散歩、7つの効用(0755日)

 

背伸びした表題

若い頃、「七つの大罪」と言うオムニバス映画を見た。 人間には八つの煩悩があると仏教は説くが、キリスト教の世界では煩悩が七つあるのだろうか。「散歩、七つの効用」は、この映画の題名から、散歩しながらふと思いついた題名である。 七つも挙げるとすれば、少しはこじ付け気味のものも含まれるだろうが、ご容赦願いたい。

第一の効用:健康維持

散歩は最も経済的な健康維持法である。 定年退職して家に閉じ篭っていると、大抵何かの病気に罹る。 私の場合は「帯状疱疹」や「尿毒症」だった。 高校生時代の旧友に会ったら、彼は毎日散歩して健康を維持していると教えてくれた。 今ではそんな事は常識になっているが、退職当時は知らなかった。 毎日1時間の散歩をする様になったら、確かに病気に罹らなくなったので、運動不足が健康を左右するのは間違いないと思う。

第二の効用:健康度測定

私は毎日同じルートを散歩する。 家を出ると、電電団地を抜けて旧東海道の細い道に入る。旧東海道は東戸塚(旧名は品膿とか谷宿と言われた)の丘の上、電電団地の西側境界を通っており、団地を通り過ぎた所で右折し、横浜2号環状線を横断する陸橋(旧東海道の「品膿坂」の跡)を下って戸塚の宿に向かう。 私の散歩ルートにもこの陸橋は入っているが、私の散歩ルートは、そこに戻るまでに丘の稜線に沿って大きく迂回する。 この迂回路の両サイドには広い果樹園が広がっており、梨、梅、葡萄、柿などの観光果樹園となっている。 「豊水」と言う銘柄のとてもジューシーな梨はこれら果樹園の特産品である。

散歩ルートを1つに固定していると、散歩に要した時間の変化で「健康度」を簡単にチェックできる効用がある。 普通の足取りで歩くと丁度一時間掛かるが、体の調子が良い時はそれが5分から最高で10分短縮できる。 この短縮分でその日の健康度が測定できる。

また、このルートには上り階段が2箇所ある。 最後の階段は68段あり、それを2段づつ登っていくと、両足の感じる疲労度でその日の健康度(スタミナ)が測定できる。全然疲れを感じない時は「最高潮」、幾らか疲労感のある時は「普通」、最後の8段を登るのがきつい時は「下降気味」と簡単に判定できる。

第三の効用:花の撮影

最近は殆ど毎日デジカメを持って散歩する。 このルートは、綺麗な花を育てている家々やマンションの花壇を、出来るだけ多く経由する様に設定されている。 今は何処の花が盛りを迎えているかを毎日仔細に観察し、一番美しい最盛期を写真に収める事が出来る。 花の多い時期は一回り散歩すると10−30枚の新しい写真が撮れる。 我が家の庭の花よりは「他人の庭」の花の方が良く見えるのは不思議である。 私が撮り貯めている花の写真の半数以上は、散歩ルート界隈で撮られたものである。 

第四の効用:家電量販店通い

散歩のルートは固定されていると言ったが、時々はルート変更して「山田電機」店に向かう。 散歩ルートは変ってもその距離、所要時間は殆ど変らない。

私の経験では、「山田電機」より横浜の「ヨドバシカメラ」の方が安売りしているが、その証拠を見せると、「山田電機」はその安い値段に割り引いてくれる。 隣接する量販店よりは安い事を売り物にしている手前、仕方がない。 しかし、パソコン関連の消耗品(印刷用紙、インク、DVDディスクなどは同じ値段で売っているので、消耗品が無くなると散歩のルート換えをする事になる。

第五の効用:団地内の情報収集

私は24年間NTTの前身「日本電信電話公社」に勤めたので、電電団地内を散歩していると、旧知の人に会ったり、ある人の娘さん家族が親と同居する為二世帯住宅に改築している現場に出合ったりする。 この団地が出来た当時(昭和30年後半)建てた家は、その大半が改築されたり、建て替えられたりし、その様子が手に取る様に分かる。 旧知の人とすれ違う時、年老いた表情やその人の健康度も一瞥でき、時の流れを実感する事も多い。

第六の効用:100円コーラ

散歩ルートを45分位歩いた所に「コマツ」と言う小さなスーパーがある。 その脇に各種飲料を売るスタンドが数台置かれている。 散歩ルートには、この種のスタンドが4箇所あるが、コカコーラなどはここ以外は120円で売られている。 しかし、「コマツ」の横のスタンドでは「今なら100円」と書いた小さな張り紙がしてあり、20円安くコーラなどが飲める。 横浜や東京でもこんなスタンドは見た事がない。 今度、なぜここだけ安いのか、理由を聞いてみたいと思っている。 散歩の途中、丁度喉が渇く頃現れるこのスタンドで、私は毎回「カロリーゼロ」のダイエット用コーラを買い、少し離れたマンションのゴミ収集場の缶、ビン分別コーナーで空缶を捨てる事にしている。
 

第七の効用:富士の遠景

電電団地を通り過ぎて果樹園の方に進むと、遥か西方に富士山の5合目以上がはっきりと望まれる。 新雪に被われた冬の富士の峰は一番はっきりと見える。 初春の富士も大抵良く見えるが、4月、5月の新緑の頃は「黄砂」の影響か、丹沢の山系も富士の峰も白く霞んで殆ど見えない。 夏は黒い富士が見える。 秋は夕焼け空に真黒な富士のシルエットが見事に溶け込む時期がある。 昔の旅人も同じ景色を愛でながら足しげく行き来した事であろうと想うと、江戸時代にタイムスリップして感慨深く感じる事もある。

最近は朝の涼しい内に散歩する事が多いが、以前は夕方涼しくなってから散歩し、夕焼けの富士を眺めたものだ。