戦争への道(02/12/30)

  1. 猿の惑星

    猿が進化し、人類に代わって地球を支配する「猿の惑星」と言う映画の中で、主人公コーネリアスが言う台詞がある。「人類は戦争や殺戮を好み、自ら滅亡して行った。 我々猿類は平和主義者であり、お互いの殺戮は絶対にしない」と。続編の映画では、彼らも戦争をする様になるが、これはハリウッドが考えた蛇足に過ぎない。

    有史以来、戦争の無かった年は無い。 コーネリアスが言った様に人類は好戦的な動物なのである。

  2. 平和憲法

    2次世界大戦終結時、日本を占領した連合軍は、日本が二度と戦争をしない様、戦争放棄を謳った平和憲法を制定し、日本の憲法とした。

    その後東西の冷戦が始まり、西側陣営に加担した日本には自衛隊が創設され、自衛隊は軍隊ではないとか、専守防衛に徹するとか言いながら今日まで来た。 日米軍事同盟の枠内で何処まで米軍に協力出来るか、PKO(国連平和維持活動)には何処まで参加出来るかで政府見解も色々変わった。現在も「後方支援」の名目でイージス艦の派遣、米軍の後方支援などが行われ、防衛庁を防衛省に格上げする案が上程され様としている。

  3. 戦争の歴史

    人類は好戦的動物である。 そのお陰で厳しい生存競争に打ち勝ち、地球を征服した。 戦争はもう要らない時代になった。 人類繁栄の為にはお互いに仲良くすれば良いだけで、仲違し殺戮する必要は無い。

    これは当たり前の事であるが、遺伝子に組み込まれた好戦性を自力で抑制出来ないで居る。種族間の抗争は昔から繰り返されて来た。 これは自分達の集団を増殖しようとする動物の本能であり、宿命でもある。 存続するには他の種族を排除し、食料を確保しなければならなかった。

    動物の中には戦争の真似事はするが殺戮は避け、負けた方が退散して行く種族も居る。 相手を殺戮してしまうまで徹底的に戦う動物も偶に居るが、そう云う種族は絶滅し易い。

    人間も自分達の生活に支障が無くなれば戦う必要は無いのだが、征服欲の強い人間が現れ、勢力範囲を拡大して行った。 しかし、兵器が発達していなかった時代には戦争をしても殺戮される者は少なかった。

    現代の戦争は、兵器の発達によって一度に何十万の人を殺戮する事が出来る。 原子爆弾の戦争抑止力で大戦を避ける皮肉な手法が採られているが、原爆を創ったからには他に方法は無い。

  4. 戦争の原因

    石器時代の戦争は食料の確保が主目的であったが、文明が発達するに連れ、戦争の目的も変わって来た。 社会組織が成立した古代の戦争は政権の奪取や領地拡大と言った征服欲の充足を求めるものが多かった。 宗教戦争による異端者の征服もなされた。

    近代になると、植民地征服や奪取の為の戦争が主流になり、第二次世界大戦まで継続した。 人間が生来持つ物欲、征服欲がなせる災いである。

    戦後の冷戦はイデオロギーの対立がもたらした戦争で、自由陣営が勝利した。 これも征服欲が原因である。

    冷戦構造が崩壊し、もう戦争する必要は無くなったかに見えたが、相変わらず民族紛争、宗教紛争が痕を絶たない。 異なる民族の共存、信仰の自由などときれい事を言っても本能的な人間の欠陥がそれを許さない。

    最近、世界中で多発するテロ事件はイスラエルとアラブの民族紛争に端を発した宗教戦争である。 ユダヤ人に支配されているアメリカがイスラエルを支援し、パレスチナ人がそれに反抗して戦争が絶えない。 それをイスラム教の諸国が支援し、米国対アラブ・イスラム教圏の対立の構図が出来上がった。 強大な軍事力を誇るアメリカと戦うにはテロ行為が最も効果的である。

    さ迷えるユダヤ人が祖国再建を願う限り、この戦いはなかなか終焉しないだろう。 アメリカが本当に中立的立場で仲裁に入らない限り、この対立構造は解消しそうにない。 イラクを攻撃してもそれは全くの的外れである。

    5.戦争への道

    日本では最近、平和憲法の改正が叫ばれている。長い時間のスケールで見ると、これは戦争への一ステップである。

    戦争放棄、国内に限定した専守防衛から米軍の後方支援、PKOの兵站部隊派遣と一歩一歩規制の枠を取り外している。 絶対に戦争はしないといっているが、自分はしなくても、その体制を引き継いだ子孫が戦争をする可能性は増大する。 次の世代はPKOへの完全な参加を名目にして、後方支援の枠を外すだろう。 そうすれば日本も一人前に戦争出来る国になれる。 次期世界戦争が勃発したら、堂々と戦争に参加し、戦争放棄の理想は灰燼と帰する。

    戦争への道を永久に避けるには、これ以上規制を緩めない事である。

    世界平和の美名のもと、PKOへの完全参画など主張する政治家は、自分達の子孫、いや人間が好戦的な性格を持っており、少しでも規制を緩めると、それが次第に累積して、何時かは戦争を始められる体制になると言う事を肝に銘じるべきである。 戦争をするのは自分ではない事をよく認識し、将来に禍根を残す危険な要因は若芽の内に摘み取っておかねば危ない。