植物としての ツ ゲ
植物辞典で見ると、ツゲはツゲ科に属し石灰地に生ずる常緑の低木で、観賞用として庭にも植えられ、春に淡黄色の小花をつけ、初夏 楕円形の朔果(果実の植物学分類上の名) を生ずる。櫛 又は印材として用いられる。 之に似た木でモチノキ科に属するイヌツゲがある。とこれが一般に知られているツゲの木であるが、植物学上では『ツゲ』或いは『黄楊』の文字を用いて居り『柘植』ではない。
黄楊の横櫛などは昔から有名である。
朝づく日向ふ黄楊櫛ふりぬれど 何しか君が見るに飽かざらむ (万葉集)
君なくば なぞ身よそはむ くしげなる 黄楊の小櫛も取らむとぞ思はず(万葉集)
閑かさに ひとりこぼれぬ黄楊の花(青 畝)
ツゲの木は非常に成長が遅いと記してあるから、枝を挿して一年で花が咲いたなどというのは当たらない。『柘植』とは、この『黄楊』ではなく、その元は『柘殖』(つみえ)又は(つぐえ)と称し『山桑』のことである。伊賀の柘植では、昔 山桑が自生していたので、この名(柘植)が生まれたものであろう。