画像電子学会 第23回VMA研究会
2008-12-01
戸出 眞樹谷田 浩章中井 達也小町 祐史
Masaki TODEHiroaki TANIDATathuya NAKAIYushi KOMACHI |
情報処理学会情報規格調査会の学会試行標準委員会は,2007年11月にWG7小委員会(フォントリソース参照方式)の設立提案を行い,書体を表すフォント属性の体系の枠組みを決め,柔軟性の高いフォント参照方式を規定することを適用範囲とする試行標準の検討を開始した[1],[2]。その背景には,ISO/IEC 9541-2が規定するフォント参照(font reference)だけではフォント情報交換における書体識別が必ずしも充分に行われず,Monotypeによる書体属性記述Panoseは欧文書体に特化していて,それ以外の書体については情報量が不足していたことがある。さらに,ほとんどのフォント処理系ではPanose値によるフォントリソースの検索サポートがなく,それによるフォント選択は困難である。
本研究は,情報処理学会試行標準WG7小委員会と同じ問題意識の上に立ち,フォント選択高度化支援のための幾つかの機能の検討を行う。
情報処理学会試行標準WG7小委員会での検討によれば,文書を作成・交換・表示する際に,そこで用いるフォントをリソース名だけでなく,そのフォントを表現する各種フォント属性をも用いて指定することによって,次の事例でのフォントリソースの特定を容易にすることが望まれる。
ISO/IEC 9541-2 のフォント参照は,指定したいフォントリソースのインスタンスの属性を示すだけであって,そのフォントリソースを選択した文書作成者の意図を表す属性は用意されていない。文書を作成・交換・表示する際に,フォント参照の利用者が文書作成者の意図を知って適切なフォントリソースを選択するには,ISO/IEC 9541の既存のフォント参照の上位概念として文書作成者の意図を扱う属性をも含むことが望まれる。この文書作成者の意図として,フォントの印象に着目する。
フォントの印象は,書体デザインの図形的な特徴の結果そのフォントに与えられる性質であるが,文書作成者の意図はまずこの印象に関連付けられやすい。そこでこのフォント印象を,それを表す形容詞と形容動詞によって表現し,フォント属性として用意する。フォント選択に際しては,文書作成者の意図をこれらのフォント印象属性の組合わせで現わし,必要なフォントリソースへのアクセスを可能にする。
フォント印象を表す形容詞と形容動詞の例[3]を図1に示す。
・新しい − 古い ・力強い − 弱々しい ・のびのびした − 萎縮した ・丸みのある − 角張った ・幻想的な − 現実的な ・太い − 細い ・男性的な − 女性的な ・個性的な − ありふれた ・上品な − 下品な ・堅い − 柔らかい ・明るい − 暗い ・重厚な − 軽快な ・判りやすい − 判りにくい ・温かみのある − 冷たい ・親しみやすい − 親しみにくい ・素朴な − 洗練された ・楽しい − 悲しい ・動的な − 静的な ・好きな − 嫌いな ・若々しい − 成熟した ・高級な − 低俗な ・フォーマルな − カジュアルな 図1 フォント印象を表す形容詞と形容動詞の例さらに別の形容詞,形容動詞もあり得る。また外国語形容詞によるフォント印象の表現もあり得る。これらについては,類語辞書,外国語類語辞書を併用することによって,文書作成者の意図をさらに容易にフォントリソースに対応付けることができよう。書体オントロジなどを構築することによって,一層便利なフォント利用環境を作ることもできよう。
MS-Wordなどの従来のフォントアプリケーションでは,図2のようなフォントリソース名によるフォント選択が行われることが多かった。
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図2 フォントリソース名によるフォント選択利用者インタフェース
フォント印象属性を扱う利用者インタフェースの実装例を図3に示す。
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図3 フォント印象属性によるフォント選択利用者インタフェース
この実装においては,図4に示すフォントリソースに形容詞と形容動詞からなるフォント印象属性を与え,図3のインタフェースの属性指定欄でフォント印象属性を選択することにより,リソース候補の表示を行う。
A-OTF A1明朝 Std Bold Batang BatangChe DFG極太明朝体 DFP極太明朝体 DF極太明朝体 Dotum DotumChe edit FOT-ニューロダン Pro B FOT-ニューロダン Pro DB FOT-ニューロダン Pro M FOT-ロダン Pro B FOT-ロダン Pro DB FOT-ロダン Pro EB FOT-ロダン Pro L FOT-ロダン Pro M FOT-筑紫明朝 Pro D FOT-筑紫明朝 Pro R Gulim GulimChe Gungsuh GungsuhChe HGPゴシックE HGPゴシックM HGP行書体 HGP創英角ゴシックUB HGP創英角ポップ体 |
HGSゴシックE HGSゴシックM HGS行書体 HGS創英角ゴシックUB HGS創英角ポップ体 HGゴシックE HGゴシックM HG丸ゴシックM-PRO HG行書体 HG正楷書体-PRO HG創英角ゴシックUB HG創英角ポップ体 KFひま字 KFひま字等幅 MingLiU MS Pゴシック MS P明朝 MS UI Gothic MS ゴシック MS 明朝 NSimSun PMingLiU S2G殴り書き SimHei SimSun SimSun-PUA TT-JTCナミキ特太楷書 TT-JTCナミキ特太楷書P TT-JTC淡斎古印体「舞」 TT-JTC淡斎古印体「舞」P |
TT-ウインクス-V5-JTCウインM5 TT-ウインクス-V5-JTCウインM5P TT-曲水B TT-曲水BP あくびん あずきフォント あずきフォントP うずらフォント オバケ ダサ字 ふい字 ぷちはんど へなちょこほそぺん ぷちはんど ほそぺん みかちゃん みかちゃん-P みかちゃん-PB みかちゃん-PS 怨霊 小塚ゴシック Std B 小塚ゴシック Std EL 小塚ゴシック Std H 小塚ゴシック Std L 小塚ゴシック Std M 小塚ゴシック Std R 小塚明朝 Std B 小塚明朝 Std EL 小塚明朝 Std H 小塚明朝 Std L 小塚明朝 Std M 小塚明朝 Std R |
図4 フォント印象属性によるフォント選択利用者インタフェースの実装に用いたフォントリソース
ISO/IEC 9541の既存のフォント参照の上位概念として文書作成者の意図を扱う属性の必要性を考慮し,フォント印象を,それを表す形容詞と形容動詞によって表現して,フォント印象属性とした。このフォント印象属性を幾つかのフォントリソースに付与して,それを用いたフォント選択利用者インタフェースを試作し,その動作を確認した。
今後はさらに多様な形容詞と形容動詞を導入すると共に,その程度に関する配慮を行う必要がある。フォント印象属性と書体デザインの図形的な特徴との関係,フォント印象属性に基づく書体分類間のマッピング等についても今後の課題として残している。
本学に来校いただき,本研究に有益な講演と議論とをいただいた長村玄,鈴木俊哉両氏に感謝する。
[1] 情報処理学会試行標準WG7小委員会, http://www.y-adagio.com/public/committees/ipsj-ts_wg7/cmt_ipsj-ts_wg7.htm
[2] NP(フォントリソース参照方式)の提案,IPSJ-TS/WG7資料01-01, 2007-12
[3] 長村玄,文字を楽しむ,大阪工大講演資料,2008-08