アンケート式民主主義の提案(20081214日)

  1. 選挙制度の欠陥

    郵政民営化で国民の信を問い、小泉首相は衆議院選で大勝して、衆議院で公明党を含め2/3以上の議席を確保した。 その跡を継いだ安部政権は参議院選挙で大敗し、いわゆる「ねじれ国会」の状態が生じて、参議院で否決した議案を衆議院で2/3以上の再可決で辛うじて成立させると言う綱渡りをしている。

    この様な現象が起きるのは、現在の選挙制度に欠陥があるからである。 時間の経過とともに国内世論の動向は大きく変化する。 その変化に選挙制度が対処出来ていない。 参議院の選挙の後、直ぐに衆議院の選挙を実施しておれば、両院とも民主党など野党連合が勝利を収め、ねじれ国会は生じなかっただろう。

    現在の選挙制度では、政権にしがみ付こうとすれば、この緊急時に政治空白を起こしてはいけない、政権よりは政策だなどと言訳しながら選挙をしないで、民意を反映しない政権を維持する事が出来る。 年と共に変化する民意を反映できない政権の存続を、現行の選挙制度では速やかに修正できない。

    同じ様な現象は他の国でも起こっている。 アメリカも、大統領の任期を規定しているため、世論がイラク戦争に反対していても、ブッシュ政権はそれを反映しないで古い世論(事実は情報操作された世論)に沿った政策を、任期満了まで継続している。

  2. 選挙制度の改革

    時間の経過と共に変化する世論の動向は、新聞やNHK、シンクタンクなどの実施する無作為アンケートで確実に把握できる。 これらのアンケートはサンプル数、数1,000の人達に意見を聞き、その結果を集計したものである。 複数のアンケート結果には幾らかの誤差はあるが、その値は微量である。

    国政選挙には莫大な人と金が掛かる。 それが理由で選挙を頻繁に実施する事は出来ない。 そこで提案したいのは、上記のアンケートをもう少し資料数(意見を聞く人数)を増やして国が実施し、その結果を反映した比例代表制選挙制度を導入する事である。

    例えば、どの党が政権に付けばいいかをアンケート調査し、もし民主党が40%、自民党がそれ以下の%と言う結果が出れば、衆議院と参議院の議席配分をアンケート結果の支持%に合わせて配分し、当然政権もその時の与党に与える。

    こうすれば、選挙で金も掛からないし、世論の変化を速やかに政権に反映できる。

    余り政権が頻繁に交代するのもまずいので、大きな政治の分岐点が来た時、議会の承認を経てこの様なアンケート調査を実施し、速やかに世論を反映した政策変換が出来る体制に変革する。

  3. 国民や国会議員は何をするか

    アンケートで政権が決まる様になると、国民の責任は一層重くなる。 常に世界の動向と国内政治を監視し、自分達が欲する政策と政府が行う政策が乖離していないかどうかをオブザーバーとしてモニターしていなければならない。 国民の政治意識は高揚し、アンケートに選ばれたからには棄権する人は少なくなる。

    選挙の洗礼を受けない議員は所属する政党の政策を真剣に提示・実行し、国民の世論を汲み取る為に常に国民と接触し、政策論争や国民世論の政策へのフィードバックに全力を挙げる様になる。

    選挙に金が掛からないから、選挙買収、利権への接触も無くなる。 比例制で議員に選ばれる為、政治家としての実力を常に磨き政策に精通する為の自己研鑽に励む様になる。 

    アンケート式民主主義を実行すれば、経済的で常に民意を反映した政権が政治の舵を取り、真の間接民主主義が実現するだろう。 最近、国民裁判官制度がスタートしたが、これは正しくアンケート式裁判のはしりである。 この制度では選ばれた国民が裁判官になる点、アンケート式政権選択よりも更に進んでいる。 これを真似ると国会は直接民主主義になるが、国民政治は常時活動する為専門の政治家に任せる必要がある。ただし、国会や委員会の中にアンケートで選ばれた“素人議員”の議席を設け、直接、民の声を聞く手法を試行する価値はある。