DC-DCコンバータについて

B電源用積層電池事情
   真空管式ポータブルラジオを製作する上でB電池をどうするかは常に問題となります。私は数年前まではカメラのフラッシュバルブの点火用の015という22.5Vの積層電池をよく使用していました。この電池は数年前までは少し大きなカメラ屋にはあり、価格も1個400円位でそこそこ手ごろでした。しかしこの電池も最近は入手困難で、しかも価格も1300円位に高騰し実際の使用は諦めざるを得なくなってしまいました。
   海外通販では類似の電池が 7 US.$ 程度で入手できますし、45Vや67.5Vの積層電池もありますが送料等考えるとやはり高価ですし消耗品を個人輸入するのはちょっと大変です。
   代って3Vのコインリチウム電池は通常の定価では1個300円するものの例の100円ショップでは2個100円で売られるようになり、45V分15個でも750円となりかつての015と同程度となってきています。しかもこちらのほうが小型で長寿命なので最近はこれを利用するようにする場合が多いです。
   また、最近セキュリティ関連用品用(?)の、単5電池サイズで12Vの電池が出廻ってきています。まだ置いている店が少なく価格も400円程度とやや高価ですが秋月の通販では1個80円と非常に安価に入手できるようで、今後はこの電池も有望です。
   それでも高圧のB電池はランニングコストが高いので、通常はDC−DCコンバータを使用する場合が多いです。

真空管ラジオにトランジスタ式DC−DCコンバータ使用の是非
   DC−DCコンバータはかつてのカーラジオのようにメカ接点を持つバイブレータを使用する方法もなくはないのですが、この大きさでは非現実的でやはり半導体を使用せざるを得ません。
   真空管式のラジオに半導体を使用することの是非は人によっても意見が分かれるところです。私の場合、この種のポケットラジオに限っては本当はダイオードの1本も使用したくはないのですがあくまでも電池の代用ということで妥協して使用しています。このためどのラジオも必ずB電源に電池が使用できるように作られ、電池と同程度の大きさに作られたDC−DCコンバータユニットを電池の代わりに電池ホルダに入れるようにしています。

DC−DCコンバータの電源について
   DC−DCコンバータの電源をどのようにするかも結構悩ましい問題で、いろいろな方法があると思いますが、私の場合、図のようにA電池からラジオ本体の電源SWを通して供給するようにしています。このためDC−DCコンバータを使用するラジオはラジオ本体に、電源SWを通ったA電源をDC−DCコンバータに供給するための端子がなんらかの形で設けられています。
   「SMT管式4球スーパーその2」の場合、2Pのコネクタが取り付けられています。このようにラジオ本体には本来必要のない部品が付くことになりますが付加される部品、回路は僅かなものです。

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         「SMT管式4球スーパーその2」のDC−DCコンバータ使用時の電源廻りの回路

DC−DCコンバータの回路形式について。
   DC−DCコンバータの回路もいくつかの形式がありますが私の場合は専らロイヤーの回路を使用しています。これといった大きな理由はなく、他の形式と試みてみたわけでもないのですが、最初に試みてそこそこ実用的に使えたので他の方法を試す必要性をあまり感じず、ずっと使い続けているといったところです。
   鉄芯入りのトランスが必要でこの製作が面倒なのと効率が悪いのが本質的に短所と考えられるのですが、短所の裏返しでスイッチング周波数が低いのでRFのノイズが少ないという長所があります。

実際の回路 ※回路図等はあくまで参考です。利用は自由としますが利用により生じるいかなる結果にも責任を負いません。
   例として「SMT管式4球スーパその2」用の回路を示します。他のラジオのものもほとんど同じです。
トランジスタは手持ちの石の関係でPNPタイプを使用していますがNPNタイプでもほとんど同じで、この場合2SC2120をよく使用します。
   ベース用の巻線を設けず、他方の石のコレクタ巻線で共用する形式になっています。ベース用の巻線を設ける形式でも何度か作ったことがあるのですがどちらでもほとんど変わらないので今は専らこの方法を用いています。トランスで昇圧の後倍電圧整流して必要な電圧を得ています。
   トランジスタのB−C間に入っている0.2uFのCは高調波によるRFのノイズ対策で、これによりRFのノイズの発生をほとんど抑えることができ、シールドなしで使用することができます。
   電源側に入っているフィルタは、発振の基本周波数がフィラメント回路を通して回り込んで発生するノイズを防止するためのものです。DC−DCコンバータの電源をA電池とは別に設ける場合はまったく必要ないのですがA電池から電源を供給する場合はこれがないとかなり強烈なノイズが出ます。このフィルタは図のようにかなり大容量のコンデンサが必要で、必要なスペースの半分くらいはこのフィルタで占められています。
   効率はトータルで40%内外で、はっきり言って低いです。また、レギュレーションも悪く、無負荷状態では80V位まで電圧が上がります。もっとも、他の回路でも電圧制御回路を使用しなければそれ程差はないと思われますし、真空管式ラジオの負荷電流はオーディオアンプと異なりほとんど一定なので無負荷状態で使用しないよう注意する以外レギュレーションの悪さは特に問題になりません。

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     ・トランス仕様 : コア       :14mmx16mmx5.5mm位のE I コア
                           巻線仕様:1次側=φ0.25x120T CT付き
                                          2次側=φ0.06x2200T

     ・出力電流と出力電圧、消費電流の関係−−入力1.25V時 :

             出力電流  出力電圧  消費電流   効率
              2.0mA      57.6V     220mA  42.0%
              3.0mA      48.1V     265mA  43.6%
              4.0mA      35.3V     320mA   35.3%

       
*実際のラジオの消費電流=3.2mA(at1.25V)

     ・発振周波数=167Hz

この方式得失

   この方式、すなわち

      a)ロイヤーの回路を使用する。
      b)DC−DCコンバータの電源をA電池から供給する。
      c)ラジオ本体にA電源SWを通ったA電源を供給するための端子を設ける。

  の得失をまとめると次のようになります。

   欠点:
     1、ラジオ本体に本来必要のないコネクタや配線が付加される。
     2、A電池の負荷がかなり大きくなる
     3、大半の場合1.5Vという低圧のA電源から45V以上に
         昇圧しなければならないこともあり効率が悪い
     4、フィラメント回路を通して回り込んで発生するノイズを防止するため
         のフィルタが必要でこのため大容量のCと大きなスペースが必要。
     5、専用の鉄芯新入りトランスを製作する必要がある。

   長所:
    
1、他の方法と比べ構造が非常に簡単
     2、ラジオの電源SWのON−OFFのみで全ての電源がON−OFFでき、
         通常のラジオと全く同じ操作で使用できる。
     3、電池がA電池1種類だけとなり真空管式のポータブルでありながら普通
         のトランジスタラジオのような扱いが可能となる。
     4、RFからのノイズ対策のためのシールド等が不要でノイズ対策が比較的容易

   この長所と欠点をどう判断するかは製作する人個人個人の事情でも異なるため、必ずしも人に薦められる方法ではないと考えているのですが私の場合、欠点に対しては下記のように考えこの方法を専ら使い、長所の方を享受しています。

   欠点1に対して:
           ラジオに付加される配線、部品は僅かなものである。
   欠点2に対して:
          全電流は大きいもので500mA程度であり高性能化している現在の電池で
        あれば構成によっては十分可能であり、デジカメ普及や100円ショップの出現
        で単3電池等は非常に実売価格が下がっているのでこれでもB電源に電池を
        使用する場合よりかなりランニングコストを安くできる。
   欠点3に対して:
           電池はA電源にも使用しているので効率が倍の80%程度に改善したとして
         も電池寿命は5割程度の増加と考えられ、倍半分の差があるわけではない。
   欠点4に対して:
            大きなスペースは必要だが必要な大きさに納めることが可能
   欠点5に対して:
            トランスはトランジスタ用の小型トランスを改造して作ることができ、これは
        ワニスで固められていないので分解が容易で簡単に作ることができる。

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