NHK紅白歌合戦を見て(07/01/03

  1. はじめに

    昨年大晦日恒例の第57回紅白歌合戦は、総合的に楽しく見られた。 子供から老人まで幅広く楽しめる様に配慮され、世代を超えた相互の絆を強めると言うテーマに沿ってうまく構成されていた。 若い歌手は殆ど知らない人達だったが、最近の歌の流行がどんなものか、おぼろげに分かった気がする。

    司会者では、女優である仲間さんの表情豊かな、落ち着いた司会振りが非常に良かった。 

    SMAPの中居君の司会は良くも悪くもなかったが、マイクを口に近づけ過ぎて喋るので、出だしの音が聞きずらかった。

  2. 最近の歌の傾向

    演歌はメロディと歌詞がゆっくり流れて聞きやすい。 それに対し、最近の若い世代の歌は、押しなべてメロディが単調で一度聴いたのでは口ずさめない。 また、ジャズの様にテンポの速すぎるものが多く、ラップ調でお経を読んでいる様なものもあった。 歌詞にいたっては、言葉を詰め込みすぎたもの、意味不明なものが多い。テンポの速い歌ほど、その傾向が強い。 何度聞いても何を言っているのか聞き取れなかった。 ただ単に若いエネルギーの無駄な発散に終わることなく、形式美のある歌を歌って貰いたいものである。

    絵画に例えれば、レンブラントの肖像画の様に、細部まできめ細かく描き込んでいる古典的な手法に対し、いろいろな色の絵具をキャンバスに投付けた近代絵画を見せ付けられている感じがする。 何を表現しているのか分からないが、現代的な喧騒だけは伝わってくる。 どれも、バックダンサーやボディアクション付である。

    BoAの「七色の明日」、w-inds. の「ブギウギ66」、GAM&モーニング娘の「Thanks!歩いてる 2006Ambitiousバージョン」などがそうだった。

    (ただし、NHKの勇気を褒めたいのは、実物そっくりなヌードの衣装でバックダンサーを踊らせた事、これには非難の電話が多数来たそうだが、私は次回も是非敢行してくれる事を切望する。)

    これらに対し、「さだまさし」の「案山子」、夏川リミの「花」、布施明が歌った「Imagine」などはメロディがきれいで、歌詞も洗練されていて心が癒された。

  3. どんな歌を聴きたいか

    洗練された歌詞を、感情豊かな美しいメロディに載せて歌うような歌が聞きたい。

    現代の若者の歌には、そのどちらも欠如しているもの、歌詞の意味は分かるがメロディがどこか単調で味気ないもの、踊りか歌か分からないものが多い。 多分、彼ら自身は、そのビートとアクションに酔いしれているのだろうが、私には、それは自己満足以外の何物でもないと思える。 こういった歌は、名曲として後世に歌い継がれて行く事はなく、一時の流行として忘れ去られて行くだろう。 大量消費時代に持て囃されては消えて行く商品と、同じ運命を辿るだろう。

    演歌歌手も自分の持ち歌の中から最高のものを選んで歌うべきで、無理してその年の新曲を歌う事はない。 良い歌はいつ聞いても良いのであり、駄作の新曲を歌う位なら、かってのヒット曲を歌ってくれた方が良い。 すなわち、我々老人には、紅白懐かしの名曲合戦になっても良いのである。 今回、トリを務めた、赤組川中美幸の「ふたり酒」、白組北島三郎の「まつり」などは当を得た選曲だった。

    これからは、各年代層にアンケートを出し、視聴者の多数意見を取り入れて歌手や曲名を決める、視聴者参加型「紅白名曲歌合戦」にした方が、幅広い年齢層の視聴者をより満足させられるのではなかろうか。