リース社会(200984)

  1. SONYの始めた実体験サービス

    最近のビデオカメラの進歩には目を見張るものがある。 フルハイビジョン画質で撮影できる事は勿論、記録時間も従来のカセットテープ型が1時間であったのに比べ、HDDSDカードなどを記憶媒体として数十時間にまで一気に増大した。 磁気テープを使っていた頃は機械的な撮影機構が、複雑で多くの部品を使っていたが、HDDになって一気に機構が簡略化され、大容量のSDカード・フラッシュカードの採用により機構の簡素化と機器重量の軽量化、小型化が一気に進んだ。 機械的に摩耗する部分が無くなり、故障率も改善された。

    私も、2005年に発売されたSONY製のテープ使用ハイビジョンビデオカメラを、今でも使っているが、当時の最先端機種も現在のものと比べると見劣りがする。 試しに、SOFMAPの中古品買い取りセンターに電話して聞いてきたら、買い取り上限価格は5000円で、新品価格の実に1/20にまで値下がりしている。
    今持っている機器で気に入らない点は、静止画撮影の画素数が1,9201440であり、沢山の花などが咲いているシーンを撮ると解像度が不足することである。 ちなみに、最近の製品の静止画解像度は4000x30001200万画素で比べ物にならない。

    最近販売されている製品には大別して2つの大きな技術的な流れがある。 
    SONYなどは、放送用高級機には3CMOSセンサーを持つ3原色分離合成型を30万円以上の高値で売っているが、民生用は1個のCMOSセンサーを持った廉価版を710万円で売っている。 これに対し、PANASONICは民生用に3CMOSセンサーを使用した機器をほぼ同じ値段で発売している。 カタログを読むと、どちらも自分の方が高画質な写真が撮れると唱っている。 インターネットで調べてもサンプル画像は提供されていないのでその真偽のほどを精査する手段がない。

    ところが、色々調べている内に、SONYショールームでビデオカメラや一眼レフデジタルカメラを2時間貸出し、実体験をして、しかも撮影したシーンをブルーレイディスクに保存して提供してくれるサービスをしているのを見付けた。 更に色々聞いてみると、同じセンターで2日間ビデオカメラなどを貸し出し、撮影した写真などを自分で自由にチェックできるサービスもしていると云う。

    私は以前から、購入者がカタログの粉飾宣伝に騙されない方法としてこの様な実物で検証できる宣伝の仕方を主張してきたが、ソニーが勇気を持ってそれを始めたのには感心した。 こうすれば、百万冊のカタログやコマーシャルに金を掛けるよりも売り上げに貢献すると、やっと分かったのだろう。 残念ながら、PANASONICどの他にメーカーはまだこの事に気付いていない。そこで、まずSONYの機器の実力をこのリースサービスを利用して、検証することにした。

  2. SONYに見習うべき事

    量販店なども店内で自由に撮影できるようにし、それをプリンターなりパソコンに表示させて、お客に納得させる売り方を採用すべきだと思う。 そうすれば、売り上げは今の何割も増すことは確かである。 どうせ、店員が殆ど手持無沙汰で遊んでいるのだから、こう云った体験サービスを採用して、粉飾することなく宣伝すれば、売り上げ拡大に繋がる。お客の立場で言えば、これまでに何度となく誇大宣伝に騙された経験があるので、カタログなどで幾ら宣伝しても、過去の苦い経験が障害となって、すぐには買えない、知りたいチェックポイントを実演して見せれば、納得して買う客は間違いなく増えると思う。

  3. リース制度の普及

    私もデジカメやビデオカメラを何台も買って来たが、すぐ陳腐化するので新品に買い替えると云う行動パターンを取り続けてきた。 リース制度はある事はあるが、一日のリース代が高くて普及していない。 これは「卵と鶏」の関係にあり、リース料を安くすれば自分専用のカメラなど誰も買わなくなるのに、それが実現しない領域でリース価格が固定されている。 リース料金を安くすれば、リースする人も増え、結果的には今よりも売り上げは増える事を、今のリース会社は知らないでいる。 DVDのリースの様に、改めて今のリース料金を見直すべきだろう。

    注(電気、都市ガス、水道など、ある中心を持ったネットワーク・システムを構成しているものも、本質的には共用していると云う意味でリース形式に属する。 この様な集中方式に対し、これから導入される太陽光発電や家庭用燃料電池などは、分散方式を取った設備である。 この様に、集中方式から分散方式へ移行するサービスもある事はある。 それは集中方式ではエネルギーの伝送損失が大き過ぎ、帰って効率が下がる。 リース方式でも運送コストが高く付くものはリースに向かない。 インターネットの様な大容量電気通信方式は伝送コストが非常に安くリース方式・集中方式が適している。)

    最近多くの会社が「クラウド・コンピューティング」と云う商売を始めている。 これは、現在の様に、各パソコンが自分専用のソフトやデータ保存メモリーを持たず、インターネットでつながる高速大容量のサーバーにそれらの機能を集約し、それらのリソースを多数の人で共用し、スケールメリットを出すシステムである。 これに加入すると、会社側はソフト代、ソフトバージョンアップ代、専用の大量データ記憶メモリを持つ必要がなくなり、今までより、割安にパソコンシステムを利用できる。

    いま、マイクロソフトがWINDOWS VISTAの次のOSWINDOWS7の導入を画策しているが、これは従来方式のパソコンのソフト形式を踏襲している。 これにたいし、GOOGLEOS業界に打って出るべく新しいOSの開発を推進しているが、これは上記の「クラウド・コンピューティング」を取り入れたものである。 このOSが導入されると、パソコンの機能は必要なソフトをダウンロードして、結果をアップロードするだけの、通信機能に特化した簡単な機能のパソコンとなり、リース料金の設定によっては今よりずっと割安なサービスが受けられる様になる。 ソフトも専用ソフトを買う必要がなくなり、バージョンアップの度にサーバーからダウンロードしたり、追加料金を取られる事もなくなる。 殆どすべてに云える事だが、リースする方が購入するよりは大抵割安になる。 一軒家を建てるより、貸家で暮らす方が割安であり、自動車だって、高い税金を払って自家用に買うよりもレンタカーを借りる方が本当は割安になる。 光通信を利用したNHKTVデマンドサービスも、高い録画機を買うより割安になれば、リースサービスとして世界中に普及するだろう。

    資源節約の観点からも、占有するよりリースする方が資源の節減が図れる。 これからの社会は多分その方向にシフトするだろう。技術進歩が速く、買ったものがすぐ陳腐化する時代を生き抜くには、皆で物やサービスを共用するのが支出を節減できる賢いやり方である。 リース社会になると、需要は減るだろうが、資源的にも効率の良い社会が実現できるだろう。 問題は、個人情報の保護、占有したいと云う人間の所有欲を満足できるかに掛っている。 物をコストダウンして普及を図るだけでなく、通信システムを活用したシステムとしてのコストダウンに努力する時代がもう直やって来て、世の中は次第にリース社会に移行するのではなかろうか。

    (追記)参考情報

    IT(情報技術)大手がインターネットを通じて様々なソフトウエアを提供する「クラウドコンピューティング」の基盤を構築する。富士通、日立製作所はそれぞれ約100億円を投じてデータセンターを新設。NECは年間投資額を倍増させる。クラウドコンピューティングは情報システムのコストを下げるとして米国で広がっており、景気後退下でも情報システムを強化したい日本企業に本格的に普及しそうだ。

    クラウドコンピューティングでは企業は機器やソフトを自前で調達・運用せず、IT企業が多くの企業のデータを集中管理する。ユーザーはシステム利用料を支払うが高額の初期投資などは不要で、情報システムの導入・運用の総コストが自前の場合より3〜4割下がるとの試算もある。