太陽光発電の将来(2009323日)

  1. 現在販売されている発電設備

    現在日本で販売が始まったシャープの太陽光発電設備、“SANVISTA”のカタログを取り寄せ、その性能と価格を使ってこれからの普及度を調べてみた。

    設置前の月々の光熱費は灯油代1,666円、ガス代3,690円、電気代2,0150円であるのに対し、設置後、太陽光発電(4.3KW)+オール電化にすると、電気代 12,497円となり、13,009円の節減、更に、余った電力を電力会社に売ると、電気代 7,288円となり、売電で5,209円の節減となる。

    この設備の発電効率は現在の日本では最大で、14.4%を達成しているとメーカーは自慢している。発電した電力を現在の2倍の価格で電力会社に買い取らせる法律は、残念ながらまだ日本では施行されていない。(ドイツではこの買取制が実施されており、太陽光発電システムが急速に普及している。 331日の朝日新聞によると、2010年度から日本政府も同様の対策を打つ方向らしい?)

    上記の設備により、光熱費は一年間で218,645円安くなる計算である。

    この設備とほぼ同容量の初期設備費は制御器が384,090円、太陽光発電パネルが114W発電容量で63,840円するので、4.3KWの発電容量では38パネル、2,426,000円掛かる。更に据付工事費として推定30万円掛かるとすると、総合初期費用は約311万円となる。

    政府の補助制度を利用すると1KW当たり7万円が支給されるので、初期費用は約30万円削減され、約280万円となる。(平成21年度から、地方自治体が新たに独自の補助制度を導入する事が予想され、例えば東京は4月から1KW当たり10万円を支給する予定。しかし、地方自治体の補助制度は額に大きな差があるのでここでは考慮しない。)

    光熱費の年間節減額は218,645円であるから、償却するまでに約13年掛かる計算になる。

    これでは、日本の家庭には普及しない。 発電効率を2倍以上に上げ、設備費を半減し、電力会社の買い取り価格を2倍にすれば、約5年以下でで償却でき、後は電気を売って利益を得られる様になる。 こうなれば、わが国でも急速な太陽光発電設備の導入が実現するだろう。

  2. 技術の最先端

    インターネットで調べてみると、20088月現在、世界で最高の発電効率を達成したのは、米国Boeing社傘下のSpectrolabがトリプル・ジャンクション太陽電池を用いて実現した40.8%である。 この太陽電池はGaInp/GaInAs化合物を使っており、太陽光を3つのスペクトラムに分け、電池の3つのジャンクションの各々に吸収させ、変換効率を上げている。 GaAs(ガリウム・砒素合金)のウエハ上に太陽電池を成長させ、それをひっくり返してウエハを剥がす方法を開発し、極薄・軽量でコスト・パーフォーマンスを実現した。

    現在米国で利用されている一般的な太陽電池の変換効率は約15%で、20%を超える製品も登場し始めている。

    これに対しシャープは集光追尾形太陽電池システムで効率37%を実現したと発表している。

    また、アメリカのLBNL(バークレイ国立研究所)は亜鉛マンガン・テルル合金で酸素原子を組み合わせた新材料を使って、約45%の効率を実現したと報告した。 しかし、量産化の目途はまだ付いていない。

    住友化学は、LBNLのライセンスを買った米Rose Street LaboratoriesRSL社)と合弁会社(RSLエナジー社)を200811月初旬に設立した。3年後を目途に次世代の高効率太陽電池の商業化を進める。

    この様に、世界各国で変換効率の高い太陽電池の開発競争が展開されている。

    以上より推測すると、太陽電池の変換効率はあと2-3年で現在の2-3倍に向上し、商業ベースに乗るシステムの一般家庭への導入が実現する可能性がある、と言える。

    新任のオバマ・アメリカ大統領もグリーン・テクノロジーへの産業転換を最重要課題と位置づけており、これからの大きな進展が期待される。