山中電機 テレビアン東邦型2号の修理

フレーム

 以前から興味があって色々見ていた並4ラジオを、ついにオークションで落札してしまいました。もちろん修理して鳴るようにするつもりだったのですが、どの程度大きなダメージがあるかは手元に届いてみないと詳細には判りません。さてどうなることやら・・・。


到着・調査
 戦前のものなのかどうかよく判りませんが、外観は60年も昔のものとは思えないほど綺麗でした。でも内部はだいぶ錆が出ていました。キャビネット内側にはラベルが貼ってあり、それを見て初めて山中電機製のテレビアン東邦型2号であることが判りました。
   外観写真  ラベル
早速インターネットで調べてみると、次のサイトに参考になる情報が見つかりました。
   http://www.japanradiomuseum.jp/11426.html
   http://www012.upp.so-net.ne.jp/shuvincent/toho2gou-1.html
このサイトによると、オリジナルは24B-26B-12A-12Fという配列の筈ですが、本機は57-56-12A-80BKに改造されていた。


分解・点検・部品調達
 ラジオを分解して掃除する前に、内部の写真を撮っておきます。後で組み立てる時に役立ちますので。特に今回は、全部品を取り外してチェックする必要がありますし。
   修復前内部写真1  修復前内部写真2  修復前内部写真3

 部品を取り外しながら回路図を書いていきました。と言っても改造されているので、オリジナルとは異なっている筈です。コンデンサの容量抜けを補うためと思われるものも幾つか追加されていました。
   修復前回路図

 取り外した部品を確認したところ、電源トランスと高周波チョークは無事したが、電源チョークと段間トランスは断線、マグネチックスピーカーも断線、コンデンサー類はほぼ全滅、抵抗も一部焼けこげている、と言った具合で前途多難な状態でした。
 中でもバリコンは、ローターとステーターの間が白い錆で覆い尽くされており、びくとも動かない状態でした。しかも、通常のバリコンとは逆回転のもので、代替え品の入手が困難です。
 何とかバリコンをばらして少しずつ錆をとりながら羽を磨いていくと、何とか使えるまでに修復できましたが、一部ローターとステーターが腐食で薄くなり過ぎて欠けた状態になってしまいました。若干容量不足になりそうです。

 電源チョークと段間トランスは新品の代替え品をYahooオークションで入手できました。スピーカーは手持ちの別のものに交換し、CR類は全交換する方針で日本橋で調達しました。 ボリュームは多少ガリがあるものの実用に耐えそうだったのでそのまま使います。
 真空管は動かしてみるまで判らないない状態ですが、ヒーターの通電はOKでしたので、そのままで試してみます。球ラインナップをオリジナルの構成に戻そうかとも思ったのですが、24Bと26Bが入手困難で諦めました。


大掃除
 シャーシを取り出したあとの木枠ケースから外せるものを全て取り外し、洗剤を使って水洗いしました。シャーシと電源トランスは、ルーラーとヤスリで錆取りをした上で、銀色のスプレーで再塗装しました。しかし後で気づいたのですが、この塗料を導電性のものにするのを忘れていたので、シャーシアース部分の塗装をはがす羽目になりました。
 真空管ソケットはベーク板の汚れを綿棒で丁寧に取り除いた後、接点復活材を少量綿棒に染み込ませて、ピンの内側を磨きました。真空管は湿らせたタオルで慎重に拭いただけですが、かなり綺麗になりました。あまり強く擦ると印刷された文字が消えてしまうので要注意です。


再組み立て
 調達しておいた部品を元に、復元予定の回路図を書いてみました。CR類の定数が少し変わりますが、大きな問題はないでしょう。
   修復後回路図
 あとは準備しておいた部品や再利用部品を配線していくだけですので、それほど苦労はありません。CR類が小型化していて、シャーシ内部はスカスカです。
 電源平滑コンデンサと低周波バイパスコンデンサは、元のブロックコンデンサをバラして中身を取り出し、代わりに新品の縦型ケミコンを複数個詰め込んでシリコンシーラーを封入しました。シリコンの浸食が心配でしたが、当分は大丈夫でしょう。
 電源スイッチは元のものが接触不良で使えず取り外すこともできなかったので、省略しています。

   修復後内部写真1  修復後内部写真2  修復後内部写真3  修復後内部写真4


動作確認
 配線をチェックして電圧をチェックする程度で、何事もなく動作してしまいました。スーパーでもなく高一でもないので、ほとんど調整する箇所もありません。マンションの部屋内に3m程度張ったアンテナ線だけで、ローカル放送はほぼ受信できます。再生のかかりかたもスムーズで問題ありません。真空管もそれほどボケてはいないようですが、比較するものがないのでこれで良しとします。
 ただ、しばらく鳴らしていると急に音が出なくなる症状が出ました。シャーシを軽く叩くと復活するので、どこかに接触不良があるようです。バリコンやアンテナコイル周りのような感じです。もしかすると、シャーシの塗装はがしが足らなかったのかもしれません。
 心配だったバリコンの容量不足はそれほど気にならず、ちゃんと放送周波数をカバーしています。いい音とは言えませんが、昔の古い音に満足して放送を聞いています。


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