ハードからソフトの時代へ(200949日)

 

「これからは、ハードよりソフトの時代です」と1964年(昭和39年)に言った人を、私は今も鮮明に記憶している。 ペルー国電気通信調査団の一員としてペルーに行く途中、確かロスかメキシコシティーでのトランシットのひと時、当時のNEC社長の小林宏二さんにシャンペンを飲みながら言われた言葉だった。

その時はソフトの概念もはっきり掴んでいなかったし、コンピューターの事も殆ど知らなかった。 しかし、何かしら強い印象を受けた事を今でも思い出す。

前置きが長くなった。 今はソフト全盛の時代で、そんな言葉はごく当たり前に聞かれるが、私が言いたいのは、デジタルカメラに関する話である。

デジカメ業界では半年に一回は新型が出て、色々な新機能が付いたと大げさに宣伝される。 しかし、これら新機能は殆どカメラに組み込まれたソフトの改善であり、ハードの方は画素数の増加と撮影のスピードアップ位で、本質的には殆ど変っていない。

そこで、提案したいのは、ハードとソフトの分離である。 勿論、基本的なソフトはハードに内蔵される必要がある。しかし、撮影後、レタッチソフトで画質に修正を掛ける機能を担当するソフトの部分は、ハードから切り離し、独立して販売すべきである。

新機能が付加される度に、高い金を払ってハードとソフトの一体化したものを買わされる消費者の立場を考えるべきである。

私は、安いソニー製のデジタル一眼レフを持っているが、撮影した写真が適正露出から外れたときは、付属のソフトで撮影後に修正している。 今までは適正露出を全てカメラに求めていたが、露出を常に最適にする(目で見た通りの写真が撮れる)カメラは存在しない。

数十万する高級カメラでも撮影条件に拘らず常に最適な露出をする事は不可能である。高級なレンズを使って歪のない写真を撮るとか、重箱の隅をつつく様な事をして、値段を吊り上げているだけである。

カメラ付属の修正ソフトにも、最近は高級な機能が搭載され、安物のカメラで撮った写真を高級カメラで撮った写真に修正する事は非常にたやすくなって来た。 逆光補正とか暗部補正も簡単に出来るし、ハードの雑音特性が良くなっているので、修正してもノイズで画面が汚くなる事もない。

こうして、基本ソフトを持ったカメラを生産し、レタッチ関連のソフトを分離して改善して行けば、消費者は新品が出るたびに買換えに悩まされる事はなくなり、撮影後のレタッチ機能をもつソフトのバージョンアップだけの費用で、新品カメラをゲットしたと同等の成果を得る事が出来る。

この提案は、カメラメーカーには嫌がられるだろうが、賢い消費者はもうその事に気付いており、メーカーの戦略には乗せられないモードに入っている。

リコーなどはファームウエアの無償バージョンアップサービスをしており、購入後にカメラの性能がアップする様に配慮してくれている。 これをもう一歩進めて、独立した優れたレタッチソフトの提供に切り替えてもらった方がいい。