言葉の起源(02/10/14)

  1. 民族と言語

    民族によって固有の言語体系があるのは何故か。 民族とは共通の遺伝子を多数持った集団であり、遺伝子が分化して色々な民族が構成される過程で言語も分化したと、私は考える。 つまり、遺伝子の分化と言語の分化は表裏一体のプロセスを経て進行したと考える。

    人類の起源はアフリカの草原だと言われるが、その時代には簡単な言語が一つしか無かったと思う。 使われる単語の数は少なく、文法も簡単で複雑な表現は出来なかっただろう。しかし、多数の相手と意志を通じなければならない為、自動的に標準化が図られ、同じ意味は同じ単語で表現される自己組織化が進行する。 誰の使う単語が標準として残るか、例えば、部落の長が使う言葉に他の者が言葉を合わせる様にして部落中が同じ言葉を話す様になると言ったプロセスを経て、言葉の標準化、普遍化が急速に進行したと考えられる。 人類の地理的な分散が進み、その部落の長の支配が及ばない遠方に出来た部落には、元集団からの言語の継承が不完全な為、少し違う言葉を話す支配者が居て、その人の言葉がその地方の標準語となった。 それぞれの部落ごとに子孫を増やし、遺伝子にも同じ集団内での共通化、普遍化が進行する。 (勿論、遺伝子の共通化には突然変異や自然淘汰も大きく影響している。そうでないと、民族の特異性が生れない。)

    こうして、共通遺伝子集団が独自の言葉を持つと言う対応関係が維持される。

    遺伝子の共通化には長い時間が掛かるが、言葉の標準化は急速に進行する点、両者には本質的な違いが有るが、一対一の対応は維持される。

    この形成過程で、言葉は豊富な表現力を持つ様に語彙を増やし、過去、現在、未来、完了形、仮定形などの文法表現も整備されて行く。

    各地方毎に民族らしき集団が構成されると、次の段階として、民族間の抗争が繰り返され、遺伝子の混血、言葉の融合が進行し、長い時間を経て新しい民族と言語に再構築される。 また、民族の大移動により、地理的な分布が変動して行く。

    この様な過程を数万年繰り返した結果、現代の民族と民族固有の言語体系が存在する事となった。  一つの遺伝子から分化して沢山の民族が誕生し、それと表裏一体となって言語体系、引いては固有の民族文化が形成された。

  2. 「お早う」と言う言葉

    民族は似ていても使う言葉は全然違う。 中国人、朝鮮人、日本人の容姿は良く似ているが、「お早う」と言う言葉一つを取っても、とても同じ語源から派生したとは考えられない。 遺伝子は似ているのに、言語は余りにもかけ離れている。 文法も違う。 朝鮮語と日本語は単語の並べ方は良く似ているらしいが、単語は全然違う。

    遺伝子分化の過程では近親関係にあるが、言葉の方は大きく変化している。

    遺伝子も言語も子孫に継承される点は同じであるが、言語の継承は遺伝子に比べてエラーが大きい。 文字の無かった時代には記憶媒体は人間の脳であり、遠方に移動した集団は元居た集団の言葉を完全には継承しなかった。 また、移動した後で、新しい単語を自作するケースも多々有っただろう。 遺伝子の操作は出来ないが、言語は人間が作った文化遺産であり、どんどん変貌して行く。 しかも、多数の人の意思疎通の手段であるから、同じ意味を持つ複数の単語が有ると不便なので、それらの内のどれか一つの単語に急速に統一される。 これは一種の自然淘汰であるが、遺伝子の自然淘汰は数万年のペースで進むのに対し、言葉の統一は数年でなされる。

    こうして、民族は似ていても使用する言語は大きく異なると言う現象が起ると考えられる。

  3. 民族のルーツ

    日本民族のルーツは何処か。 南方説、北方説など諸説があるが、ルーツを特定する一番科学的な方法は遺伝子を比較する事である。 これで親戚関係は判明するが、民族は移動、融合を繰り返しているので地理的なルーツを特定するのは難しい。