シャープAR-330の修理

フレーム

 実家にあったマジックアイ付きST管5球スーパーです。数年前まで鳴っていたのですが、最近電源を入れたところ鳴らなくなっていました。そこで、色々なホームページを参考に修理してみることにしました。


情報収集
 昔真空管ラジオで大分遊んだり(壊したり)、真空管アンプを作っていたとは言ってもST管ラジオの修理は初めてなので、まずは情報収集と勉強。参考になる情報はラジオ工房に大量にあり、大変勉強になります。回路図はラジオの底面に貼ってありましたが、ラジオ工房にもアップされていましたので、そちらも参考にさせていただきました。
   ラジオに貼ってあった回路図
   ラジオ工房の回路図


分解前準備
 ラジオを分解して掃除する前に、内部の写真を撮っておきます。後で組み立てたり糸掛けするときに役立ちます(と教わりました)。ちなみに裏蓋は私が入手した時から有りませんでした。
   内部写真1  内部写真2  内部写真3  内部写真4
   内部写真5  内部写真6  内部写真7  内部写真8

ついでに裏側の部品面の写真も撮っておきました。抵抗やコンデンサが今では考えられないくらい大きなサイズですね。
   内部写真9  内部写真10


大掃除
 シャーシを取り出したあとの木枠ケースから、ダイヤルパネルや飾り部品など外せる物を全て取り外し、洗剤を使って水洗いしました。メッキ部品はクレンザーで磨くと綺麗になりますが、ダイヤルパネルは軽く擦る程度にしておかないとプラスチック製なので傷がつきやすいこととメモリ塗装が消えてしまいそうです。
 木枠ケースは、古い塗装を剥がして再塗装すれば綺麗になるのは判っているのですが、面倒なのことと古さを感じられなくなるので、そのままの状態のまま水拭きしました。それだけでも汚れはかなり綺麗になり、リビングに置いておいても汚いと毛嫌いされることは無さそうです hi。

 取り出したシャーシは埃が凄いので、濡れ雑巾と刷毛で丁寧に拭き取りました。とくにアンテナコイルとバリコンに付いた埃は性能に影響するらしいので、丁寧に掃除します。バリコンの羽根を曲げてしまったりアンテナコイルのエナメル線がほつれてくると大変なので、あくまでも慎重に丁寧にです。
 シャーシは目の細かいペーパーで磨くと綺麗になるのでしょうが、今回はパスしました。

 真空管ソケットはベーク板の汚れを綿棒で丁寧に取り除いた後、接点復活材を少量綿棒に染み込ませて、ピンの内側を磨きました。真空管は湿らせたタオルで慎重に拭いただけですが、かなり綺麗になりました。あまり強く擦ると印刷された文字が消えてしまうので要注意です。


部品交換
 修理方針としては大別して、使用部品もできるだけ昔のまま残して故障部品だけ取り替える方法と、コンデンサ・抵抗・配線材を全て交換してしまう方法の2種類があります。
 前者は昔の原形を最大限残すことを重視してますし、後者は今後の実用耐久性を重視しています。

 内部写真を見てもらうと判るように、複数の抵抗やコンデンサの足が絡げ半田付けされており、部品を外して故障箇所を調べるのも大変そうだし、配線材も被覆がボロボロと剥がれてくる状態でした。
 今後も長く使いたいこともあるので、今回は思い切って抵抗とコンデンサ・配線材は全て交換することにし、日本橋へ調達に行ってきました。

 日本橋では今でも、耐圧の高いコンデンサやワット数の大きい抵抗の入手が容易ですが、ブロックコンデンサだけは入手困難ですので、高耐圧の電解コンデンサで代用しました。

 シャーシ内に元々付いている部品を全部外し、順に回路図通り新しい部品を配線していくだけですので、難しいことはありません。現代部品は非常に小型化されてますので、古い部品で配線するよりもむしろ部品配置に苦労が要りません。
ただ、真空管ソケットの端子等は汚れていて半田が乗りにくいので、やすりやナイフでよく磨いてから半田付けします。
 ブロックコンデンサは取り外さずにシャーシ上に残したまま配線はせず、近くに増設したラグ板に代わりの電解コンデンサを取り付けました。

 ここでひとつおかしい事に気づきました。シャーシに元から付いていた電源スイッチの配線と回路図が一致しないのです。
 回路図上は2回路3接点のロータリースイッチで電源ON/OFFと音質切替を兼ねているのですが、シャーシに付いてるものは1回路2接点の大型ロータリースイッチでした。どうやら以前に一度修理され、その時交換されたようです。
 電源ON/OFFできるほど耐圧の高い2回路3接点のロータリースイッチは手持ちがありませんでしたので、今回は音質切替を諦めて元通りの配線としました。

 ダイヤル糸は幸い切れてなかったので元通り糸掛けすればいいだけですが、糸を通す経路が複雑なので最初に撮っておいた写真が役立ちました。
 ただ、同調ツマミの回転軸やダイヤル糸を支えるローラー軸等をグリスアップする為に少しだけかけたオイルが、ダイヤル糸にも少し付いてしまったようで、同調ツマミが少し滑り気味になってしまいました。


火入れ式
 全ての配線が完了したところで、真空管を全て抜いた状態で電源を入れ、各部の電圧に異常がないことを確認したのですが、電源トランスの2次側電圧が300V近くも出ていました。ヒーター電圧も6.7Vと5.3V程度と少々高めです。気持ち悪いのでヒューズを110V側にセットして少し電圧を落としました。
 後でラジオ工房掲示板に質問して判った事ですが、家の電源電圧が105Vもあった為に2次側電圧も高くなっていたという落ちでした。灯台下暗しとはこのことです。
 次に整流管を入れて電圧チェックし、その後出力段から順に真空管を入れては異常がないことを確認し、最後に全球入れて異常がないことを確認後、2m程度のアンテナ線を付けて実際にダイヤルを回しみると、無事数局受信できました。マジックアイは、大分緑色が薄くなってはいるもののまだ十分使えますし、開閉動作も確認できました。とりあえずここでひと段落です。


調整
 テスター以外には昔のBCLラジオ(クーガ2200)しか持っていないので、1008KHzのABCラジオを受信した状態で、BCLラジオを1463KHzに合わせて局発信号が受信できることを確認しました。
 この状態でIFTの調整棒を少しずつ回して最高感度になるよう調整します。経年変化で大分ずれているかと思いましたが、それほど大きく回す必要はありませんでした。それでもこの調整でかなり感度が上がりました。
 次にトラッキング調整ですが、600KHz付近に受信できる局がなかったので、少し範囲が狭いのですが828KHzのNHK第2と1314KHzのラジオ大阪で大雑把に合わせました。合わせたといっても、地元局は十分な感度で受信できているのでかなり手抜きしてバリコンのトリマーを調整しただけですので、最高感度という訳ではないと思います。この辺は今後じっくり調整する必要があります。


完成後の写真
 シャーシ内部は、あっけないほどスッキリしてしまいました。抵抗とコンデンサが非常に小型化されていることが良く判ります。
 なお、アンテナ線の取り外しが楽なように、シャーシに元から開いていたアンテナ線取り出し穴を利用してターミナルを取り付けてあります。
   シャーシ上  シャーシ内部


残課題
 一通り調整が終わってラジオを聞いて楽しんでいたのですが、どうもラジオの音の後ろでピーというような発信音が弱く入っているのが気にかかります。ダイヤルを回して同調を外すと聞こえなくなりますので、回路が発振している訳ではなさそうです。
 ラジオ工房のラジオ修理メモ14と同じ症状の可能性もあります。ちなみに、我が家のウォシュレットは妨害電波を出していませんでしたが、マンション住まいですので、他の部屋が発信元である可能性も残っています。もちろん他の原因も有り得ますので、原因追求は今後の課題です。


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