誤った少子化対策(2009105)

高齢化社会を迎え、高齢者を支援する為に若者の負担金が増えている。 今後、少子化が進行すれば、若者の負担金はますます増額して行く。 年齢構成のヒストグラムが頭でっかちな歪な形になり、深刻な社会問題を起こしている。 この問題を解決するにはもっと子供を産んでもらい、一人当たりの高齢者負担額を減らすしかない。 その為政府は少子化担当大臣を専任して、子供の出産を補助金付きで奨励している。

しかし、私はこの様な出産奨励政策は間違っていると思う。 働く若者が増えれば、企業は儲かり、住宅建設の為に土地の値段は上がる。 資産家は収入が増えるからこの政策に大賛成である。 しかし、就職する若者にとっては就職競争が激しくなり、賃金は抑えられ、失業者も増える。 かくして貧富の差はますます拡大し、犯罪が多発する苛酷な社会になる。 現在世界第2位のGDPを誇る日本はその内中国にその地位を奪われる。 政府はGDPの拡大を重要政策のトップに挙げているが、本当に実現すべきは国民一人当たりのGDP(正確には一人当たり平価購買力)で世界のトップを目指す事である。 そうすれば、貧富の差は縮まり、皆が裕福になって失業率の少ない社会が実現できる。

IMFの一人当たりの PPP (平価購買力、Purchasing Power Parity)の 順位 2008年)を次に示す。

参照http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_countries_by_GDP_%28PPP%29_per_capita

世界[1] 10,350.89

―欧州連合[2] 30,745.02

1カタール 85,867.56

2ルクセンブルク 82,306.04

3ノルウェー 53,450.67

4シンガポール 51,142.33

5ブルネイ 50,116.68

6アメリカ合衆国 46,859.06

香港 43,810.73

7スイス 42,783.06

8アイルランド 42,539.02

9オランダ 40,431.27

10アイスランド 40,024.52

11クウェート 39,849.67

12オーストリア 39,634.13

13カナダ 39,182.85

14アラブ首長国連邦 38,830.13

15オーストラリア 37,298.73

16デンマーク 37,265.79

17スウェーデン 37,245.09

18イギリス 36,522.90

19ベルギー 36,235.43

20フィンランド 36,217.17

21ドイツ 35,441.91

22バーレーン 34,605.15

23フランス 34,208.13

24日本 34,100.07

25中華民国(台湾) 30,881.48

26スペイン 30,620.97

27イタリア 30,580.83

28ギリシャ 30,534.70

29キプロス 29,829.87

30スロベニア 29,472.40

31イスラエル 28,206.37

日本の順位は24位に甘んじている。 石油資源の多い国も含め、アメリカ以外はすべて人口の比較的少ない国が上位を占めている。 日本も現在のGDPを保ったまま人口を30%減少させれば、他国をそのままとした場合、アメリカを抜いて6位にまでランクアップする。 すなわち、皆が快適な生活の送れる社会を創るには、今の人口を30%減少し、生産性を向上してGDPを現状維持すれば良い事になる。

日本は今回の金融大恐慌を期に、従来の貿易立国から内需を基本とした国に構造改革すべきだと云われているが、これまでは国内の一人当たり購買力が弱く、内需立国の道を進めなかった。 原因は人口が多過ぎ、物価が高過ぎて、一人当たりのPPPが低く、国全体のGDPを外需に大きく依存していたこれまでの経済政策にある。 これでは“国民”が豊かな国とは云えない。 豊かな国とはGDPの大きい国ではなく、一人当たりPPPの大きい国である。

その目標に向かって国作りをするには、人口減少を食い止めるのではなく、もっと人口を減らし、新技術開発に努力して生産性を向上し、少ない人口で国全体のGDPを減少させない方策を取るべきである。 人口が減れば失業率も減少し賃金の下方抑制力も減退する。 世界一高い土地の値段も下がり、その効果は物価の下落に大きく波及する。

生産性を向上してGDPの減少を食い止めるには、ただ子供の数を増やすのではなく、子どもの教育を充実して貧困による教育の不平等を解消し、すべての若者が自分の能力を充分に発揮できる機会を平等に持てる社会を実現しなければならない。 生産性の向上、新規事業の創設など、先進国の経済発展はこの様な施策から生まれる。 北欧などの先進国では国の予算を重点的に教育に注ぎ込み、大学までの教育がすべて無償でなされつつある国が多い。 少数の子供を徹底的に教育し、少数精鋭の若者を育てれば、彼らの働きによりその国が繁栄し、一人当たりのPPPを向上させる原動力になる。 その為には、日本は現在の少子化対策を大きく修正し、GDPよりも一人当たりPPPを向上する方向に政策の舵を大きく切り替える必要がある。