する様に改訂する事である。 勿論、現行の有効期限は上限として残す。

    ミリオンセラーで大儲けするのを許容する様な今の著作権保護法もおかしい。私が提案する様に、売り上げ部数が一定量を超えたら、売値を下げて行く。例えば、著作権料を下げて消費者に還元して行く方向に改訂すべきである。

    こうすれば、現代資本主義のメリットを生かしながら、その欠陥を補い、本来の目的を実現出来る社会になるのではなかろうか。

    (蛇足)

    国の開発費で発明したものに特許を与えないのは正しい遣り方である。しかし、現代特許制度の下では、それだけでは他の企業に特許を取られ、自分も使えなくなると言う自己矛盾に陥る。この対策としては、特許を認め、それを公開すれば良い。 特許は取っても特許料は取らないようにすれば良い。 折角回避された特許制度の欠陥を蒸し返す愚を、こうすれば避けることが出来る。