生物種の多様性(2011年6月11日)

  1. 自然との共存

    今日本では、環境庁が先頭に立って一旦絶滅した朱鷺の自然繁殖に力を入れている。 工業化社会が発展するにつれ、汚水の垂れ流しなどで環境が汚染され、水俣病や四日市喘息などの公害病が発生、農薬の大量使用で里山の自然が破壊され、朱鷺は全滅しトンボ、メダカまで絶滅危惧種に指定される様になった。 子供たちの好きなカブトムシは人工的に飼育されデパートで売られる様になった。 有史以来の猛スピードで多くの生物種が絶滅へと追い遣られている。 何故、生物の多様性は保全されなければならないのか。 自然が推し進める進化により種の分化が進み、自然は億を超える異なる種を生み出して来た。
    人間も同じメカニズムでホモサピエンスとして生み出され、今日の繁栄を築いた。
    その人間の数が増え過ぎ、自然が推し進める生物多様性が危機に瀕している。 と同時に、環境破壊や公害の発生で、人間の生活自体が危機に晒され様としている。 自然と共存して行かなければ、やがてその報いは人間社会の破壊を引き起こす事に、傲慢な人間はやっと気が付いた。 地球が温暖化すれば低地は水没し、自然災害が猛威を振るい始める。
    自然と共存し、種の多様性を維持する事は、人間の生活を安全にする為にも欠かせない事なのである。


  2. 自然が生み出す新薬

    アメリカなどの先進国は、熱帯のジャングルに分け入って、自然界が創った新薬の発見に躍起になっている。発展途上国も自分達の国の自然が持つ資源の価値に気付き、富を生む金の卵として外貨獲得に乗り出した。 病気のメカニズムを細胞レベルで研究し、病気の進行を抑える有効成分をタンパク質の分子レベルで人工的に合成する新薬合成技術が進歩しているが、まだ自然が作り出した薬効成分をジャングルで探す方が手っ取り早い。
    人間よりも自然が偶然に作り出す多種多様な物質の方が、新薬として、より役に立つ。これも自然の多様性がなせる業であり、新薬を入手する為にも、生物多様性の維持に努めるのが人間にとって賢明な行為なのである。

    多くの人は、科学が自然を解明し、人間の方が自然より賢くなったと自惚れているが、自然の底力は人間の能力をはるかに凌駕している。 自然は遺伝子の突然変異により新しい物質を生物体内で創り続けている。 そのランダムな確率的組み合わせ数のオーダーは人間が逆立ちしても足元にも及ばないレベルである。 自然界では人間の研究室の数億倍の研究が長い時間を掛けて行われている。 それは目的を持ってなされている訳ではないが、自然淘汰によって、生物に有用な成分を生み続けている。 そのスケールの大きさに対し人間は畏怖の念を持って接し、人間に有効な成分を自然から恵んでもらえる様、種の多様性維持に努めるしか、道は無いのである。