このところ新呼吸法の会議室で粘膜奏法に関する質問が多いので少し詳しく取り上げてみようかと思います。そもそも粘膜奏法とは私の知るかぎりは藤井先生がこの言葉を最初に使い始めたのではないかと思います。
まず代表的な粘膜奏法とはトランペットやホルンの場合マウスピースの中に上唇の皮膚が無い状態、別の言い方をするとマウスピースのリムの上部が上唇の赤い部分(粘膜)にまで乗ってしまっている状態です。この状態だとマウスピースの中の上唇は赤い粘膜の部分しか無く当然振動は粘膜振動のみになってしまいます。これが一番分かりやすい粘膜奏法の状態です。
一方マウスピースの中に少しでも皮膚の部分が残っていれば皮振動、そして皮膚と粘膜の変わり目の縁振動を含ませることが出来ます。またトロンボーンやユーフォニアム、テューバのように大きなマウスピースではマウスピースの中に上唇の皮の部分は必ず入っていますからセッティング上は粘膜奏法は無いことになります。ところが皮がマウスピースの中に残っていても皮が振動せずに粘膜振動のみになってしまう状態があります。これもやはり粘膜奏法と言えるでしょう。
そこでどうしたら粘膜奏法を脱することが出来るかを考えますが、これはマウスピースのセッティングやアンブシュアのバランスだけの問題ではなく喉や呼吸器官と関連させてやらないとうまく行きません。ひとことで言えば母音の位置を歌声の位置に置くことが最重要なのです。これから先は母音を歌唱発声時の位置へ置くことを前提にして読んで下さい。
今まで重度の粘膜奏法?(マウスピースの上からまだ上唇が見えていた)を直した経験でうまくいったのは上下の唇の出会う場所は上下の歯のすき間の位置ではなく上歯の位置で出会っているよということです。多くの教則本では図1のように書かれていますが実際は図2の様になっているはずです。教則本をみて図1のようなイメージをもって吹いてしまうと粘膜奏法になりやすいと思います。実際には息は一直線には流れていないはずですが、だからといって自分の感覚としては息の流れに段差があるような感覚は無く、まっすぐに流れていると感じると思います。アメリカではこの状態を特に強調する教え方があるようですが、強調せずとも自覚さえあれば良いと思います。
もう一つ息の通り道は常に粘膜部分ですが、息が通っているところが振動するのではなくそこよりもっと上の皮の部分や。縁の部分が振動すると考ることです。つまり息の通り道と振動する場所をはっきりと区別しようというわけです。
くどいようですがあくまでも母音が地声の位置では成り立ちません。